『生物基礎』細胞周期・体細胞分裂らくらく理解法

目次

0:体細胞分裂の落とし穴

まとなが ねぎと
まとなが ねぎと
体細胞分裂を勉強しようと
思ったんですけど、
S期とか前期とか、
時期の名前ばっかり出てきて
よく分からないんですよね。

体細胞分裂の学習では、
1つの細胞が2つの細胞に
分かれる過程を扱いますが、

分裂の過程を細かく区分して
S期や前期といったように名前がついており、
パッと見、複雑に感じられます。

でも実は、生物基礎で学ぶ範囲内の
体細胞分裂の仕組み自体は、
とってもシンプルなのです。

その仕組みを理解しておけば、
細かい区分の名称などは、後から
さらっと覚えることができるでしょう。

ボンボ
ボンボ
ねぇねぇ、その仕組みって何なの?

はいはい、慌てなくても、
順序よく解説していきますからね。

1:体細胞分裂とは

生物の体を構成する細胞が
分裂することを、
体細胞分裂といいます。

例えば、ヒトの皮膚の細胞は、
毎日沢山はがれ落ち、これを
フケやアカなどと呼んでいますが、

はがれ落ちても皮膚が薄くならないのは、
皮膚の内部で、体細胞分裂が毎日行われ
新しい細胞が作られているからです。

体細胞分裂において
最も重要なポイントといえることは、

分裂前の細胞と分裂後の細胞とで、
細胞が持つDNAの遺伝情報が同じになる

ということです。

その結果として、
体細胞分裂で生じた細胞同士も
DNAの遺伝情報が同じになります。
(下図:〇は細胞を表す)

1つの細胞が2つになる図。もとの細胞と、生じた2つの細胞に対して、遺伝情報が同じと表記。

例えば、ヒトの成長では、
受精卵という細胞が体細胞分裂を
繰り返すことで細胞の数を増やし、
体を形成していきます。

このため、
同一人物の体であれば、
例外的な一部の細胞を除き、

髪の毛の細胞であっても
足の指先の細胞であっても、
DNAの遺伝情報は同じなのです。

自分の体のどの部位から
細胞を採取しても、

その細胞が、DNAの遺伝情報からみて
確かに自分自身の細胞であるのは
体細胞分裂によっているのです。

なすき ゆり
なすき ゆり
どのようにしてDNAの遺伝情報が同じ
細胞ができるのですか?

そこなんです。生物基礎では、
1つの細胞から、同じ遺伝情報のDNAをもつ
2つの細胞がどのようにできるのか、
その仕組みに注目するのです。

ボンボ
ボンボ
DNAとか遺伝情報って聞くと難しそうだなぁ。

DNAや遺伝情報という言葉の
意味自体を追求していくと
難しいことも出てくるでしょう。

でも、今回は、
DNAを分ける仕組み
を学びます。

そして、その仕組みは、
とってもシンプルなのですよ。

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2:細胞周期(間期と分裂期)

体細胞分裂を繰り返している細胞において、
分裂が終わってから、次の分裂が終わるまでの
過程のことを細胞周期といいます。

細胞周期は、

・間期:分裂の準備をする時期
・分裂期:細胞が2つに分かれる時期

の2つの時期に分けられます。

間期の時間の長さは、
分裂期の時間の長さに比べて
ずっと長いです(下図※)。

細胞周期の間期と分裂期が円形の矢印で描いてある。アナログ時計に例えると、間期の矢印の長さは10時間分、分裂期は2時間分くらいの長さで描いてある。分裂期の終わりの部分に、ここで分裂が終わると書いてある

