腎臓①:腎臓の役割と構造

目次

1:腎臓とは

体内の不要な物質を、
排出物として体外へ排出する
役割をもつ器官のことを、

排出器官といいます。

腎臓は、
脊椎動物にみられる
排出器官です。

腎臓では、排出物として
尿(にょう)という液体が
つくられます。

作られた尿は、やがて、
体外へ排出されます。

腎臓は、大きく3つの
重要な役割を担っています。

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2:腎臓の3つの役割

脊椎動物の体の細胞は、
体液という液体に囲まれた状態で
活動しています(下図)。

ヒトの体の4つの細胞が、体液に囲まれている様子を描いた図

腎臓は、
尿をつくることで、

①体液中の老廃物(ろうはいぶつ)の排出
②体液の水分量と塩類濃度の調節
③体液量の調節

という3つの役割を
担っており、

体内環境(体液の状態)を一定に保つ
うえで重要な器官の1つなのです。

これら3つの役割について
順番に説明しましょう。

①体液中の老廃物の排出

老廃物(ろうはいぶつ)とういうのは、
代謝(たいしゃ)の過程で生じた、
体にとって不要な物質のことです。

細胞は、
生きて活動している限り、
体液中へ老廃物を放出します(下図)。

4つの細胞が体液中に老廃物を1個ずつ排出する図

腎臓は、老廃物を尿の成分に含ませることで、
体外へ排出する役割を担っているのです。

②体液の水分量と塩類濃度の調節

※塩類濃度
・体液中の個々の塩類(ナトリウムイオンなど)の濃度。
・イオン濃度、塩分濃度ともいう。

※水分量と塩類濃度の調節については、
記事「内分泌系④:バソプレシンと鉱質コルチコイドの働き」で、
より詳しく解説しています。

体液の水分量と塩類濃度は、
普段は、細胞が活動しやすい状態に
保たれていますが、

時として
大きく変動します。

こうした変動に対し、腎臓は、
尿として排出する水分量を
変えることで体液の水分量を調節し、

体液の水分量の調節を通して、
体液の塩類濃度を間接的に
調節しているのです。

例えば、ヒトの場合、
ノドがかわいたと言って
水をがぶ飲みすれば、

体液の水分量が増え、
その結果、
塩類濃度は低下します。

すると腎臓は、
体液中の水を、普段よりも多く
尿として排出します。

結果として、
体液の水分量が減り、
体液の塩類濃度が増加するのです。

水を沢山飲むと、
比較的早くトイレに
行きたくなる事がありますね。

その時に出る尿は、
量が多くなる傾向が
あるのです。

③体液量の調節

※体液量の調節については、
記事「内分泌系④:バソプレシンと鉱質コルチコイドの働き」で、
より詳しく解説しています。

まず、②で解説した水分量と、
③の体液量との違いを
明確にしておきましょう。

水分量は、
体液に含まれる
水の量のことですが、

体液量は、水だけでなく、
その他の体液成分を含む、
体液そのものの量です。

生物基礎では、
体液量が減少した場合の、
腎臓の対応を学びます。

体液量の減少は、
体液の水分量の減少と異なり、

体液の塩類濃度を
変化させることはありません。

しかし、
血液の流れが悪くなることに
つながるのです。

体液量が減少した場合、
腎臓は、尿中に排出する水と塩類の量を
普段よりもずっと少なくすることで、

それ以上に体液が
減少することを
防ごうとします。

体液量が減少するのは、
例えば、激しい下痢(げり)を
した時などです。

下痢をすると、
体液中の水分と塩類が
同時に失われるためです。

下痢をした後は、
腎臓が体液の減少を
抑えてくれていますが、

体液量を”回復させる”には、
少しずつでも水分を摂取する
必要があります。

 

以上、
腎臓の3つの役割を
解説してきました。

いずれの役割も、
尿を作ることで
可能になるものでした。

では、
腎臓は一体
どのようにして

尿をつくっている
のでしょうか?

