循環系②:循環系の分類2

前の記事「循環系①:循環系の分類1」では、
開放血管系と閉鎖血管系の
分類などを解説しました。

この記事では、
脊椎動物の血管系(閉鎖血管系)に
的をしぼって解説します。

脊椎動物の血管系

動脈血と静脈血

脊椎動物の血液は
血液中の酸素量という
視点から

・動脈血(どうみゃくけつ)
・静脈血(じょうみゃくけつ)

に分けられます。

動脈血というのは
含まれる酸素の量が多い
血液のことです。

動脈血は
鮮紅色(せんこうしょく:明るい赤色)を
しています。

静脈血というのは
含まれる酸素の量が少ない
血液のことです。

静脈血は
暗赤色(あんせきしょく)を
しています。

※下図は、ブタの動脈血(右)と静脈血(左)
ブタの動脈血と静脈血

酸素は
呼吸器(エラや肺など)で
血液に取り込まれ

その後、体の組織で
消費されます。

このため

呼吸器を出て
体の組織へと向かう血液は
動脈血であり

全身の組織を流れたのち
呼吸器へ入る血液は
静脈血です(下図)。

静脈血は呼吸器を通ると動脈血となる
※生物基礎の教科書にあわせ
静脈血を青色で表現します。

このように

静脈血と動脈血は
呼吸器を基準にして
区別されます。

以下は
よくある誤解ですので
注意しましょう。

誤解
動脈には動脈血が流れ
静脈には静脈血が流れる。

実際には
静脈血が流れる動脈や
動脈血が流れる静脈もあるのです。

例えば
肺動脈という動脈には
静脈血が流れています。

動脈と静脈は
”心臓を基準”に区別され

動脈血と静脈血は
”呼吸器を基準”に区別される

と理解しておきましょう(下図)。

血管は心臓基準、血液は呼吸器基準

 

脊椎動物の心臓

脊椎動物の心臓には

・心房(しんぼう)
・心室(しんしつ)

という2種類の部屋状の
部位があります。

心房というのは
血管から血液が流れ込む
部位のことです。

心室というのは
血管へ血液を押し出す
部位のことです。

心臓がもつ
心房と心室の数は

脊椎動物のグループ

・魚類
・両生類、は虫類
・鳥類、哺乳類

によって下表のように
異なります。
心房と心室の数

この違いに伴って
血液循環のしかたにも
違いが見られます。

各グループの心臓と
血液循環について
解説していきましょう。

その際、動物の体を

・心臓、血管、呼吸器
・その他の体の組織

に分けた模式図を
用いて説明します。

魚類:1心房1心室

1つの心房と
1つの心室をもつ
心臓の構造を

1心房1心室(いちしんぼう いちしんしつ)

といいます。

魚類の血管系では

心臓(心室)、呼吸器(エラ)、
体の組織、心臓(心房)の順に

血管でつながれています(下図)。
魚類の血管系

血液の循環の仕方を
見てみましょう。

心臓(心室)から
押し出された血液は
エラで酸素を取り込み

動脈血となって
体の組織へ向かいます(下図)。
動脈血の循環

動脈血は
組織を流れる間に酸素が消費され
静脈血となります。

組織を出た静脈血は
心臓(心房)へ戻り

再び心室から
押し出されるのです(下図)。
静脈血の循環

次に

両生類、は虫類
鳥類、哺乳類の

心臓と血液循環を
みてみましょう。

肺循環と体循環

両生類、は虫類
鳥類、哺乳類の血管系では

肺と、肺以外の体の組織とが
それぞれ異なる血管によって
心臓とつながっています(下図)。

心臓と肺、および心臓と体の組織をつなぐ血管

このような血管系での
血液循環は

・肺循環(はいじゅんかん)
・体循環(たいじゅんかん)