※:時間の長さの違いを矢印の
  長さの違いで描いている。

体細胞分裂は、失敗すれば
細胞の死などにつながることもある
とても繊細な現象です。

それだけに、分裂そのものよりも、
分裂のための準備に、より多くの時間を
かけているのだと理解しておきましょう。

実際、間期にはDNAの量を
倍加するという重要な現象が
おきます。

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3:間期にはDNAの複製が行われる

もとのDNAと全く同じ
DNAが合成されることを

DNAの複製

といいます(下図)。

1本のDNAが複製の結果、2本になっている

複製で生じたDNAの遺伝情報は、
もとのDNAの遺伝情報と同一になります。

間期は、大きく3つの時期に
区分されています。

間期のうち、
DNAの複製が行われている
時期のことをS期(DNA合成期ともいう)
とよびます。

また、S期の前に、
DANの複製の準備をする時期のことを
G1期(DNA合成準備期ともいう)とよび、

S期の後で、
分裂期に入る準備をする時期のことを
G2期(分裂準備期ともいう)とよびます(下図)。

円形の矢印で描かれた間期と分裂期の図で、間期が3つに分けて描いてある。分裂期の次がG1期、その次がS期、その次がG2期。そして再び分裂期となる。

間期のS期に複製されたDNAは、
その後、細胞が2つに分かれる過程で
各々の細胞に分配されるのです。
(下図:真核細胞での模式図)

細胞の核内に1本のDNAの模式図が描いある。複製後、DNAが2本になり、分裂後、それぞれの細胞の核内のDNAは1本となる。

このため、
分裂の前後で、細胞がもつDNAの
遺伝情報が同じになり、

分裂で増えた細胞どうしも、
DNAの遺伝情報が同じになるのです。

では、次に
複製後のDNAをどのようにして
2つの細胞へ分配するのか、
分裂の過程を通して見ていきましょう。

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4:分裂期を学ぶための予備知識

以下、真核細胞(核を持つ細胞)における
体細胞分裂
の分裂期について解説します。

4-1. 母細胞と娘細胞

分裂期には、
1つの細胞が2つに分裂します。

分裂が行われるとき、
分裂前の細胞のことを
母細胞(ぼさいぼう)とよび、

分裂後の細胞のことを
娘細胞(むすめさいぼう)
とよびます(下図)。

1個の細胞が分裂して2個になる。もとの1個の細胞に母細胞、分裂後の2個の細胞に娘細胞と表記してある。

娘細胞は、
次の分裂の際には
母細胞となります。

まとなが ねぎと
まとなが ねぎと
父細胞とか息子細胞もあるのですか?