尿を作るための
腎臓の構造と機能には、

脊椎動物の種類によって
多少、違いがあります。

ここからは、
ヒトの腎臓の構造について
解説していきましょう。

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3:ヒトの腎臓

3-1. 見ためと、体内での位置

ヒトの腎臓は、
こぶしと同じ程度の大きさで、
形はソラマメ(さやの中身)に似ています。

また、色は、
小豆(あずき)に似た
濃い赤茶色をしています(下図)

腎臓1個とこぶしを並べた図。ほぼ同じ大きさ。

腎臓は、
腹部の背中側に
左右1対みられます。

実際の位置を
確認してみましょう。

背中は、
ろっ骨があって
硬い上側半分と、

ろっ骨がなくて
柔らかい下側半分に
分けられます。

この上側と下側の
ちょうど境目の、
背骨をはさんだ左右の位置に
腎臓があるのです(下図:背中側からみた図)。

腎臓の位置

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3-2. 腎臓とつながる器官

腎臓では、
腎動脈という血管を通して
血液が流れ込み、

腎静脈という血管を通して
血液が出て行きます。

正面(胸側)から見た図を描くと、
下図のようになります。

左右の腎臓それぞれに、腎動脈と腎静脈がつながっている。腎動脈から腎臓へ血液が入り、腎臓から腎静脈へ血液が出ていく。

また、腎臓は

輸尿管(ゆにょうかん※)
※尿管ともいう

という管を介して

ぼうこう

とつながっています(下図)

腎臓とぼうこうが、輸尿管によってつながっている図

腎臓で作られた尿は、
輸尿管を通って
ぼうこう  にたまり、

のちに体外へ
排出されるのです(下図)

尿の排出

では次に
腎臓の内部を
見ていきましょう。

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3-3. 内部の構造①:髄質、皮質、腎う

腎臓の断面図を描くと
下図のようになります。

腎臓の断面を描いた図。詳細は、のちに解説。

腎臓の内部は、
色の違いによって、
以下の3つの部分に区別されます(下図)。

皮質(ひしつ):薄い赤茶色の部分
髄質(ずいしつ):濃い赤茶色の部分
腎う(じんう):白色の部分

腎臓の主に外回りを占める皮質、皮質に囲まれた髄質、腎臓の最も内部にある腎うの様子を描いた図

皮質と髄質は、
プニプニとした触感の
肉質の構造をしており、

腎うは、
袋状の構造をしていて、
輸尿管につながっています。

イメージとして、
自分の両手をあわせて
みましょう(下図)。

仏壇に手をあわせるように、両手をあわせた図

次に、指の付け根を曲げて
両手の平を少し離し、
空間を作ってみましょう。

この時、
両手にあたる部分は
皮質と髄質に相当し、

空間にあたる部分は
腎うに相当します。

尿は、皮質と髄質で作られ、
腎う内部に出たのち、
輸尿管へと流れて行きます(下図:矢印)。

尿が、髄質部分から腎うへと出る様子を矢印で描いた図。

では次に、
皮質と髄質にある
微細な構造を見ていきましょう。

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3-4. 内部の構造②:ネフロン(腎単位)

下図の矢印で示す枠内には、
皮質と髄質と腎うが
含まれています。

長方形の枠内には、上から順に、皮質、髄質、腎うが含まれている。この枠内を拡大してみる。

この枠内を拡大した
模式図を描くと、
下図のようになります。

のちに解説する、ネフロンという構造物が6つ描かれている。

何やら複雑ですが、
この図をスッキリ理解できるように
解説しましょう。

腎臓の髄質と皮質には、

ネフロン
(腎単位ともいう) 

とよばれる構造物が
多く見られます(下図)。

1個のネフロンを描いた図。球体の部分と、そこから伸びる1本の長い管が描かれている。

これから、
ネフロンの構造について
詳しく解説していきますが、

その中で出てくる、

・細尿管
・糸球体
・ボーマンのう

という3つは、
腎臓の機能を理解するうえで
重要なキーワードです。

ネフロン(腎単位)は、

腎小体(じんしょうたい)
※マルピーギ小体ともいう

という球状の部分と、
腎小体から伸びる、

細尿管(さいにょうかん)
※腎細管(じんさいかん)ともいう

という1本の管からなる
構造物です(下図)。

1個のネフロンが描かれている。球状部が腎小体で、そこから伸びる管が細尿管。

腎小体の断面図を描くと、
下図のようになります。

腎小体の断面。内部に糸球体という、毛細血管のかたまりがある。

腎小体の構造は、

・糸球体(しきゅうたい)
・ボーマンのう

という2つの部位
からなります。

糸球体というのは、

腎小体の内部にある、
毛細血管が糸玉状に
まとまった構造物のことです。

下図の点線内の部分を
糸球体と呼びます。

腎小体の内部に糸球体という、毛細血管のかたまりがある。

毛細血管を
1本の毛糸に例えると、

糸球体は、
下の写真ような形を
しています。

1本の毛糸を折り曲げてゆるく束にした写真

一方、

ボーマンのう
というのは、

糸球体を包みこむ
球状の構造物のことです。
(下図:太線部分)

