生物基礎:遷移の分類、一次遷移(裸地~陰樹林)の過程
目次
1:植生は変化する
例えば、テレビなどで、
長年放置された村の映像が
映ることがありますね?
道だったであろう所や家の中まで、
いたるところに草や木が
生い茂った状態になっている。
もっと年月がたてば、
草木の密度が増えて
うっそうとした状態になるでしょう。
植生というのは、
年月の経過に伴って
自然に変化していきます。
日本のように降水量と気温が
森林の形成に適した地域であれば、
人の手が入るなどしなければ、
年月を経て森に変わっていく
ことでしょう。
もっと詳しく知りたいです!
テストにも良く出るテーマみたいですし(笑)。
それじゃあ、次の項目から
詳しくみていきましょう。
2:遷移の分類
ある場所の植生が
年月の経過とともに変化していくことを
植生遷移(せんい)、または単に遷移といいます。
植生遷移は、
・一次遷移:
土壌がない状態から始まる遷移
・二次遷移:
土壌があり、その中に植物の種子などが
存在している状態から始まる遷移
に分けられます。
土壌(どじょう)は、
岩石が風化してできた砂などに、
生物の遺骸が分解されて生じた
有機物が混ざることで形成されます。
例えば、森を歩くとき、私達は、
森の土壌の表面を踏みしめながら歩いています(下図)。
一次遷移は、
遷移の始まる場所が陸地か湖沼かで
以下の2つに分けられます。
・乾性遷移:始まる場所が陸地
・湿性遷移:始まる場所が湖沼など
以上の、植生遷移の分類を
まとめて図示してみましょう。
生物基礎では、
乾性遷移の仕組みについて
詳しく学んでいきます。
3:裸地 ー 乾性遷移のスタート
※:以下では、生物基礎の教科書に
記載された遷移の過程を解説します。
一般に、植物が見られない
土地のことを裸地(らち)といいます。
特に、
火山の噴火で生じた溶岩の上や
海底火山の噴火で生じた新しい島では
植物だけでなく、土壌もみられません(下図)。
上図中の矢印:噴火で生じた溶岩(三宅島)
乾性遷移は、こうした、
土壌がない裸地からスタートします。
土壌がない裸地は、
水分や、植物などの栄養分となる
栄養塩類(窒素など)の乏しい環境です。
このような環境では、
乾燥に強く、少ない栄養塩類でも
生きていける生物が生活を始めます。
そのような、
遷移の初期に侵入する生物種のことを、
先駆種(せんくしゅ:パイオニア種ともいう)
といいます。
どういった生物が先駆種となるかは、
裸地の状況によって異なりますが、
代表的な先駆種として、
・地衣類(ちいるい)
・コケ植物
・イタドリ(草本植物の一種)
・ヤシャブシ(木本植物の一種)
があります。
地衣類というのは、
緑藻と菌類、または、シアノバクテリアと菌類が
ひとまとまりになって一緒に生活している
共生体の総称です。
(下図:コンクリの塀につく黄色タイプの地衣類)
地衣類は、乾燥に大変強く、
晴れの日が続くとカラカラに
乾燥してしまいますが、
雨がふって水を得ると
活動を再開することができます。
以下の解説では、
地衣類・コケ植物が先駆種となった
場合を想定して解説します。
4:裸地→草原→低木林→陽樹林の変化過程
土壌のない裸地上で、
地衣類やコケ植物は、
増殖していく一方、
枯死していきます。
地衣類やコケ植物が枯死し、
その遺骸が分解されて蓄積することで、
土壌の形成が始まるのです。
上図:大地の断面図
形成が始まったばかりの土壌は、
まだ厚さの薄い土壌ですが、
土壌の無い状態に比べると
水が保たれやすく、栄養塩類も
より多くなります。
そうした場所に
草本植物が進入すると、
やがて草原となるのです(下図)。
草本が枯死した遺骸が分解されて
土壌の形成がさらに進むと、
草本に混ざって低木が
見られるようになり、
やがて、低木林となります(下図)。
低木の枯れ枝や枯れ葉が分解されて、
より一層、土壌の形成が進むと、
高木(※)が生育できるようになります。
※:低木の樹種に比べて、より高くまで
成長できる種類の樹木
低木林に進入する高木は、
一般に、陽樹の高木です。
陽樹とは、
明るい場所でよく生育する
樹木のことです。
陽樹の高木としては、
アカマツなどがあります。
そうですね。入試では、遷移と
光合成速度や呼吸速度をからめた出題も
予想されるので、しっかり理解して
おきましょうね。
話を戻しましょう。
低木林の内部は、比較的明るく、
陽樹の高木の種子は発芽し、
成長してきます。
すると、いずれは、
低木よりも樹高が高くなり、
低木への光を遮ってしまいます。
このため、低木林は、
陽樹の高木が主体となる
陽樹林へと変化します(下図)。
上図:背丈の比較として低木を1本描いてある
植生が草原、低木林、陽樹林と変化するのですね。
そうです!
土壌が発達するほど、
より根が大きく、水分や栄養塩類を多く必要とする
植物が進入できるようになるのです。
、、、種子は一体どこからやってくるの?
先ほど取り上げた裸地の写真を見てみましょう。
よく見ると、すぐ近くに草が生えていたり、少し離れた崖には
木が生えていることが分かります(下図)。
そうした場所から、
風や動物(鳥など)によって種子が
運ばてくるのですよ。
5:陽樹林→陰樹林の変化過程
森に入ると、
薄暗い感じがします。
森の中では、高木の葉によって
太陽の光がさえぎられるためです。
陽樹林の土壌には
陽樹の種子が多く落ちます。
しかし、林内が薄暗いために、
陽樹の種子は、発芽しないか
発芽したとしても芽生えは
成長することが出来ません。
木は育たないの?
じつは、薄暗い場所でも
種子が発芽して、成長できる
樹木があるのです。
そのような樹木のことを
総称して陰樹といいます。
陰樹の高木としては、
シイ類やカシ類があります。
陰樹の高木の種子は、
動物などによって陽樹林内に
運ばれてきます。
陰樹の種子は、
陽樹林内でも発芽して
成長することが出来ます(下図)。
やがては、陽樹の高木と
同程度の高さにまでなります。
このようにして、陽樹林は、
陽樹と陰樹が混ざる森(混交林)
に変化します(下図)。
その後、陽樹林を構成していた陽樹が
台風や寿命などによって倒れていくと、
やがては陰樹が中心の森(陰樹林)に
変わっていくのです(下図)。
土壌の厚さの変化に伴って変化したけれど、
陽樹林から陰樹林への変化は、
林内の光環境が主な要因となるのですね。
そうです。
さて、陰樹林まで来ましたが、
いったい、遷移はどこまで
進んでいくのでしょうか?
その点について、
次の項目で解説しましょう。
6:極相と極相林
遷移が進み、植生を構成している
植物の種類に大きな変化が
見られなくなった状態のことを
極相(きょくそう)
とよびます。
極相がどのような植生となるかは、
主に、その場所の気候(気温と降水量)によって
決まり、
日本の場合、気候的には、
極相は、森林となります。
極相に達した森林のことを
極相林(きょくそうりん)とよび、
日本での極相林は、一般に
陰樹林となります。
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さて、
裸地から陰樹林に至る
一次遷移の過程を紹介しました。
最後に重要なことを1つ。
ここで紹介した過程は、あくまで
一次遷移の代表的なものを
紹介したにすぎません。
環境の条件によっては、
ここで紹介したものと異なる
遷移の進み方もあるのだいうことを
頭の片隅に置いておきましょう。
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