いえ、今のところ、
そのような呼称の細胞はありません。

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4-2. 細胞質

あとで細胞質分裂という
現象が出てきますので、

細胞質という用語の意味を
先に押さえておきましょう。

真核細胞(核を持つ細胞)では、
核を基準にして
細胞の構造をみると、

細胞は、
核と細胞質に
分けられます。

細胞質というのは、
細胞膜に囲まれた細胞構造のうち
核以外の部分のことです。

細胞質の最も外側は、
細胞膜にあたります(下図)。

細胞膜と核が描かれた図。細胞質は細胞膜を含んでいる。

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4-3. 核分裂と細胞質分裂

真核細胞の体細胞分裂の際は、
以下の2つの現象が見られます。

・核分裂:核が分かれること
・細胞質分裂:細胞質が分かれること

一般に、核分裂が先行して
起こります(下図)。

一番上に、1つの細胞が描いてある。細胞内に1つの核がある。核分裂をすると、核が2個になる。次に細胞質分裂をすると、核を1つもつ細胞が、2つできる。

核分裂が起きることで、
あらかじめ複製されたDNAが
2つの娘細胞に分配され、

同じ遺伝情報をもつDNAが
含まれる2つの娘細胞が
生じるのです。

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5:分裂期各期のポイント

以下、真核細胞(核を持つ細胞)における
体細胞分裂
の分裂期について解説します。

5-1. 染色体の変化をとらえる

分裂期の様子を見ていく上で、
染色体の変化を捉えることが
ポイントです。

まとなが ねぎと
まとなが ねぎと
染色体って真核細胞のところで習いましたね。
だけど、ちょっとだけ復習をしてほしいです。

DNAの形は、糸状で非常に長く、
適度に折りたたまれて細胞の
核内に入っています。

この、
DNAが折りたたまれた
構造物のことを染色体と
呼んでいるのです。

ですから、分裂期の
染色体の変化を捉える
というのは、

DNAを2つの娘細胞に
分配する様子を捉える

ということなのです。

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5-2. 間期の染色体

まずは、間期の染色体の状態を
確認しておきましょう。

間期の染色体は、
折りたたまれた構造である
といっても、

まだ、かなり細く長い状態で
核内に分散しています。

このため、染色体を染色しても、
光学顕微鏡レベルでは糸状には見えず、
モヤがかかったように見えます
(下図:染色した核)。

染色した後の核を拡大した写真。糸状の染色体が入っていることは確認できない。

ですが、解説の都合上、
間期の染色体を糸状に描いた
模式図を使って説明します。

真核細胞の核内には、複数本の
染色体が含まれますが、

簡単のため、
本の染色体をもつ
植物細胞と動物細胞を想定して

DNAの複製前の図を
描いてみましょう(下図)。

植物細胞と動物細胞の核内に2本ずつ細長い糸状に染色体が描いてある。2本は同じ長さで、赤と青で色分けしてある。

※:2本の染色体を赤と青で区別している。

DNAの複製が行われると、
下図のように、染色体が
くっついた状態で存在しています。

染色体が2本ずつくっついて描いてある。

単に、DNAの複製の結果、
染色体が倍加したのです。

では、分裂期に入ると
どうなるのでしょうか。

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5-3. 分裂期(前期~終期)の様子

分裂期は、
染色体の変化の段階に応じて、
以下の4つの時期

前期、中期、後期、終期

に分けられます。

分裂期の様子を、
植物細胞と動物細胞の
模式図で解説しますが、

注目すべき点は

倍加した染色体を段取りよく
2つの細胞に分けている

ということです。

①前期

まず、分散していた染色体が、
さらに折りたたまれます

分裂期に染色体が
折りたたまれることを
染色体の凝縮(ぎょうしゅく)とよび、

凝縮した結果、染色体は、
間期に比べて1本1本が
より短く、より太くなります。

生物基礎の教科書では、
この状態の染色体の形を
ひも状と表現しているのです。
(下図:赤青の線は、ひも状の染色体を示す)

間期に比べてより太くなった染色体が細胞内に描いてある。

さらに、
染色体の凝縮と同時に
核膜が消えます。

上図では、消えた核膜を
点線で表現しています。

核膜が消える結果、
のちに染色体を細胞内で2つに
分けることが可能になるのです。

以上の現象が起きる時期を
前期とよびます。

②中期

前期に続き、染色体がさらに凝縮します。
その結果、さらに太く短い染色体となります。

この状態の染色体の形のことを、
教科書では、棒状と表現しています。

そして、棒状となった染色体は
細胞の中央部(赤道面という)に並び、

いよいよ、染色体を2つに分ける
配置を整えた状態となるのです(下図)。

前期よりも短く太くなった染色体が細胞の中央に描いてある。

この状態までの時期を
中期とよびます。

③後期

赤道面に並んだ染色体が2つに分かれ、
それぞれ反対方向へ移動します。

各染色体の真ん中の部分が
引っ張られるようにして移動するため、
移動する染色体の形は「<、>」の
形に見えます(下図:左右に移動)。

染色体が左右に分かれていく図。各染色体の中央部分が左右に引かれるように移動するため、染色体の形が、ひらがなのくの字に見える。

この移動する時期を
後期といいます。

④終期

凝縮していた染色体が再び
細く長くなっていき分散
します。

また、染色体を囲うように
核膜が生じます

つまり、見た目上、
前期とは逆の現象が起こるのです。

そして同時に
細胞質分裂が起こり、
2つの娘細胞が生じます(下図)。

核膜が描かれ、その中で染色体の形がひも状、分散の状態に戻っていく図。また、1つの細胞が2つに分かれている。
ちょっと細かいですが、細胞質分裂は、
植物細胞では赤道面に仕切りができるように、
動物細胞では赤道面の部分が
くびれるように起こります(上図)。

以上の現象が起きる時期の
ことを終期といいます。

これで分裂期が完了し、
間期(のG1期)から始まった細胞周期が
1周したことになります。

なすき ゆり
なすき ゆり
細く長い染色体を太く短くして、
細胞の真ん中に並べてから2つに分ける。

本当にシンプルで効率のよい方法で
細胞はDNAを分配しているのですね。

まとなが ねぎと
まとなが ねぎと
難しいことは起きていないのですね。
前期や中期などの細かい区分に惑わされてました。

そうなんです。
もちろん、区分して捉えることは、
物事を理解するうえで大切なことです。

でも、その区分にとらわれ過ぎてしまうと、
本来起きていること、そのものが
見えなくなってしまうのですね。

さて、長くなりましたが
体細胞分裂の解説は
これで終わりです。

また別の記事で
お会いしましょう。

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