糸球体を取り囲む部分がボーマンのう

ボーマンのう自体は
袋状の構造をしています。

下図の矢印の先端部分は、
ボーマンのう
の内部を示しており、

そのまま細尿管に
つながっています。

ボーマンのうの内部にあたる部分を矢印で示した図

ボーマンのうを
ビニール袋で例えて
みましょう。

ボーマンのうに見立てた
ビニール袋に片手を入れ、
糸球体に見立てた
毛糸の束を持ちます(下写真)。
ビニール袋に入れた手で、毛糸の束をもつ

次に、この毛糸の束を
袋で包みます(下写真)。

ビニール袋に入れた手で、毛糸の束を包む

この時、
手が入っている場所が、
ボーマンのう内部に相当します。

ボーマンのうが
袋状であることを
イメージできましたか?

ここで、
ネフロンの全体像に
視点を戻しましょう。

ネフロンは
下図のように、
毛細血管に囲まれています。

ネフロンの細尿管に沿うように、毛細血管が通っている。

腎動脈から
流れてきた血液は、
ネフロンの糸球体に流れ込み、

その後、
ネフロンまわりの毛細血管を通って、
腎静脈へと流れ出て行きます(下図)。

腎動脈から続く血管が糸球体へつながり、糸球体から出た毛細血管が、やがて腎静脈へつながる。

そして、
血液が糸球体と
ネフロン周りの毛細血管を流れる間に、
体液に対する3つの調節が行われるのです。

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3-5. 内部の構造③:集合管

さて、
先ほど見た複雑な
腎臓の拡大図を、
もう一度見てみましょう。

のちに解説する、ネフロンという構造物が6つ描かれている。

最初に見た時とは違って、
何となく構造を見分けることが
出来るのではないでしょうか?

この図から、2個のネフロンと、
その周りの毛細血管だけを残し、
他のネフロンを消してみましょう(下図)。

2つのネフロンが描かれた図

これで、かなり
見やすくなりましたね。

では最後に、
集合管について
解説しましょう。

個々のネフロンは、

集合管

という管に合流
しています。

下の模式図の場合は、
6つのネフロンが
集合管に合流しています(下図の矢印)。

ネフロン6つが、細尿管を介して、1本の集合管に合流する図

そして、
集合管の先は、腎う
につながっているのです。

腎臓には、このような
ネフロンと集合管からなる
まとまりが多くあります。

特にネフロンは、
ヒトの場合、

腎臓に1つにつき
約100万個あると
言われています。

腎臓2つなら
200万個です。

では、

ネフロンとは
一体何なのか?

それは、
体の状態に応じて
臨機応変に機能を微調整できる、

高性能の
ろ過器なのです。

⇒ 次の記事「腎臓②:腎臓の働き」
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4:確認問題

問題1
以下の文の空欄に適する用語を答えなさい。

腎臓は、
(①  )という液体を
つくることを通して、

・体液中の(②    )の排出
・体液の水分量を介しての(③   )濃度の調節
・体液量の調節

という3つの役割を
担う器官である。

問題2
以下の図(腎臓の断面図とネフロンの図)中の空欄(①~⑦)に
適する語句を答えなさい。ただし、④と⑤をあわせて
腎小体(マルピーギ小体)という。

問題2の1つめの図。空欄①は、腎臓断面の、主に表層にあたる薄いピンクの部位を示し、②は、①の部分より内側の、濃い赤色の部位を示す。③は、①や②より内部にあり、輸尿管へと続く袋状の構造を示す。

 

2つ目の図。④は、毛細血管が球状になった部位、⑤は、④を囲む部位を示す。⑥は、⑤と⑦の管をつなぐ、1本の長い管を示す。⑦の管には、複数のネフロンが合流する。

解答

問題1

腎臓は、
(①尿 )という液体を
つくることを通して、

・体液中の(②老廃物 )の排出
・体液の水分量を介しての(③塩類または、イオン、塩分)濃度の調節
・体液量の調節

という3つの役割を
担う器官である。

問題2

問題2の腎臓断面図解答 ①皮質 ②髄質 ③腎う

問題2のネフロンの図の解答 ④糸球体 ⑤ボーマンのう ⑥細尿管または腎細管 ⑦集合管

⇒ 次の記事「腎臓②:腎臓の働き」

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