『生物基礎』DNAの二重らせん構造と、遺伝情報を担う塩基配列
『この記事について』
DNAは、
遺伝情報(生物の形や性質を決める情報)を
担う物質です。
この記事では、
・DNAは、どのような構造をもつのか?
・DNAの構造の、どの部分が
遺伝情報を担っているのか?
目次
1:DNAの構造
1-1. DNAの見た目
DNAの構造の模式図は、
一般に、下図左側のように描かれます。
※:DNAは非常に長く、図では一部だけ示しています。
上図右側には、
立体感がつかみやすいよう、
ビーズ模型も示しました。
※:模型のため、模式図の形と少し異なります。
DNAの、上図ような構造は、
二重らせん構造
と呼ばれます。
これから
構造の詳しい解説を
していきますが、
らせん形をしたDNAの図では
解説がしにくいので、
便宜的に、らせんをほどいた
はしご形の模式図に直した図を
用いて解説していきましょう(下図)。
1-2. ヌクレオチド
DNAは、
ヌクレオチド
という物質が鎖状に
つながった構造をしています。
まずは、この
ヌクレオチドについて
解説しましょう。
ヌクレオチドは、
・糖
・塩基(えんき)
・リン酸
という物質が、
下図のようにつながって
出来た物質のことです。
ヌクレオチドは、
糖の種類によって
以下の2種類に分けられます。
・デオキシリボースという糖をもつヌクレオチド
・リボースという糖をもつヌクレオチド
DNAを構成するヌクレオチドは、
デオキシリボースをもつヌクレオチドです。
DNAは、
デオキシリボ核酸
ともよばれ、
DNAの”D”は、
デオキシリボースの英語表記の
頭文字”D”のことです。
このようにして、
DNAとデオキシリボースを
結び付けておきましょう。
なお、リボースをもつヌクレオチドに関しては、
いずれ、別の項目で解説します。
DNAのヌクレオチドの
塩基には、以下の4種類
・グアニン
・アデニン
・シトシン
・チミン
があり、しばしば、
それぞれの英語表記の
頭文字をとって、
・G:グアニン
・A:アデニン
・C:シトシン
・T:チミン
と、アルファベット1文字で
表記されます。
とりあえず、
ガクト(GACT)と覚えておき、
後からフルネームで押さえる
という覚え方もよいでしょう。
※:シンガーソングライター、俳優などとして
有名なガクトさんの表記は、GACKTです。
どの種類の塩基をもつかによって
DNAのヌクレオチドは、
4種類に分けられます(下図)。
1-3. DNAの二重らせん構造
DNAの4種類のヌクレオチドが
どの様につながってDNAが出来ているのかを
図示してみましょう。
(下図:青点線内の詳しい構造を描いている)
一見、複雑に見えますが、
ヌクレオチド同士の結合を示す線
(下図左:太い青線)を消してみると、
ヌクレオチドが並んで構成されている
こと分かります(下図右)。
まず、DNAの模式図を
右側と左側に分けて捉えて
みましょう(下図)。
各側において、
ヌクレオチドが1列に並び、
糖とリン酸の間で結合した構造のことを
ヌクレオチド鎖(さ)
と言います(下図)。
2本のヌクレオチド鎖は、
塩基を介して結合しています。
DNAの二重らせん構造
というのは、
2本のヌクレオチド鎖が
塩基を介して結合し、
らせん状にねじれた構造
のことなのです(下図)。
1-4. 塩基対、塩基の相補性
塩基同士が結合してできた
対のことを、
塩基対(えんきつい)
といいます(下図:点線内)。
※:上図では、4つの塩基対が描かれている。
塩基対について、
大変重要なポイントがあります。
このポイントを押さえていないと、
後に扱う、DNAの複製などのテーマが
理解できませんので、
ここで、しっかりと
覚えておきましょう。
そのポイントというのは、
DNAの塩基対では、
・アデニン(A)は、チミン(T)と結合する
・グアニン(G)は、シトシン(C)と結合する
ということです。
・AとT が結合
・GとC が結合
です。
【覚え方】
“G”と”C”って形が似てますね。
だから、GとCが結合すると覚えましょう。
※:実際に、塩基の構造上の理由で、
結合相手が決まります。
これまで描いてきたDNAの図では、
以下のような塩基対が
形成されています。
※:上図の塩基対の並びは、
1つの例として描いています。
このように、
ある塩基と結合する相手の塩基が
決まっている性質のことを、
塩基の相補性(そうほせい)
といいます。
塩基の相補性があるため、
片方のヌクレオチド鎖の塩基の並びが決まれば、
もう片方のヌクレオチド鎖の塩基の並びも
自動的に決まるのです(下図)。
さぁ、終わりが見えてきました。
次の項目では、DNAの遺伝情報を担う部分である
塩基配列について解説しましょう。
2: 塩基配列(遺伝情報を担う部分)
ヌクレオチド鎖の
塩基の並びのことを
塩基配列
といいます(下図)。
上図に描かれた範囲でいえば、
左側のヌクレオチド鎖の塩基配列は、
上から、
グアニン(G)、シトシン(C)、アデニン(A)、アデニン(A)
となります。
文章中などに塩基配列を記載する時には、
普通、以下のルール①と②に従います。
①:塩基名は、アルファベットで書く。
塩基名をフルネームで書くと
大変ですし、分かりにくいためです。
先ほどの例、
グアニン(G)、シトシン(C)、アデニン(A)、アデニン(A)
の場合、
GCAA
と書きます。
②:2本あるヌクレオチド鎖の塩基配列のうち、
片方だけを書く。
一方の塩基配列がわかれば、もう一方もわかるので、
必要がない限り、省略するのです。
さて、上の解説では、
たった4つの塩基による
塩基配列を示しましたが、
実際のDNAの塩基配列は、
膨大な数の塩基からなります。
例えば、
ヒトの典型的な細胞では、
核に含まれるDNAの塩基配列は、
約60億個の塩基からなっています(下図)。
※:ヒトの細胞には、複数本のDNAがあり、
それらをつなげ、1本の塩基配列として描いている。
生物の形や性質を決める
DNAの遺伝情報は、
DNAの塩基配列によって
担われているのです。
遺伝情報とDNAの
塩基配列との関係は、
例えるならば、
生物基礎の知識(情報)と
教科書の文章(文字の配列)
のの関係と似ています。
教科書の文章であれば、
私達は、読んで
知識を得ることが出来ます。
しかし、
DNAの塩基配列となると
どうでしょう?
ATTGGCCTGAG・・・・・・
私達にとっては、
まさに暗号ですね。
この謎めいた塩基配列から、
一体どのようにして、生物の形や性質が
決められているのでしょうか?
その内容については、
執筆中の次の記事
「転写と翻訳:タンパク質の合成」で扱います。
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