RNAとその合成(転写) ~遺伝子の発現②~
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1つ前の記事「遺伝子って何? DNAとどう違うのか?」
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1:遺伝子発現に関わるRNA。
遺伝子の発現とは、
遺伝子(DNAの一部)の情報をもとに
タンパク質が合成されることです。
遺伝子発現の過程において
遺伝子とタンパク質を仲介する
物質があります。
それは、
RNA(アールエヌエー)
といいます。
名前も特徴も
DNAと似ているためか混同されやすく
入試でもよく問われます。
RNAの理解は
遺伝子発現の理解に欠かせませんので、
RNAについて、DNAと
比較しながら見ていきましょう。
2:RNAとは? DNAとRNAの違い
DNAもRNAも共に
4種類のヌクレオチドが
鎖状につながった物質
です。
※ヌクレオチドって何?という時は、
一旦こちらへ「DNAの二重らせん構造」
DNAとRNAの構造には
いくつか異なる点あり、
以下の3つを押さえましょう。
①DNAは2本鎖、RNAは1本鎖
DNAは2本のヌクレオチド鎖で
できていて(2本鎖)、かつ、
らせん状にねじれた形をしています。
RNAは、1本のヌクレオチド鎖で
できています(1本鎖)。
※:DNAの図は、らせんを
ほどいた形で描いてある。
②DNAの糖は、デオキシリボース。
RNAの糖は、リボース(下図)。

どっちがどっちか、
忘れそう。。。
では、次のように
覚えておきましょう。
・DNAのDの由来は、
デオキシリボースのデ(D)。
・RNAのRの由来は、
リボースのリ(R)。
③RNAのヌクレオチドの塩基には
チミンが無く、
代わりにウラシルがある。
DNAの塩基は
グアニン:G、アデニン:A、
シトシン:C、チミン:T。
の4種類です。
RNAの塩基は、
グアニン:G、アデニン:A、
シトシン:C、ウラシル:U。
チミン(T)の代わりに
ウラシル(U)があるのです(下図)。

RNAは
転写(てんしゃ)という仕組みによって
DNAをもとに合成されます。
次章に入る前に
ここまでの知識を
確認問題でまとめましょう。
確認問題
以下の文の①~④について、
適切な語を選びなさい。
RNAは、多数のヌクレオチドが鎖状に
つながった(①1、2)本鎖の物質である。
RNAを構成する糖は
(②デオキシリボース、リボース)である。
RNAの塩基には、
(③アデニン、チミン)の代わりに
(④シトシン、ウラシル)がある。
ウラシルは
(⑤アデニン、チミン、シトシン)
と結合する。
答え
RNAは、多数のヌクレオチドが鎖状に
つながった(①1)本鎖の物質である。
RNAを構成する糖は
(②リボース)である。
RNAの塩基には、
(③チミン)の代わりに
(④ウラシル)がある。
ウラシルは
(⑤アデニン)
と結合する。
3:転写(てんしゃ:RNAの合成)
DNAの塩基配列をもとに
RNAを合成する過程
のことを、
転写(てんしゃ)
といいます。
言いかえれば、
DNAの塩基配列を
RNAの塩基配列として
写し取る過程
です。
これから転写の過程を説明しますが
上記のイメージをもっておくと
理解しやすいでしょう。
転写は
DNAの全体ではなく、
DNAの特定の部分
で行われます。
転写が行われている部分では
DNAの2本鎖が分かれて
1本ずつのヌクレオチド鎖
になっています(下図)。

1本ずつに分かれた
ヌクレオチド鎖のうち
“片方の”ヌクレオチド鎖だけ
に対して、
RNAのヌクレオチドが結合し、
すぐ隣まで合成されているRNAの
ヌクレオチド鎖とつながります(下図)。