に分けられます。

肺循環というのは
血液が心臓から出て
肺を通り

心臓へと戻る
血液の循環のことです(下図)。

肺循環

体循環というのは
血液が心臓から出て
体(肺以外)の組織を通り

心臓へと戻る
血液の循環のことです(下図)。
体循環

以下、
肺循環と体循環を意識して
見ていきましょう。

両生類、は虫類:2心房1心室

2つの心房と
1つの心室をもつ
心臓の構造を

2心房1心室(にしんぼう いちしんしつ)

といいます。

2心房1心室の心臓では
心房が左右の2つに
分かれているのです。

左側の心房を

左心房(さしんぼう)

右側の心房を

右心房(うしんぼう)

といいます。

両生類、は虫類の心臓を
腹側(※)から見た模式図を
みてみましょう。

※図の左側が体の右側
図の右側が体の左側となる。

両生類の心臓は
心室が完全に
1つです(下図)。
両生類の心臓
一方

は虫類の心臓は
心室の中央に壁が生じて

心室が部分的に
左右に分かれています(下図)。
は虫類の心臓
完全に分かれては
いないため

は虫類の心臓も
1心室とみなします。

心室以外には
両生類、は虫類の血管系に
大きな違いは無いので

ここでは
両生類の血管系を取り上げて
血液循環を説明しましょう。

成長した両生類は
呼吸器として
肺をもちます(下図)。

両生類の血管系

血液循環を
肺循環と体循環にわけて
見てみましょう。

肺循環

血液は
心臓(心室)から出て
肺を通り

動脈血となって
心臓(左心房)へ
戻ります(下図)。

両生類の肺循環

肺循環を経て
左心房へ入った動脈血は
心室へ押し出されます。

この時、心室には
体の組織から心臓へ
戻ってきた静脈血も入り

心室内で
動脈血と静脈血が
混ざるのです(下図)。

心室で動脈血と静脈血がまざる

体循環

動脈血と静脈血が
混ざり合った血液は

心臓(心室)から出て
体の組織を通り

静脈血となって
心臓(右心房)へ戻ります(下図)。
両生類の体循環

体循環を経て
右心房へ入った静脈血は
心室へ押し出されます。

そして、心室内で
静脈血と動脈血が混ざり

再び肺へ向けて
押し出されるのです(下図)。

心室から肺へ

 

鳥類、哺乳類:2心房2心室

2つの心房と
2つの心室をもつ
心臓の構造を

2心房2心室(にしんぼう にしんしつ)

といいます。

2心房2心室の心臓では
心房と心室が左右の2つに
分かれているのです。

左側の心房を左心房(さしんぼう)
右側の心房を右心房(うしんぼう)

といいます。

また

左側の心室を左心室(さしんしつ)
右側の心室を右心室(さしんぼう)

といいます。

2心房2心室の心臓を
腹側(※)からみた模式図を描くと
下図のようになります。

※図の右側が体の左側
図の左側が体の右側となる。

2心房2心室の心臓

心房と心室の間
および
心室と動脈の間には

弁(べん)とよばれる
血液の逆流を防ぐ
構造がみられます(下図)。
心臓の弁
例えば

心室から動脈へと
血液を押し出すとき

心室と心房の間の
弁が閉じて

心房への血液の逆流を
防ぐのです(下図)。
心房心室間の弁が閉じる

心臓のドキンドキン
という音。

あの音は
心臓が収縮したり
ふくらんだりする音ではなく

弁が閉じるときに
生じる音なのです。

それでは、血液循環を
肺循環と体循環にわけて
みていきましょう。

肺循環

血液(静脈血)は
心臓(右心室)から
押し出されて肺を通り

動脈血となって
心臓(左心房)に
戻ります(下図)。
ヒトの肺循環

肺動脈と肺静脈

肺循環には

・肺動脈(はいどうみゃく)
・肺静脈(はいじょうみゃく)

という太い血管が
関与します。

肺動脈というのは

心臓(右心室)から肺へ
向かう血液が流れる
血管のことです。

肺静脈というのは

肺から心臓(左心房)へ
向かう血液が流れる
血管のことです(下図)。
ヒトの肺静脈と肺動脈

肺循環のルートを
まとめると
以下のようになります。

 赤色:動脈血が流れる部分
  青色:静脈血が流れる部分

心臓(右心室)  肺動脈  肺  肺静脈  心臓(左心房)

