生物基礎:遷移の分類、一次遷移(裸地~陰樹林)の過程
目次
1:植生は変化する
![ボンボ](https://hideyuki-komiya.com/wp-content/uploads/2020/08/b9c79ea22a87561e1b0e355135b7bbdc-150x150.jpg)
例えば、テレビなどで、
長年放置された村の映像が
映ることがありますね?
道だったであろう所や家の中まで、
いたるところに草や木が
生い茂った状態になっている。
もっと年月がたてば、
草木の密度が増えて
うっそうとした状態になるでしょう。
植生というのは、
年月の経過に伴って
自然に変化していきます。
日本のように降水量と気温が
森林の形成に適した地域であれば、
人の手が入るなどしなければ、
年月を経て森に変わっていく
ことでしょう。
![まとなが ねぎと](https://hideyuki-komiya.com/wp-content/uploads/2020/08/6a5240f510b996c96494c7fc931314f4.jpg)
もっと詳しく知りたいです!
テストにも良く出るテーマみたいですし(笑)。
それじゃあ、次の項目から
詳しくみていきましょう。
2:遷移の分類
ある場所の植生が
年月の経過とともに変化していくことを
植生遷移(せんい)、または単に遷移といいます。
植生遷移は、
・一次遷移:
土壌がない状態から始まる遷移
・二次遷移:
土壌があり、その中に植物の種子などが
存在している状態から始まる遷移
に分けられます。
土壌(どじょう)は、
岩石が風化してできた砂などに、
生物の遺骸が分解されて生じた
有機物が混ざることで形成されます。
例えば、森を歩くとき、私達は、
森の土壌の表面を踏みしめながら歩いています(下図)。
一次遷移は、
遷移の始まる場所が陸地か湖沼かで
以下の2つに分けられます。
・乾性遷移:始まる場所が陸地
・湿性遷移:始まる場所が湖沼など
以上の、植生遷移の分類を
まとめて図示してみましょう。
生物基礎では、
乾性遷移の仕組みについて
詳しく学んでいきます。
3:裸地 ー 乾性遷移のスタート
※:以下では、生物基礎の教科書に
記載された遷移の過程を解説します。
一般に、植物が見られない
土地のことを裸地(らち)といいます。
特に、
火山の噴火で生じた溶岩の上や
海底火山の噴火で生じた新しい島では
植物だけでなく、土壌もみられません(下図)。
上図中の矢印:噴火で生じた溶岩(三宅島)
乾性遷移は、こうした、
土壌がない裸地からスタートします。
土壌がない裸地は、
水分や、植物などの栄養分となる
栄養塩類(窒素など)の乏しい環境です。
このような環境では、
乾燥に強く、少ない栄養塩類でも
生きていける生物が生活を始めます。
そのような、
遷移の初期に侵入する生物種のことを、
先駆種(せんくしゅ:パイオニア種ともいう)
といいます。
どういった生物が先駆種となるかは、
裸地の状況によって異なりますが、
代表的な先駆種として、
・地衣類(ちいるい)
・コケ植物
・イタドリ(草本植物の一種)
・ヤシャブシ(木本植物の一種)
があります。
地衣類というのは、
緑藻と菌類、または、シアノバクテリアと菌類が
ひとまとまりになって一緒に生活している
共生体の総称です。
(下図:コンクリの塀につく黄色タイプの地衣類)
地衣類は、乾燥に大変強く、
晴れの日が続くとカラカラに
乾燥してしまいますが、
雨がふって水を得ると
活動を再開することができます。
以下の解説では、
地衣類・コケ植物が先駆種となった
場合を想定して解説します。
4:裸地→草原→低木林→陽樹林の変化過程
土壌のない裸地上で、
地衣類やコケ植物は、
増殖していく一方、
枯死していきます。
地衣類やコケ植物が枯死し、
その遺骸が分解されて蓄積することで、
土壌の形成が始まるのです。
上図:大地の断面図
形成が始まったばかりの土壌は、
まだ厚さの薄い土壌ですが、
土壌の無い状態に比べると
水が保たれやすく、栄養塩類も
より多くなります。
そうした場所に
草本植物が進入すると、
やがて草原となるのです(下図)。
草本が枯死した遺骸が分解されて
土壌の形成がさらに進むと、
草本に混ざって低木が
見られるようになり、
やがて、低木林となります(下図)。
低木の枯れ枝や枯れ葉が分解されて、
より一層、土壌の形成が進むと、
高木(※)が生育できるようになります。
※:低木の樹種に比べて、より高くまで
成長できる種類の樹木
低木林に進入する高木は、
一般に、陽樹の高木です。
陽樹とは、
明るい場所でよく生育する
樹木のことです。
陽樹の高木としては、
アカマツなどがあります。
![なすき ゆり](https://hideyuki-komiya.com/wp-content/uploads/2020/08/fc41e99ffecef33c9ec094155044dc60.jpg)
そうですね。入試では、遷移と
光合成速度や呼吸速度をからめた出題も
予想されるので、しっかり理解して
おきましょうね。
話を戻しましょう。
低木林の内部は、比較的明るく、
陽樹の高木の種子は発芽し、
成長してきます。
すると、いずれは、
低木よりも樹高が高くなり、
低木への光を遮ってしまいます。
このため、低木林は、
陽樹の高木が主体となる
陽樹林へと変化します(下図)。
上図:背丈の比較として低木を1本描いてある
![なすき ゆり](https://hideyuki-komiya.com/wp-content/uploads/2020/08/fc41e99ffecef33c9ec094155044dc60.jpg)
植生が草原、低木林、陽樹林と変化するのですね。
そうです!
