外来生物(外来種)
目次
1:在来生物(在来種)と外来生物(外来種)
ある地域に古くから
生息している生物のことを
在来生物(在来種)といいます。
一方で、
人間によって、意図的に、または意図せずに、
本来の生息地から別の場所へと移されて、
そこに住み着いた生物のことを、
外来生物(外来種)
といいます。
例えば、
アライグマという動物は、
日本の外来生物の一種です(下図)。
(出典:環境省HP – 外来種写真集 | 日本の外来種対策 | 外来生物法 (env.go.jp))
本来の生息地は、
北アメリカにあります。
日本へは、ペットとして
飼うことなどを目的に導入されましたが、
飼われていた個体が逃げ出したり、
捨てられたりした結果、
自然に繁殖して、現在では
日本各地に生息しています。
2:在来生物への影響
外来生物の本来の生息地では、
ふつう、天敵となる捕食者が存在すること
などによって、
個体数の増減のバランスが
とられています。
ところが、
移された先の場所には、天敵となる
捕食者が存在しない場合があります。
こうした場合、
外来生物の個体数が急激に増えて、
・在来生物を捕食する
・在来生物の食物や生息場所を奪う
ことなどによって、
在来生物の個体数を激減させたり、
絶滅に追いやってしまう事があるのです。
捕食による影響が大きい
日本の外来生物として、
・オオクチバス と ブルーギル
・フイリマングース
また、日本から海外へ移入され、
生息場所を奪うことによる影響が大きい
外来生物として、
・クズ
を取り上げて、
順番に解説しましょう。
3:オオクチバス(※)とブルーギル
※:ブラックバスと呼ばれることもある。
オオクチバスとブルーギルは、
共に肉食の淡水魚で、
本来の生息場所は、北アメリカにあります。
(下図:左-オオクチバス、右-ブルーギル)
(出典:環境省HP – 外来種写真集 | 日本の外来種対策 | 外来生物法 (env.go.jp))
どちらも、
昆虫や魚など様々な動物をバクバクと食べ、
また、強い繁殖力をもっています。
日本へは、釣りの対象として持ち込まれ、
各地の湖沼に放流されました。
日本の湖沼には、
オオクチバスとブルーギルにとっての
天敵となる捕食者が存在しなかったため、
個体数がグングンと増えていきました。
その結果、捕食などによって、
湖沼に生息する在来生物の個体数が
減少していることが問題になっています。
例えば、琵琶湖では、
オオクチバスとブルーギルの影響によって、
ホンモロコなどの在来魚が激減してしまい、
現在、オオクチバスとブルーギルの
駆除が進められています。
4:フイリマングース
沖縄本島や奄美大島では、以前、
ハブ(強い毒を持つヘビの一種)などを
駆除しようとして、
当時は日本に生息していなかった
フイリマングースを導入しました(下図)。
(出典:環境省HP – 外来種写真集 | 日本の外来種対策 | 外来生物法 (env.go.jp))
フイリマングースがハブの
天敵となることを期待したのです。
導入後、フイリマングースの個体数は
どんどん増加していきました。
当然、
ハブを捕食してくれていると
思いきや、、、。
後の調査で、
フイリマングースは、
ハブをほとんど捕食していない
という事がわかったのです。
その理由の1つは、
フイリマングースは、主に昼間に活動するのに対し、
ハブは、主に夜間に活動するという特徴があるため
であると考えられています。
フイリマングースは、ハブのかわりに、
ヤンバルクイナやアマミノクロウサギ
などの希少な在来生物を
主に捕食していたのです。
(下図:左-ヤンバルクイナ、右-アマミノクロウサギ)
(出典:環境省HP – 環境省_保護増殖事業 (env.go.jp))
現在、
ヤンバルクイナやアマミノクロウサギの
絶滅が心配されており、
奄美大島では、
フイリマングースの駆除が
進んでいます。
5:クズ
これまでは、海外から日本へ移入した
外来生物を取り上げてきました。
ここでは、日本から海外へ移入され、
その地の外来生物となった
クズという植物を
紹介しましょう。
クズは、マメの仲間の、
つる植物の一種で、
日本では、もともと各地に生育しています。
(下図:左-クズの葉、右-クズの花)
以前、緑化などの目的で日本から
北アメリカに移入されました。
ところが、
移入先で必要以上に増殖し、
他の植物の成長を妨げるようになり、
問題となっています。
6:侵略的外来生物、特定外来生物
外来生物のうち、
生態系に大きな影響を与えるものは、
侵略的外来生物と呼ばれます。
これまでに紹介した、
オオクチバス、ブルーギル、フイリマングースは、
いずれも、日本における侵略的外来生物に含まれます。
似た用語として、
特定外来生物という用語があります。
特定外来生物は、日本の
外来生物法という法律によって
定められた用語です。
外来生物法では、
日本における外来生物のうち、
在来生物に与える影響が特に大きいと
思われる生物などを特定外来生物として指定し、
その生物の飼育・栽培・輸入などが
原則禁止されています。
オオクチバス、ブルーギル、フイリマングースは、
特定外来生物にも指定されています。
7:「とにかく駆除すればよい」という訳ではない。
移入した先に定着し、
在来生物に大きな影響を
与えている外来生物に対しては、
「早く駆除しよう!」と、
安易に考えられがちです。
しかし、定着しているということは、
既に、その地域の生態系の一員として
組み込まれているとも考えられるのです。
こうした外来生物を安易に
駆除してしまうと、
思いもよらぬ結果を
招くことがあります。
例えば、
かつて、小笠原諸島では、
家畜のヤギが野生化して急増し、
島の植物が大きな被害を受けました。
このため、島では、
ヤギを全て駆除しました。
すると、その結果、
外来生物であるギンネムという植物が
どんどん増えてしまったのです(下図)。
(出典:環境省HP – 外来種写真集 | 日本の外来種対策 | 外来生物法 (env.go.jp))
なんと、ヤギがギンネムを食べることで、
ギンネムの個体数が増えすぎることなく
抑えられていたのです。
このように、
外来生物は単に駆除すればよい
というものではなく、
外来生物が生態系の中で、
どのような役割を果たしているのかを
見極めつつ、
対策を講じていく
必要があるのです。
8:まとめ
最後に、最重要ポイントを
まとめましょう。
①:
外来生物の個体数が急増し、
・在来生物を捕食する
・在来生物の食物や生息場所を奪う
ことで、
在来生物の個体数が減少する。
②:
ブラックバス と ブルーギル
→ 在来生物を捕食
フイリマングース
→ 希少なヤンバルクイナやアマミノクロウサギを捕食
そして、
最も重要なこと。
それは、
外来生物問題の根本的な原因は、
そういうことです!