肺循環を経て
左心房に入った動脈血は
左心室へ押し出されます(下図)。
左心房から左心室へ

体循環

血液(動脈血)は
心臓(左心室)から出て
体の組織を通り

静脈血となって
心臓(右心房)に戻ります(下図)。
ヒトの体循環

大動脈と大静脈

体循環には

・大動脈(だいどうみゃく)
・大静脈(だいじょうみゃく)

という太い血管が
関与します。

大動脈というのは

心臓(左心室)から体の組織へ
向かう血液が流れる
大元の血管のことです。

大動脈から枝分かれをした
より細い動脈が
体の各組織へと入ります。

例えば、大動脈から
腎動脈とよばれる動脈が枝分かれをし
腎臓へ入ります(下図)。

大静脈というのは

体の組織から集まる血液を
心臓(右心房)へ送る
血管のことです。

大静脈には
体の各組織から出た
より細い静脈が合流します。

例えば、腎臓からは
腎静脈という静脈が
合流します(下図)。
腎静脈が大静脈に合流する

体循環のルートを
まとめると
以下のようになります。

 赤色:動脈血が流れる部分
  青色:静脈血が流れる部分

心臓(左心室)  大動脈 
体の組織   大静脈  心臓(右心房)

体循環を経て
右心房に入った静脈血は
右心室へ押し出されます(下図)。
右心房から右心室へ

そして、再び肺循環へと
入っていくのです。

体循環のルートの一部は
自分の体で見ることが
できます。

ヒトの体の表面には
青緑色をした血管が
見られます。

体の表面に見られる血管は
体循環における静脈であり
静脈血が流れています。

暗赤色の血液を
血管の壁や体表を
通してみると

青緑色に見えるのです。

2心房1心室と2心房2心室の比較

両生類、は虫類がもつ
2心房1心室の心臓では

動脈血と静脈血が
1つの心室内で
混ざり合います(下図)。

2心房1心室のでは動脈血と静脈血が混ざる

一方

鳥類、哺乳類がもつ
2心房2心室の心臓は

心室が2つに
分かれているため

動脈血と静脈血が
心室内で混ざり合うことは
ありません(下図)。

2心房2心室では動脈血と静脈血が混ざらない

このため
2心房2心室の心臓をもつ
血管系では

2心房1心室の心臓をもつ
血管系に比べて

組織への酸素の運搬と
肺への二酸化炭素の運搬を

より効率よく行うことが
出来るのです。

 

次の記事では
脊椎動物の循環系と血液について
解説しましょう。
⇒ 「循環系③:脊椎動物の循環系1」

確認問題1

以下の空欄に入る
語句を答えなさい。

①(  ):含まれる酸素の量が多い血液
②(  ):含まれる酸素の量が少ない血液
③( 心房 心室):魚類の心臓
④( 心房 心室):両生類、は虫類の心臓
⑤( 心房 心室):鳥類、哺乳類の心臓
⑥(  ):血液の逆流を防ぐ構造
⑦(  ):血液が、心臓⇒肺⇒心臓
の順に流れる循環
⑧(  ):血液が、心臓⇒体の組織⇒心臓
の順に流れる循環

・・・・・・・・・・・・・
解答
①動脈血 ②静脈血 ③1心房1心室
④2心房1心室 ⑤2心房2心室
⑥弁 ⑦肺循環 ⑧体循環

確認問題2

以下の図で示される
心臓の部位(③、⑥)と
血管(①、②、④、⑤)の名称を答えなさい。
また、動脈血が流れている部位を
記号(①~⑥)から全て選び答えなさい。

確認問題2の図

・・・・・・・・・・・・・・・・・
解答
①肺動脈 ②大静脈 ③右心房
④肺静脈 ⑤大動脈 ⑥左心室

動脈血が流れるのは
④、⑤、⑥

 

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