細胞(さいぼう)
目次
1:細胞とは
1-1. 生物の構造と働きの基本単位
地球上にみられる生物は、
細胞(さいぼう)
とよばれる構造物によって、
体が構成されています。
また、
生物の体でみられる働きは、
細胞の働きに基づいています。
このため細胞は、
生物の構造と働きの基本単位である
と考えられているのです。
人体を例にとってみましょう。
平均的な体格をした成人の体は、
数十兆個の細胞が集まって
構成されています。
体の働きの例として、
生物基礎で後に学ぶ
心臓を取り上げてみましょう。
心臓は、主に
収縮のペースを作り出す細胞と
そのペースに合わせて収縮する細胞で
構成されています。
(下図:正面から見たときの心臓)
ある細胞が作り出した
ペースに合わせて、
他の細胞たちが収縮を繰り返すことで
心臓全体が、特定のペースで
収縮を繰り返すのです。
以上のように、
生物の構造や働きについて
理解するためには、
その基本単位である細胞について
学ぶことが必要になるのです。
では一体、細胞というのは
どのような構造物なのでしょうか?
1-2. まずココ!細胞に共通の特徴
今後、いろいろな種類の
細胞について学びますが、
まずは、
全ての細胞に共通の特徴
を覚えましょう!
後に学ぶ、いろいろな細胞同士の
違いが明確になり、暗記する上でも
とても効率が良くなります。
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全ての細胞は、
共通の構造として
細胞膜と細胞質基質
をもち、
共通の物質として
DNA
をもちます。
1つずつ
見ていきましょう。
①細胞膜
細胞は、
細胞膜(さいぼうまく)
という膜によって囲まれた、
小さな部屋状の構造物です。
細胞膜は、
細胞の内部と外部とを仕切っている
切れ目のない膜です。
切れ目のない膜という特徴だけを
例えるなら、宙に浮いているシャボン玉の
膜のようなイメージといってよいでしょう。
細胞の形は様々ですが、
シンプルな球形をした細胞の模式図を
描くと、下図のようになります。
上図では、立体的な形をわかりやすく
するために、細胞膜を不透明にして
描いていますが、
実際の細胞膜は
半透明であるため、
細胞が細胞膜に囲まれている様子や、
細胞内の様子を見ることが出来ます。
例として、ヒトの細胞を
見てみましょう。
ほおの内側を爪楊枝で軽くこすると、
ほおの内側表面の細胞を簡単に取ることが
出来ます。
顕微鏡で拡大してみると、
下写真のように見えます。
このように、細胞を切らなくても、
細胞の断面と同様の様子を
観察することが出来るのです(下図)。
細胞膜の厚さは、
5~10nm(ナノメートル)です(下図)。
nm(ナノメートル)は長さの単位で、
1nm=100万分の1mmです。
細胞膜を10万枚ほど重ねることで、
やっと、生物基礎の教科書のページ
1枚分の厚さ(約0.1mm)に達します。
細胞は、細胞膜を通して、
細胞外にある物質の取り込みや、
細胞内にある物質の放出を
行っています(下図)。
細胞膜を介した物質の
取り込みと放出を行うことで、
細胞は、細胞内の状態を
生きていく上で適切な状態に
保っているのです。
例えば、
細胞のエネルギー源となる
グルコース(ブドウ糖ともいう)という
物質を細胞内に取り込み、
細胞内で生じた不要物である
アンモニアという物質を
細胞外へ放出することで、
細胞内を適切な状態に保ちます。
◎◎細胞膜のポイントまとめ
・細胞膜は、
細胞の内外を仕切る。
・細胞膜の厚さは、
5~10nm(ナノメートル)。
・細胞は、細胞膜を介して
物質の取り込みと放出を行う。
②細胞質基質
細胞内は、
細胞質基質(さいぼうしつきしつ)
とよばれる液状の成分で
満たされています(下図)。
細胞質基質を構成する物質は、
・ほとんどが水
・その他、タンパク質など
と押さえておきましょう。
細胞質基質のタンパク質には、
酵素(こうそ)という、
化学反応を促進する働きをもつ
タンパク質が多く含まれています。
酵素の働きによって、
細胞質基質では様々な化学反応が
起きているのです。
例えば、細胞は、
細胞内に取り込んだ
グルコース(ブドウ糖)を
分解することで、
細胞が活動するために必要な
エネルギーを得ています(下図)。
※:化学反応の詳細は、
「化学反応と触媒」で解説します。
原形質流動(げんけいしつりゅうどう)
※:細胞質流動ともいう
