循環系③:脊椎動物の循環系1

「循環系①:循環系の分類1」
「循環系②:循環系の分類2」では、

循環系を持つ動物全般について、
血管系に的をしぼって
解説をしました。

この記事からは、
脊椎動物の循環系に注目して
より詳しく解説してきます。

脊椎動物の循環系

脊椎動物の循環系は

・血管系(心臓と血管)
・リンパ系

に分けられます。

リンパ系というのは
リンパ管という構造を中心に
構成される循環系のことです。

脊椎動物の体を

・血管系
・リンパ系
・その他の組織

に分けると

脊椎動物の体液は
上記のどの場所にあるか
によって

血液
リンパ液
組織液

に分けられます。

血液は、血管系を構成する
心臓と血管の内部にある
体液のことで

リンパ液は、リンパ系を構成する
リンパ管内にある
体液のことです。

また、組織液は
組織の細胞を浸す
体液のことです。

これら3つの体液の
循環を理解するためには

・脊椎動物の血液
・脊椎動物の血管
・リンパ管

について理解する
必要があります。

この記事では

脊椎動物の血液に
焦点をあてて
解説しましょう。

脊椎動物の血液

脊椎動物の血液は

有形成分である

血球(けっきゅう)

液体成分である

血しょう(けっしょう)

に分けられます。

血球というのは
血液中にみられる
細胞のことです。

血液は、血しょう中に
血球が浮遊している
状態になっているのです。

ヒトの血液の
模式図を描くと
下図のようになります。

ヒトの血液の図

血球の分類(赤血球、白血球、血小板)

血球は

・赤血球(せっけっきゅう)
・白血球(はっけっきゅう)
・血小板(けっしょうばん)

に分けられます。

脊椎動物間で血球を
比較すると

血球の働きは
共通していますが

赤血球と血小板の
構造に違いが
見られます。

各血球の特徴を
詳しく見て
いきましょう。

赤血球(せっけっきゅう)

赤血球というのは
酸素を運ぶ働きをする
血球のことです。

赤血球の内部には

ヘモグロビン

という赤い色をした
タンパク質が大量に
含まれます(下図)。

ヘモグロビンの図

※ヘモグロビンを大幅に
拡大して描いています。

ヘモグロビンは
成分として

を含みます。

私達の血液の色が
赤い色に見えたり

血液の味(正確にはニオイ)が
鉄の味(ニオイ)で
あったりするのは

血液中の
赤血球に含まれる
ヘモグロビンによるのです。

酸素は
赤血球内の
ヘモグロビンに結合し

血液の流れにのって
運ばれます(下図)。

酸素とヘモグロビンが結合した図

次に
赤血球の構造を
見ていきましょう。

ヒトを含む
哺乳類の赤血球には

その他の脊椎動物の
赤血球とは大きく異なる
特徴が2つあります。

1つ目は

赤血球の内部に
核とミトコンドリアが
見られないことです。

赤血球以外の一般的な細胞と
細胞内の構造を比べると
下図のようになります。

2つ目は

細胞の中央がくぼんだ
円盤状の構造をしている

という特徴です(下図)。

中央がくぼむ

赤血球の断面図も
描いてみましょう。

下図左の点線枠の位置で
赤血球を切ると
下図右のように見えます。

赤血球の断面

内部に核を
持たないことで

くぼんだ円盤状の
構造をとることが可能に
なったと考えられています。

哺乳類の赤血球が
中央のくぼんだ円盤状の
構造であることには

大きく2つの
利点があります。

1つ目は

赤血球が変形しやすくなり
細い毛細血管を効率よく
通ることが出来る

ということです(下図)。

赤血球が毛細血管を通過する図

2つ目は

赤血球内外への
酸素の移動が起こりやすい

ということです。

中央がくぼんだ
円盤状の構造は

同じ体積をもつ
球体と比べて
表面積が大きくなります。

赤血球内外への
酸素の移動は

細胞膜を介して
行われるため

表面積が大きい
構造をもつほうが

細胞内外への
酸素の移動が
より起こりやすいのです。

白血球(はっけっきゅう)

白血球は
免疫(めんえき)という働きに
関与する細胞のことです。

免疫というのは

体に害をもたらす
ウィルスや細菌などから
体を守る仕組みのことです。

例えば

マクロファージという
白血球は
体内に侵入した細菌に出会うと

自身を変形させて
細菌を捕らえ
細胞内に取り込みます(下図)。

細菌をマクロファージが捕らえる

そして
取り込んだ細菌を
分解してしまうのです(下図)。

細菌を分解する

免役の詳細は
別記事で扱います。

次に
白血球の構造を
見てみましょう。

白血球の構造は
どの脊椎動物でも
ほぼ共通しています。

白血球の内部には
大きな核が
みられます(下図)。

白血球の球状の核

また

白血球の種類によっては
いびつな形の核が
みられます(下図)。

白血球のいびつな核

血小板(けっしょうばん)

血小板は
血液凝固(けつえきぎょうこ)
という働きに関与する細胞です。

血液凝固というのは

血管が傷ついて
出血した場合に

その出血を止める
仕組みのことです。

血液凝固の詳しい解説は
記事「循環系④」の
最後に行います。

哺乳類の血小板は
他の脊椎動物とは異なり

内部に核が
見られません。

各血球の働きと
構造を解説しました。

次に
ヒトの血液を取り上げて

各血球の大きさと
血液中での密度を
比べてみましょう。

ヒトの血球の大きさと密度

ヒトの血球の大きさ(直径)と
血液中の密度(個/mm3)は
下表のようになります。

血球の直径と密度

1mmというのは
細字のボールペンの先端に
ちょこんと乗るくらいの量です。

直径は
平均すると

白血球が最も大きく
赤血球が中間で
血小板が最も小さくなります。

赤血球の直径が
約8μmであることは
入試でよく問われます。

血液中での
血球の密度は

赤血球が最も高く
血小板が中間で
白血球が最も低くなります。

実際にヒトの血液を
顕微鏡で観察した写真を
見てみましょう(下図)。

ヒトの血液写真

※中央左に白血球、中央右に血小板が
見えています。

特殊な染色液で
血球を染めてあるため

全体が青っぽく
見えています。

中央右の血小板を
拡大すると

複数の血小板が
写っています(下図)。

ヒトの血小板写真

※紫色に染色されたつぶ
1つ1つが血小板です。

次に

上写真の白血球を
拡大すると
下図のようになります。

ヒトの白血球の写真

白血球の内部にある
核が濃い紫色に
染色されています。

すぐ隣には
血小板が1つ
見えています。

もう一度
全体の写真を
見てみましょう。

ヒトの血液写真

この写真からも
血球の直径は
白血球 、 赤血球 、 血小板
の順に大きく

血球の密度は
赤血球 、 血小板 、 白血球
の順に高い

という傾向が確認できます。
確認できます。

それでは最後に

液体成分である
血しょうについて
解説しましょう。

血しょう

血しょうの各成分の割合を
質量パーセント濃度(%)で
示しましょう。

血しょうの
大部分(約90%)は

水です。

その他の成分は
・タンパク質:約7%
・グルコース:約0.1%
・脂質(ししつ)、無機塩類(むきえんるい)など
です。

酸素以外の細胞にとって
必要な物質や

細胞にとって
不要な物質は

血しょうに溶けて
運ばれるのです。

⇒ 次の記事「循環系④:脊椎動物の循環系2

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