遺伝子の転写と翻訳 ~遺伝子の発現③~
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1つ前の記事「RNAの構造その合成(転写)」
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1:遺伝子の転写と翻訳
遺伝子の発現は、
①遺伝子の転写
②翻訳
の2つ過程からなります。
遺伝子というのは、
DNAの塩基配列のうち
タンパク質を合成する情報を
担っている領域
のことでしたね。
→「遺伝子って?~遺伝子発現①」
つまり、
遺伝子の転写では
DNAの塩基配列のうち
タンパク質を合成する情報を
担っている領域が
RNAに写し取られるのです。
遺伝子が転写されて
できたRNAのことを
mRNA(メッセンジャーRNA)
※伝令RNAともいう
といいます。
mRNAの塩基配列は
単に遺伝子の塩基配列を
写し取っているだけではなく、
タンパク質をつくるための
情報も写し取っています。
mRNAは、次の段階
翻訳に進みます。
翻訳というのは、
mRNAの塩基配列にもとづいて
タンパク質が合成される過程
のことです。
タンパク質は
多数のアミノ酸が鎖状に並び
つながった物質です(下図)。

アミノ酸の並びのことを
アミノ酸配列とよびます。
※短編記事「タンパク質」
翻訳の過程では、
mRNAの”塩基配列”にもとづいて
タンパク質の”アミノ酸配列”が
つくられるのです。
翻訳ではまず、mRNAの所へ
アミノ酸が1つずつ運ばれてきます。
それは、アミノ酸の
いわば “運び屋” によって
行われます。
運び屋の名前は、
tRNA(トランスファーRNAと読む)
※運搬RNA、転移RNAともいう
といいます。
tRNAは、RNAの一種で
RNAのヌクレオチド鎖が
折れ曲がった作りをしています。
その作りの中に
アミノ酸を1個だけ結合させて
mRNAの所へ運ぶことが
できるのです(下図)。

ピザを運ぶドローンみたい。
アミノ酸を運ぶ
tRNAは
mRNAと結合します。
すると、
今運ばれてきたアミノ酸と
すでにmRNAに結合していた
隣のtRNAのアミノ酸とが
横並びになります。
そして、隣り合った
アミノ酸同士が結合します(下図)。

この過程が繰り返されて
アミノ酸同士が次々と結合します。
アミノ酸を結合し終えたtRNAは
その都度、mRNAから離れます(下図)。

翻訳が終わると
タンパク質のアミノ酸配列が
できるのです(下図)。

※実際のアミノ酸配列は
もっと長い。
ここで1つ思い出してほしいのは、
遺伝子には様々なものがあり、
それぞれ異なるタンパク質の情報を
担っているという事です。
※「遺伝子って?」
遺伝子の塩基配列が異なれば、
それを写し取ったmRNAの
塩基配列も異なり、
それを翻訳して出来た
タンパク質のアミノ酸配列も
異なるのです。
どのようにして、
mRNAの塩基配列は
それに応じたアミノ酸配列に
翻訳されるのでしょうか?
2:コドンとアンチコドン
mRNAの塩基配列は
例えば以下のようなものです。
GUUAAGCAA
一方、アミノ酸配列は
バリン、リシン、グルタミン
のようにアミノ酸が並びます。
まるで暗号のような
mRNAの塩基配列は、
どのようなルールでアミノ酸に
置き換えられるのでしょう?
それは、
mRNAの塩基配列は
3つの連続した塩基の並び
によって、1つのアミノ酸を
指定している
というルールです。
塩基の並びの順番が大切です。
普通、左側を1番目の塩基として
書きます。
例えば、
CAAという塩基の並びは、
グルタミンという
アミノ酸を指定します。
でも、tRNAはどうやって
mRNAの3つの塩基の並びが
指定する通りにアミノ酸を
持ってくるのでしょうか?
今説明した、
mRNAにおいて
1つのアミノ酸を指定する
3つの連続した塩基の並びのことを
コドン
といいます。
一方で、
tRNAの構造の中には、
コドンと相補的に結合できる
3つの連続した塩基の並び
(アンチコドンという)
があるのです。
そして、tRNAは
アンチコドンに対応した特定の
アミノ酸と結合し、運ぶのです。
例えば、
コドン(CAA)と相補的に結合できる
アンチコドン(GUU)をもつtRNAは
グルタミンと結合します(下図)。

そして、コドン(CAA)の場所へ
運ぶのです(下図)。

このようにして
mRNAの塩基配列に対応した
アミノ酸配列をもつ
タンパク質が合成されるのです。
3:遺伝暗号表、開始コドン、終止コドン
コドンと、コドンが指定する
アミノ酸との対応関係をまとめた
表のことを 遺伝暗号表 といいます(下図)。

