『生物基礎』転写と翻訳:遺伝子の発現
目次
1:遺伝子の発現
DNAの塩基配列をもとに
タンパク質が合成されることを、
遺伝子の発現
といいます。
遺伝子が発現する過程は、
①転写(てんしゃ)
②翻訳
の2段階からなります。
2:転写
2-1. 転写とは
転写というのは、DNAの塩基配列が
RNAの塩基配列に写し取られる過程
のことです。
まず、RNAについて、
DNAと比較しながら解説しましょう。
2-2. RNAとDNAの構造の違い
RNAとDNAの構造の違いは、入試で頻繁に聞かれる知識の1つ
です。
RNAは、
ヌクレオチドが鎖状につながった
構造をした物質である
という点では、DNAと同様です。
一方で、
DNAと大きく異なる特徴として、
以下の4つがあります。
①
DNAのヌクレオチドの糖は、デオキシリボースなのに対し、
RNAのヌクレオチドの糖は、リボースである(下図)。
②
DNAのヌクレオチドのチミン(T)の代わりに、
RNAのヌクレオチドはウラシル(U)をもつ(下図)。
③
DNAは2本のヌクレオチド鎖からなるのに対し、
RNAは1本のヌクレオチド鎖からなる。
※:上図のDNAは、らせんを
ほどいた形で描いてある。
④
RNAは、らせん型をしていない。
①以外は、この後の解説でも
図や文で繰り返し出てきます。
それでは、
転写の過程を見ていきましょう。
2-3. 転写の仕組み
転写は、
DNAの特定の部分で、
塩基対の結合が切れて
1本ずつのヌクレオチド鎖になる
ことで始まります(下図)。
次に、
一方のヌクレオチド鎖の塩基に、
RNAのヌクレオチドの塩基が、
相補性に基づいて次々と結合します(下図)。
この時、
DNAのヌクレオチドの
アデニン(A)に対しては、
RNAのヌクレオチドの
ウラシル(U)が結合します。
例えば、DNAの塩基配列が、左側からCAGTGAの場合、
結合していくヌクレオチドは、下図のようになります。
そして、
並んだRNAのヌクレオチド同士が結合し、
DANのヌクレオチド鎖から離れて、
1本のRNAとなるのです。
例として、下図のRNAの塩基配列は、
左からGUCACUAACの9つで描いています。
※:上図のRNAは、9つの塩基で描かれていますが、
実際のRNAは、もっと多くの塩基からなります。
なお、もう一方のヌクレオチド鎖は、
転写に関与しません(下図)。
以上が転写の仕組みです。
では、次に翻訳の仕組みに入りましょう。
3:翻訳
3-1. mRNA
転写でつくられるRNAには、
複数の種類があり、
生物基礎では、
mRNA(メッセンジャーRNAと読む。伝令RNAともいう)
というRNAを扱います。
mRNAの特徴は、
その塩基配列がタンパク質の
アミノ酸配列に置き換えられる
ということです。
3-2. 翻訳とは
遺伝子分野において、
翻訳というのは、mRNAの塩基配列が
アミノ酸配列に変換される過程のことです。目次に戻れるボタン
3-3. 翻訳の仕組み
翻訳の過程では、
mRNAの連続した3つの塩基の並びごとに、
1つのアミノ酸に置き換えられます。
具体的に、翻訳の過程を図で描いてみましょう。
まず、mRNAの塩基配列の3塩基の並びに基づき、
1つのアミノ酸が並びます。
(下図:mRNAの一部の様子を描いている。)
同時に、隣り合った
アミノ酸同士が結合します(下図)。
このようにして、
アミノ酸が並び、結合することを
繰り返すことで、
mRNAの塩基配列は、
アミノ酸の配列に置き換えられます(下図)。
こうして、タンパク質が
合成されるのです(下図)。
mRNAの3つの塩基の並びが、
1つのアミノ酸に置き換えられる
と解説しましたが、
どのような3塩基の並びかによって、
置き換えられるアミノ酸の種類が決まります。
例えば、
GUCは、バリン
ACUは、トレオニン
AACは、アスパラギン
というアミノ酸に
置き換えられます。
従って、先に解説したmRNAの
9つの塩基の並びでは、
GUC ACU AAC の部分は、
下図のようなアミノ酸配列に
置き換えらるのです(下図)。
このように、
mRNAの塩基配列、
もっと根本的には、
DNAの塩基配列が異なると、
転写と翻訳を経て合成される
アミノ酸の配列が異なり、
違う種類のタンパク質ができるのです。
4:セントラルドグマ
DNAの塩基配列がRNAに転写され、
mRNAの塩基配列がタンパク質の
アミノ酸配列に翻訳される過程に
見られるのように、
DNAの塩基配列の情報(遺伝情報)は、
原則として
DNA ⇒ RNA ⇒ タンパク質
の一方向へ流れます。
この原則ことを
セントラルドグマといいます。