『生物基礎』バソプレシンと鉱質コルチコイドの働き

※この記事の途中に出てくる
腎臓の集合管と
水の再吸収に関して

集合管については記事「腎臓1
水の再吸収については記事「腎臓2
で解説しています。

今回のテーマに関連する身近な例

はじめに、
今回のテーマに深く関係する
行動や現象の具体例を
いくつか挙げてみましょう。

・沢山の汗をかく。
・水をガブ飲みする。
・激しい下痢(げり)をする。

これらの行動や現象は
体液に大きな変化をもたらします。

沢山の汗をかく
水をガブ飲みする

という2つは、
体液の塩類濃度を変化させます。

また、

激しい下痢をする

ことは、
体液の量を減少させます。

いずれの変化も、行き過ぎると
細胞の活動を低下させたり
血液の流れを悪くしたりと

体にとって都合の悪いことが
生じてきます。

今回は

体液の塩類濃度や体液量を
適切に保つ仕組みを
解説しましょう。

体液の塩類濃度(塩分濃度)の調節

体液の塩類濃

体液には、ナトリウムイオンや
カルシウムイオンなどの
様々なイオン類が含まれます。

体液に含まれる
塩類(※塩分ともいう)というのは
これらのイオン類のことです。

体液の各種塩類の濃度は
それぞれ適切な濃度に
保たれています。

生物基礎では

何らかの理由で
各種の塩類濃度がまとめて
変化することを

体液の塩類濃度が変化する(※)

と表現します。

※体液濃度が変化する
と表記する教科書もあります。

例えば
各種の塩類濃度がまとめて
上昇した場合

体液の塩類濃度が上昇した
(体液濃度が上昇した)

と表現するのです(下図)。

体液の塩類濃度が上昇

体液の塩類濃度調節のしくみ

体液の塩類濃度は、

バソプレシンというホルモンの分泌
飲水(いんすい)行動

によって調節されています。

また、
体液の塩類濃度の変化は
間脳で感知されます(下図:脳の断面)。

間脳

体液の塩類濃度が上昇した場合

汗の成分の大部分は水分(※)です。

※成分としての水のことを
水分とよぶ。

このため、汗を沢山かくと
体液の水分量が減少し
体液の各種塩類の濃度が上昇します(下図)。

発汗による塩類濃度の上昇

①バソプレシンの働き
体液の塩類濃度の上昇を
間脳の
視床下部が感知すると

神経分泌細胞を介して
脳下垂体後葉からの
バソプレシンの分泌が促されます(下図)。

後葉でのバソプレシンの分泌

バソプレシンは
腎臓の集合管に作用します。

すると
集合管での毛細血管への
水の再吸収量が増えて

体液中から尿中への
水分の損失が抑えられるのです。

尿量は減り、生じる尿は
尿素などの成分が濃縮された
濃い尿となります(下図)。

尿量減少による水分損失の抑制

その結果
体液の塩類濃度が低下するのです。

なお、バソプレシンは
別称で抗利尿(こうりにょう)ホルモンとも
いいます。

多量の尿が作られることを
利尿と呼びますが

バソプレシンは
尿量を減らす働きをするため
このような別称があるのです。

②飲水(いんすい)行動

間脳には

飲水中枢(いんすいちゅうすう)

とよばれる部位があります。

体液の塩類濃度が上昇すると
飲水中枢が感知して

ノドの渇(かわ)きを感じて
飲水行動を促すのです。

バソプレシンの働きに加えて
飲水行動によって
水分を摂取することで

体液の水分量が増えて
体液の塩類濃度が低下し、
もとの状態に戻るのです(下図)。

水の摂取で体液の塩類濃度がもどる

体液の塩類濃度が低下した場合

水をガブ飲みすると
体液の水分量が増えて
体液の塩分濃度を低下させます(下図)。

飲水による塩類濃度の低下

塩類濃度の低下が
間脳の視床下部で感知されると

脳下垂体後葉からの
バソプレシンの分泌が
抑制されます

すると
腎臓の集合管における
水の再吸収量が減少して

体液中から尿中へと
出される水分量が
増えるのです。

尿量は増えて、
生じる尿は水分の割合が多い
薄い尿となります。

その結果、

体液の水分量が減少し
体液の塩類濃度が上昇して
もとの状態に戻るのです(下図)。

尿量増加による塩類濃度の上昇

 