アミノ酸は全部で
20種類であるのに対して、
コドンは全部で
64種類もあります。
64種類ってどういうこと?
mRNAの塩基は4種類あって
その塩基3つの並びで
コドンができています。
計算上、
塩基3つの並び方は全部で
4×4×4=64(通り)
です。
そして実際にも
64種類のコドンが
存在しているのです。
アミノ酸は20種類だから、
コドンが余るような・・・。
コドンの種類が違っても
同じアミノ酸を指定する、
という場合がほとんどなのです。
例えば、異なるコドン
CCU、CCC、CCA、CCGは
いずれも同じプロリンという
アミノ酸を指定します(下図)。

なるほど。
でも、この表を覚えるのは
とても大変だなぁ!
共通テスト対策としては、
この表を丸暗記する
必要はありません。
①遺伝暗号表の読み方に慣れる。
②開始コドンと終止コドンの
働きを覚える。
の2つは、クリアしましょう。
①遺伝暗号表の読み方に慣れる
表の読み方を知って
確認問題を解いておきましょう。
遺伝暗号表は、
左端にコドンの1番目の塩基、
上側に2番目の塩基、
右端に3番目の塩基、
が分けて書いてあります。
例えば、
1番目の塩基がG、2番目がA、
3番目がAの部分を見ると、
GAAに当たります(下図)。

では、コドン(UAC)が指定する
アミノ酸は何でしょうか?
・・・・・・・・・・・・
正解は、チロシンです。
確認問題も解いて
慣れて行きましょう。
②開始コドンと終止コドンの
働きを覚える。
AUGというコドンは
メチオニンというアミノ酸を
指定するのですが、
それに加えて
翻訳の開始も指定する
場合があるのです。
メチオニンを指定すると同時に
翻訳の開始も指定する
AUGのことを
開始コドン
といいます(下図)。

例えば、
以下のようなmRNAの
塩基配列があるとしましょう。
CAUGGGCAAGGU
左から2番目の塩基(A)から始まる
AUGが開始コドンだとします。
この時、
tRNAが開始コドン(AUG)に
メチオニンを運び、ここから翻訳が
スタートするのです。
すなわち、
AUG GGC AAG ・・・
という順でコドンの
翻訳が進みます(下図)。

なお、翻訳の開始を指定しないAUGは、
開始コドンでは無く、ただのコドンです。
終止コドンは
翻訳の終了を指定する
コドンであり、
UAA、UAG、UGA
の3つがあります。
終止コドンは、
アミノ酸を指定しません(下図)。

例えば、mRNAの翻訳中に
UAAが出てくると、
そこにはアミノ酸が運ばれず
翻訳がストップするのです(下図)。

こうして特定の遺伝子から
特定のタンパク質が合成されるのです。
確認問題
遺伝子が転写されてできる
RNAのことを(①:tRNA、mRNA)、
アミノ酸を運搬する
RNAのことを(②:tRNA、mRNA)
という。
翻訳の過程では、
mRNAの塩基3つの並びで
1つのアミノ酸を指定しており、
これを(③:コドン、アンチコドン)という。
ある遺伝子の塩基配列の一部が
以下であったとする。
CCGTAGAAT
この塩基配列が全て転写されると、
mRNAの塩基配列は
④
GGCAUCUUA
GGCATCTTA
CCGTAGAAT
GGCUTCTTU
となる。
あるmRNAの塩基配列が
CCC UAU UGGだった。
この配列が左側から翻訳される場合、
UGGは、
(⑤チロシン、トリプトファン、プロリン)に
翻訳される。
※下の遺伝暗号表を参考にしなさい。

また、UAUは、
(⑥チロシン、トリプトファン、プロリン)に
翻訳される。
コドン(UAU)に結合する
tRNAのアンチコドンは、
(⑦:AUA、UAU、ATA)
である。
解答
遺伝子が転写されてできる
RNAのことを(①:mRNA)、
アミノ酸を運搬する
RNAのことを(②:tRNA)
という。
翻訳の過程では、
mRNAの塩基3つの並びで
1つのアミノ酸を指定しており、
これを(③:コドン)という。
ある遺伝子の塩基配列の一部が
以下であったとする。
CCGTAGAAT
この塩基配列が全て転写されると、
mRNAの塩基配列は
④
GGCAUCUUAGGCATCTTA
CCGTAGAAT
GGCUTCTTU
となる。
あるmRNAの塩基配列が
CCC UAU UGGだった。
この配列が左側から翻訳される場合、
UGGは、
(⑤トリプトファン)に
翻訳される。
また、UAUは、
(⑥チロシン)に
翻訳される。
コドン(UAU)に結合する
tRNAのアンチコドンは、
(⑦:AUA)
である。
※RNAなのでチミン(T)でなく
ウラシル(U)。

