化学反応と触媒

この記事について
「化学反応って何だ?」
というところから話を始め、

触媒という物質がもつ、

・化学反応を促進する

・自身は反応の前後で変化しない

という2つの特徴が、

模式図として頭に思い浮かべられるレベル

を目指して行きましょう。

触媒の特徴を理解しておくと、
次の記事で解説する、

入試頻出のテーマである
酵素(こうそ)という物質ついて、
よりラクに頭にインプットすることが出来る

でしょう。
 
目次

1. 化学反応

この項目のポイント
①生物の体では、多くの化学反応が行われている。
②化学反応は、化学反応が行われる場の温度が
 高くなるほど促進される。

1-1. 生物と化学反応

地球上の生物の体では、
多くの化学反応
行われています。

化学反応というのは、
ある物質が、それとは別の物質に
変化することです。

例えば、 紙を空気中で燃やすと
二酸化炭素が発生します。
紙に火がつき、二酸化炭素が発生している模式図
これは、

紙に含まれる炭素という物質が
空気中の酸素と結びついて
二酸化炭素に変化する

という化学反応の
結果なのです

一見すると化学反応は、

生物のもつ生々しさとは
少し距離がある現象に思える
かもしれません。

ですが、化学反応は、
生物が生きて活動することを
支えている土台なのです。

例えば、
私達が食事をすると、

食べたものは
消化管内で消化されます。

消化の過程では、
食物に含まれる物質の分解が
活発に行われています。

食物に含まれる物質の多くは、
消化管内で分解されることによって
はじめて、

血液中へと吸収することが
可能になるのです。

このように化学反応は、
生物が生きる上で
とても重要な役割を担っています。
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1-2. 化学反応と温度の関係

化学反応は、

反応が行われる場の温度が 
高くなるほど促進されます。

“化学反応が促進する”というのは、
どういう事なのかを、
模式図を用いて説明しましょう。

物質Aが物質Bに変化する
化学反応があるとします。

下図のように、
同じ量の物質Aが含まれる環境を
3つ想定しましょう。
※個々の物質Aを白い丸で表現しています。

物質A(白い〇)が6個描かれた領域が3つ描かれている。

これらの環境を、
それぞれ、
・高温
・低温
・それらの中間の温度
の状態にします(下図)。

白丸が描かれた3つ環境の背景の色を変えている。高温の環境は赤、中間の温度の環境は薄い赤、低温の環境は薄い青にしている。

各環境で同じ時間が経過していくとき、
化学反応の進み方にどのような
違いが出るかを描いてみましょう(下図)。
※物質Bを黒い丸で表現しています。

少し時間が経過すると、物質B(黒丸)が、高温の環境では2つ、中間の温度では1つ生じ、低温では生じていない。さらに時間が経つと、物質Bが新たに、高温では2つ、中間の温度では1つ、低温で1つ生じる。

このように、
温度が高いほど、

”一定の時間内に化学反応を起こす
物質Aの量が増える”

のです。
(一定の時間内に化学反応で生じる
物質Bの量が増えるとも言えます。)

この現象のことを、
”化学反応が促進する”と
表現します。

宜しいでしょうか?

では、記事の前半(化学反応)の
最重要ポイントを確認しましょう。
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ポイントの確認問題
正しい語句を選びなさい。
化学反応は、 反応が行われる場の温度が
(高く、低く)なるほど促進される。

                               ※解答:高く

2. 触媒

ポイント
①触媒とは、化学反応を促進し、
 それ自身は反応の前後で変化しない物質である。

②触媒は、
何度も再利用されながら化学反応を促進する。 

触媒(しょくばい)というのは、       

化学反応を促進し、それ自身は
反応の前後で変化しない物質

のことです。

触媒の特徴を解説するために、

触媒に関するテスト問題で
出題されやすい、

過酸化水素(かさんかすいそ)

