森林の林冠とギャップ
mokuji
目次
1:林冠(りんかん) ~森林の覆い~
樹木の枝や葉で覆われている
森林の上部のことを
林冠(りんかん)といいます。
うす暗い森の中に立って
上を見上げてみると、
頭上が樹木の枝葉で覆われて
空は、ほとんど見えません。
この時、私たちは
林冠の下側を見ています。
もし、あなたが鳥になって
森の上を羽ばたけば、
林冠の上側を見下ろすことが
できるでしょう。
林冠の意味をおさえたら、
今回のもう1つの
キーワードである
ギャップ
の解説に入りましょう。
2:ギャップ ~成長のチャンス~
森林の樹木は、枯死したり、
台風の風などによって倒れたりします。
ギャップというのは、
林冠をつくっている樹木が
枯死したり、倒れたりして生じた、
林冠が途切れた隙間のことです(下図)。

ギャップができると、
そこから太陽の光が差し込んで
林床(りんしょう:森の地面付近)まで
光が届きます。
植物がよく育ちそう。

よく育ちますよ。
次の項目では、
ギャップが生じた場所で
植物の成長に何が起きるのか?
を解説しましょう。
3:小さなギャップと大きなギャップ
森林では、様々な大きさの
ギャップが生じます。
ギャップの大きさに応じて
林床に光が届く程度が異なります。
このため、
ギャップの大きさが異なれば、
その場所でよく成長する植物の
種類も異なるのです。
ここから詳しい解説に入りますが、
生物基礎では、
極相林(陰樹林)で生じたギャップと
樹木(陽樹、陰樹)との関係
について取り上げます。
極相林(陰樹林)という用語は
『一次遷移の過程』で、
陽樹、陰樹という用語は、
『光合成速度と呼吸速度のグラフ』で
詳細を解説していますので、
これらの用語については、
ギャップの話に関係の深いことだけを
ここでは説明します。
極相林(陰樹林)では
主に陰樹が林冠を形成しており、
林内は薄暗くなっています。
薄暗い林内では、陽樹は生育できず、
陰樹の幼木(ようぼく)が生育します(下図)。

極相林(陰樹林)にギャップが生じると
どうなるのでしょうか?
小さなギャップ、大きなギャップ
の場合に分けて解説しましょう。
小さなギャップは、
例えば、1本の大きな樹木が
倒れるなどして生じます(下図)。

小さなギャップでは
林床に差し込む光が少なく、
もともとその場で生育していた
陰樹の幼木が成長するなどして
ギャップを埋めます。
ギャップが埋まると、林内はまた
うす暗い環境に戻ります。
このことを模式図で
描いてみましょう。
下図で、真ん中の1本の木が
倒れて小さなギャップが出来ます。

陰樹の幼木が成長して、
林冠に届くとギャップが埋まり、
林内は薄暗くなります(下図)。

一方で、
大きなギャップの場合は
どうなるでしょうか?
大きなギャップは、
より広い範囲で樹木が
倒れるなどして生じます。
大きなギャップでは、
林床の広い範囲に強い光が届きます(下図)。

このため、
もともと生育していた
陰樹の幼木に加えて、
陽樹の種子が
発芽して成長するのです(下図)。

陽樹には、強い光が当たる環境では
陰樹よりも速く成長する傾向があり、
あとから発芽した陽樹が、
先に生育していた陰樹の幼木を
追い抜いて林冠を形成します。
すると林内は再び薄暗くなり、
新たな陽樹は育たず、
陰樹の幼木が成長を続けます(下図)。

やがては、遷移によって
林冠を形成する陽樹も
陰樹へと置き換わっていくのです(下図)。

ちょっと待った!

どうしましたか?
大きなギャップの話で、
ギャップができた時に
発芽してくる陽樹の種子は
一体どこから来たの?

ギャップができる以前に
その場所の土壌中に種子が埋まって
休眠をしていた場合や、
ギャップができた後に
風などによって種子が
運ばれてくる場合などがあります。
種子によっては、
発芽できる環境になるまで
何年間も休眠している
場合もあるのですよ。
4:極相林(陰樹林)の樹木の多様性
極相林(陰樹林)では、
色々な場所で、様々な大きさの
ギャップが生じます。
このため、極相林の樹木は
陰樹だけではなく、所々に
陽樹も混ざっているのです。
もしも、
複数の樹木が倒れて
ある程度大きなギャップが生じる
ということが無ければ、
いずれ、その森の樹木は
ほとんどが陰樹になるでしょう。
極相林(陰樹林)における
ギャップの形成は、
その森の樹木の多様性を高めることに
つながっているのです。