これが繰り返されて
RNAが合成されていきます(下図)。

転写が終わると
RNA全体がDNAから離れ、
1本のRNAが出来るのです(下図)。

転写の全体像を見てきましたが
DNAを”写し取る”過程は
どこなのでしょうか?
4:相補的な結合 ポイントはウラシル(U)
RNAのヌクレオチドが
DNAのヌクレオチド鎖と結合する
過程を詳しく見ていきます。
この過程では、
RNAのヌクレオチドの塩基と
DNAのヌクレオチド鎖の塩基が
相補的に結合
します。
“塩基の相補的な結合”という言葉は、
DNAの複製を解説した記事でも
取り上げました。
DNAの複製の時には、
塩基の相補的な結合とは
・グアニン(G)とシトシン(C) 同士
・アデニン(A)とチミン(T) 同士
が結合することであると
解説しました。
でも実は、
結合の組み合わせは
もう1つあるのです。
それは、
アデニン(A)とウラシル(U) 同士
です。
まとめると、
塩基の相補的な結合とは、
・グアニン(G)とシトシン(C) 同士
・アデニン(A)とチミン(T) 同士
・アデニン(A)とウラシル(U) 同士
が結合すること
なのです。
これを踏まえて
先ほどの転写の図を
見てみましょう。
仮にDNAの塩基配列が
左からGTCACA
であるとします。
この塩基配列をもとに
作られるRNAの塩基配列は
左からCAGUGUとなります(下図)。

RNAの塩基には、
チミンが無く、ウラシルがある
という事を思い出してください。
DNA側の塩基アデニン(A)と
結合するのは、
RNA側の塩基ウラシル(U)
なのです(下図)。

こうして、
DNAの塩基配列が
RNAの塩基配列として
写し取られます。
転写における
写し取るというのは
“コピーでは無い”のです。
なお、
新しいヌクレオチド鎖を
合成するもととなる
ヌクレオチド鎖のことを、
“鋳型(いがた)”の鎖
と言います。
DNAの片方のヌクレオチド鎖が
鋳型となってRNAが合成される
といった使い方をしますので
頭の片隅に入れておきましょう(下図)。

さて、これで
遺伝子の発現を解説する
準備が整いました。
この記事の最後に、
遺伝子の発現とは直接は関係しませんが
共通テスト対策として
転写と複製の違いをまとめておきます。
確認問題
転写では、DNAの(①:全体、一部)で
2本鎖が開き、1本ずつの
ヌクレオチド鎖となる。
これらのヌクレオチド鎖のうち
(②:両方、片方)のヌクレオチド鎖が
鋳型となって転写に使われる。
RNAのヌクレオチドと
DNAのヌクレオチド鎖とは、
(③:糖、塩基、リン酸)を介して
相補的に結合する。
RNAを合成するための
鋳型となるDNAの塩基配列が
ATCGならば、
合成されるRNAの塩基配列は、
(④:UGAC、TAGC、UAGC)となる。
RNAのウラシルと結合するのは、DNAの
(⑤:アデニン、チミン、シトシン、グアニン)
である。
解答
転写では、DNAの(①:一部)で
2本鎖が開き、1本ずつの
ヌクレオチド鎖となる。
これらのヌクレオチド鎖のうち
(②:片方)のヌクレオチド鎖が
鋳型となって転写に使われる。
RNAのヌクレオチドと
DNAのヌクレオチド鎖とは、
(③:塩基)を介して
相補的に結合する。
RNAを合成するための
鋳型となるDNAの塩基配列が
ATCGならば、
合成されるRNAの塩基配列は、
(④:UGAC、TAGC、UAGC)となる。
RNAのウラシルと結合するのは、DNAの
(⑤:アデニン)
である。
5:DNAの複製と転写の違い
まずは、意味を
確認しておきましょう。
・DNAの複製は、
DNAの塩基配列に基づいて
DNAをコピー(複製)する過程
・RNAの転写は、
DNAの塩基配列に基づいて
RNAを合成する過程
です。
では、3つの違い。
・複製では、DNAの全体が複製される。
・転写では、DNAの一部分が転写される。
・複製では、
DNAの2本のヌクレオチド鎖の
両方が鋳型となる。
・転写では、
DNAの2本のヌクレオチド鎖の
片方だけが鋳型となる。
・複製では、DNAのアデニンに対して、
“DNA”のヌクレオチドのチミンが結合する。
・転写では、DNAのアデニンに対して、
“RNA”のヌクレオチドのウラシルが結合する。