という物質を
取り上げてみましましょう。

過酸化水素は
という化学式で
表される物質で、

水と酸素に分解する性質

を持っています。

この分解を
化学反応式で書くと、

2H → 2HO + O

※HO:水、O:酸素

となります。

過酸化水素は、一般に、
水に溶かした過酸化水素水の状態で
扱われます。

実験的に、
過酸化水素水を室温(25℃程度)の
室内に放置してみましょう。

すると、過酸化水素の、
水と酸素への分解が
とてもゆっくりと進みます。

肉眼では、
過酸化水素水には何の変化も
起きていないように見えます(下図)。

縦長の入れ物に入った過酸化水素水が描かれている。時間が経った後の図も描かれているが、何の変りもない。

この時に過酸化水素水の中で
起きていることを模式図を用いて
描いてみましょう。

過酸化水素、および
過酸化水素の分解で生じた水と酸素を
下図のように描くことにします。

物質を円で描き、円の中に、過酸化水素、水、酸素の化学式を書いて区別している。

すると、室温の環境におかれた
過酸化水素水の中で起きていることは、
下図のように描くことが出来ます。

はじめ、過酸化水素水の中の様子は、過酸化水素が6つある状態で描かれている。時間が経つと、1つの過酸化水素が分解して、2つの水と、1つの酸素が生じている。

このように、
ごく一部の過酸化水素のみが
分解しているのです。

では、ここで
触媒に登場してもらいましょう。

過酸化水素の分解は、
酸化マンガン(Ⅳ)※という触媒によって
促進させることが出来ます。
※二酸化マンガンともいう。

先ほどと同様、
室温(25℃程度)の室内に
過酸化水素水を置きます。

その過酸化水素水に、
酸化マンガン(Ⅳ)を
少しだけ加えると、

すぐに過酸化水素の分解が促進されて、
多くの酸素が発生するのです。
この時に発生した酸素は
大量の気泡となり、
過酸化水素が盛んに
分解されていることを、
肉眼で、間接的に
確認することが出来ます下図)。
粒状の酸化マンガン(Ⅳ)を加えると、直後に、過酸化水素水の中や水面で大量の気泡が生じることを、大量の円で描いた図。

さて、ここまでで、

触媒は、化学反応を促進する

という特徴について
解説しました。

次に、

触媒は、それ自身は反応の前後で変化しない

という特徴について、
引き続き、過酸化水素水と酸化マンガン(Ⅳ)の
実験を取り上げて解説しましょう。

先ほどの実験において、

少量の酸化マンガン(Ⅳ)を加えてから
大量の気泡が発生するまでの間に
過酸化水素水の中で起きている現象を、

模式図で説明しましょう。

酸化マンガン(Ⅳ)を
黒丸で表現しています。

過酸化水素水に
酸化マンガン(Ⅳ)を
加えると(下図)、

2つの黒丸で表現した酸化マンガン(Ⅳ)を、過酸化水素水に加える図

酸化マンガン(Ⅳ)と接触した過酸化水素が、
すぐに、水と酸素に分解されます(下図)。

2つの黒丸(酸化マンガンⅣ)が、ぞれぞれ、だ円で表現された過酸化水素にくっつく。直後に、過酸化水素が水と酸素に分解している図。

この時、

酸化マンガン(Ⅳ)自体は
反応の前後で変化をしておらず

すぐに他の過酸化水素に接触して、
分解を促進することが出来るのです(下図)。

2個の黒丸は、それぞれ、別の過酸化水素にくっつき、その直後に過酸化水素が水と酸素に分解している図。

このように触媒は、
化学反応の前後で変化せずに、

何度も再利用されながら
化学反応を促進している

のです。

ここまでの解説では、
”少量の”酸化マンガン(Ⅳ)を加える
という書き方をしてきました。

触媒は、何度も使いまわされているため、
少量でも十分に化学反応が促進されるのです。

それでは次の記事から、
生物の体に見られる”触媒”である
酵素(こうそ)の話に入っていきましょう。

ポイントの確認問題
空欄に適する語句を選びなさい。
化学反応を促進し、それ自身は
反応の前後で変化(①:する、しない)物質のことを
触媒とよぶ。
触媒は、何度も(②:再合成、再利用)されながら
化学反応を促進している。
                       ※解答:①しない、②再利用
 

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