という、
細胞内の構造物が、細胞内を
流れるように動く現象を
見られる場合があります。
例えば、
オオカナダモという植物(下写真)では、
葉緑体という構造物が細胞内を
動いていく様子が観察されます(下動画)。
◎◎細胞質基質のポイントまとめ
・細胞質基質は、
細胞内をみたす液状の成分。
・大部分が水。
・細胞質基質では、
様々な化学反応が行われる。
これは、酵素というタンパク質が
含まれることによる。
・細胞質基質は流動性をもつ。
このため、原形質流動という
現象がみられる。
③DNAと染色体
細胞内には、
DNA(ディー・エヌ・エー)
とよばれる
細長い糸状の物質があります。
DNAは、
デオキシリボ核酸(かくさん)
ともいいます。
DNAは、
2つの大きな役割を
担っています。
1つ目は、
細胞の形質(けいしつ:形や働き)を
決めることです。
例として、
形質の違いが分かりやすい細胞である
ヒトの卵と精子を取り上げてみましょう。
ヒトの卵(直径0.14 mm程度)と
精子(長さ 0.06mm程度)は、
下図のような形をしています。
また、
ヒトの卵は、泳がずに精子が来るのを待ち、
精子は、卵に向かって泳ぎます。
こうした形質の違いは、
主に、DNAによって
決まってくるのです。
DNAの役割の2つ目は、
細胞が分裂をして数を増やす時に、
もとの細胞の形質を
新たに増えた次世代の細胞に
伝えることです(下図)。
例えば、
生物基礎で登場する
ゾウリムシという生物は、
体が1つの細胞で出来ていて、
分裂して増殖します(下図)。
DNAの働きによって、
ゾウリムシが分裂して生じた生物は、
やはり、ゾウリムシになるのです。
細胞内に
見られるDNAは、
その長さが、細胞に比べて
とても長いDNAと、短いDNA
に分けられます。
この項目では、
長いDNAの例を
挙げてみましょう。
ヒトの細胞の長いDNAは、
細胞内にある、核(かく)という
球状の構造物に入っています。
典型的な核の直径は
約0.005 mmです。
一方、
核に含まれるDNAの長さは
約2 mで、
核の直径の
40万倍もあります。
これは、
直径約6.5 cmのテニスボールに、
長さ26 km(東京タワー78本分、スカイツリー41本分)
の長い糸が入っていることに
相当するのです(下図:東京タワーの例え)。
こんなにも長いDNAは、
どのようにして
細胞内に入っているのでしょうか?
細胞内では、
長いDNAは
染色体(せんしょくたい)
という構造物となって
存在しています。
染色体は、
DNAとタンパク質からなる
構造物です。
タンパク質は、
筋肉の成分となる他にも、
多彩な働きをします。
長いDNAにタンパク質が
結合することで、
とても長い糸状のDNAが、
適度に短い糸状の染色体となって、
小さな細胞内に
うまく収まっているのです。
◎◎DNAと染色体のポイント
・DNAは、細胞の形質を決め、
形質を子孫に伝える役割をもつ。
・染色体とは、
長い糸状のDNAがタンパク質とあわさり、
程度に短い状態になった構造物のこと。
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さて、この記事では 、
全ての細胞に共通する
3つの特徴、
・細胞膜
・細胞質基質
・DNA
について解説してきました。
最後に、最重要ポイントの
確認問題をやってみましょう。
次の記事 ⇒「原核生物と真核生物、単細胞生物と多細胞生物」
2:確認問題
下の文章中の空欄に
当てはまる語句を答えなさい。
全ての細胞に共通した特徴として、
・(①)膜で囲まれる
・細胞内が(②)という
液状の成分で満たされる
・細胞内に(③)という糸状の物質をもつ
ということが挙げられる。
長い(③)は、
タンパク質と結合した(④)という
構造物の形で存在している。
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解答
全ての細胞に共通した特徴として、
・(①細胞)膜で囲まれる
・細胞内が(②細胞質基質)という
液状の成分で満たされる
・細胞内に(③DNA)という糸状の物質をもつ
ということが挙げられる。
長い(③)は、
タンパク質と結合した(④染色体)という
構造物の形で存在している。
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