体液量の調節

体液量というのは
細胞外にある体液(血液、組織液、リンパ液)の
体積の総量のことです。

体液量が増加した場合と
減少した場合とでは
異なる仕組みが働きます。

生物基礎では
体液量が減少した場合の
仕組みを扱います。

体液量が減少した場合は、主に

鉱質(こうしつ)コルチコイド

というホルモンの働き
によって体液量が維持されます。

鉱質コルチコイドは

副腎皮質(ふくじんひしつ)

とよばれる
内分泌腺から分泌されます。

まずは
副腎皮質の位置を
確認してみましょう。

腎臓の上部に
くっついている器官を
副腎といいます(下図)。

副腎の位置

副腎の断面を見てみると
内側と外側の二層のつくりに
なっており、

外側の層のことを
副腎皮質とよびます(下図)。

副腎皮質の位置

では、
鉱質コルチコイドの働きの
解説に入りましょう。

下痢(げり)をした場合を例にして
解説しましょう。

下痢(げり)をすると
体液中の水と塩類が同時に
腸の内部へ出てしまいます。

このため、下痢は
体液量を減少させるのです(下図)。

下痢による体液量の減少

体液量が減ると
血管内を流れる血液量も減るため
血圧(※)が低下します。
※血圧:流れる血液が血管を押す圧力

血圧が低下すると
腎臓によって感知されて

副腎皮質から
鉱質コルチコイドが
分泌されます(※)。

※腎臓から、鉱質コルチコイドの分泌を
促すホルモンが分泌されることによる。

鉱質コルチコイドが
腎臓の細尿管と集合管に作用し

細尿管と集合管での
ナトリウムイオンの再吸収量と

細尿管での水の再吸収量(※)が増えます

※鉱質コルチコイドは、集合管ではなく
細尿管での水の再吸収を促進することに
注意しましょう。

ナトリウムイオンと
水の再吸収量が
同時に増えることで

体液の塩類濃度を
大きく変化させることなく
体液量の減少が抑えられるのです(下図)。

水とナトリウムイオンの再吸収

もしも
水だけを再吸収する
のであったなら

体液量の減少は抑えられても
体液の塩類濃度が低下して
しまうでしょう。

体の仕組みは
とても上手く
できていますね。

なお、

鉱質コルチコイドの働きに加えて
塩類と水の摂取によって
体液量がもとの状態に戻ります

補足

体液の塩類濃度の調節で
取り上げた例の1つである
沢山の汗をかいた場合も

体内から水分が失われているため
体液量が減少しています。

この場合

バソプレシンだけでなく
鉱質コルチコイドの分泌も
促されるのでしょうか?

もしかすると
その疑問に思うことが
あったかもしれません。

生物基礎レベルを超えますが
補足しておきましょう。

鉱質コルチコイドの分泌は
体液量が大きく減少した
場合に促されます。

汗をかいていると
体液量が徐々に減少しますが
同時に体液の塩類濃度が上昇します。

そして、体液の塩類濃度が上昇すると
細胞内の水分が少しずつ細胞外へ出る
という現象が起きるのです。

この水分の移動は
バソプレシンの働きに加えて
塩類濃度を低下させ

また、発汗で減少した
体液量を増加させます。

このため、
発汗によっては
体液量が大きく減少せず

鉱質コルチコイドの分泌は
あまり促されないのです。

一方で、

下痢などでは
体液中の水分と塩類を同時に失うため
体液濃度の変化を伴いません。

細胞内から細胞外への
水の移動は生じず
体液量だが大きく減少します。

このため
鉱質コルチコイドの分泌が
促されるのです。

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