土壌が発達するほど、
より根が大きく、水分や栄養塩類を多く必要とする
植物が進入できるようになるのです。
![ボンボ](https://hideyuki-komiya.com/wp-content/uploads/2020/08/b9c79ea22a87561e1b0e355135b7bbdc-150x150.jpg)
、、、種子は一体どこからやってくるの?
先ほど取り上げた裸地の写真を見てみましょう。
よく見ると、すぐ近くに草が生えていたり、少し離れた崖には
木が生えていることが分かります(下図)。
そうした場所から、
風や動物(鳥など)によって種子が
運ばてくるのですよ。
5:陽樹林→陰樹林の変化過程
森に入ると、
薄暗い感じがします。
森の中では、高木の葉によって
太陽の光がさえぎられるためです。
陽樹林の土壌には
陽樹の種子が多く落ちます。
しかし、林内が薄暗いために、
陽樹の種子は、発芽しないか
発芽したとしても芽生えは
成長することが出来ません。
![ボンボ](https://hideyuki-komiya.com/wp-content/uploads/2020/08/b9c79ea22a87561e1b0e355135b7bbdc-150x150.jpg)
木は育たないの?
じつは、薄暗い場所でも
種子が発芽して、成長できる
樹木があるのです。
そのような樹木のことを
総称して陰樹といいます。
陰樹の高木としては、
シイ類やカシ類があります。
陰樹の高木の種子は、
動物などによって陽樹林内に
運ばれてきます。
陰樹の種子は、
陽樹林内でも発芽して
成長することが出来ます(下図)。
やがては、陽樹の高木と
同程度の高さにまでなります。
このようにして、陽樹林は、
陽樹と陰樹が混ざる森(混交林)
に変化します(下図)。
その後、陽樹林を構成していた陽樹が
台風や寿命などによって倒れていくと、
やがては陰樹が中心の森(陰樹林)に
変わっていくのです(下図)。
![まとなが ねぎと](https://hideyuki-komiya.com/wp-content/uploads/2020/08/6a5240f510b996c96494c7fc931314f4.jpg)
土壌の厚さの変化に伴って変化したけれど、
陽樹林から陰樹林への変化は、
林内の光環境が主な要因となるのですね。
そうです。
さて、陰樹林まで来ましたが、
いったい、遷移はどこまで
進んでいくのでしょうか?
その点について、
次の項目で解説しましょう。
6:極相と極相林
遷移が進み、植生を構成している
植物の種類に大きな変化が
見られなくなった状態のことを
極相(きょくそう)
とよびます。
極相がどのような植生となるかは、
主に、その場所の気候(気温と降水量)によって
決まり、
日本の場合、気候的には、
極相は、森林となります。
極相に達した森林のことを
極相林(きょくそうりん)とよび、
日本での極相林は、一般に
陰樹林となります。
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さて、
裸地から陰樹林に至る
一次遷移の過程を紹介しました。
最後に重要なことを1つ。
ここで紹介した過程は、あくまで
一次遷移の代表的なものを
紹介したにすぎません。
環境の条件によっては、
ここで紹介したものと異なる
遷移の進み方もあるのだいうことを
頭の片隅に置いておきましょう。
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