『生物基礎』光学顕微鏡の使い方を写真付つきで解説
『この記事について』
この記事では、
光学顕微鏡(※:反射鏡付き)の使い方を、
初心者向けに、丁寧に解説しています。
目の前に顕微鏡がなくても、
顕微鏡どこを操作すると、どのように見え方が変わるのかを
写真付きで解説しています。
この記事で解説している
下図左の試料(オオカナダモの葉)を、
下図右の写真(総合倍率400倍)のように観察できるようになる
手順を示すことが、この記事の目的です。
※:右写真内の緑の粒は、葉緑体。
また、入試生物基礎で狙われやすいポイントは、
詳しく解説してあります。
目次
目次
1:光学顕微鏡の各部位
1-1. 各部の名称と、注目すべき部位
光学顕微鏡の各部の名称は、以下の通りです。
この中で、顕微鏡の使い方を
マスターする上で注目すべき部位は、
・接眼レンズ
・対物レンズ
・しぼり
・反射鏡(※)
の4つです。
※:反射鏡の代わりに
LEDライトのついた顕微鏡もあります。
この4つの部位の仕組みを
先におさえておくことで、
顕微鏡の使い方を、より早く
身につけることが出来るでしょう。
1-2. 接眼レンズ、対物レンズ
光学顕微鏡は、
いわば虫眼鏡の強化版。
虫眼鏡は、1枚のレンズを介して
観察物を拡大するのに対し、
光学顕微鏡は、2枚のレンズを介して
観察物を拡大します。
その2枚のレンズの名称を、
・接眼レンズ:”眼”に近い側にあるレンズ
・対物レンズ:観察”物”に近い側にあるレンズ
といいます(下図)。
観察物は、
対物レンズで拡大された後、さらに
接眼レンズでも拡大されるのです。
このため、光学顕微鏡の総合倍率は、
以下の式で示すことが出来ます。
光学顕微鏡の総合倍率
= 対物レンズの倍率 × 接眼レンズの倍率
多くの場合、
接眼レンズと対物レンズの倍率には
以下のものがあります。
・接眼レンズの倍率:10倍、15倍
・対物レンズの倍率:4倍、10倍、40倍
例えば、
接眼レンズが10倍、対物レンズが40倍という設定にすると、
総合倍率は400倍となります。
レンズが何倍であるかは、
各レンズに表記されいます。
また、対物レンズは高倍率のレンズほど、
長さが長くなります(下図)。
なお、接眼レンズをのぞいた時に見える
円形の範囲を、視野(しや)といいます(下図)。
1-3. 反射鏡としぼり
①反射鏡
反射鏡は、
レンズに光を集める装置です(下図)。
試しに、反射鏡を手で覆って
接眼レンズをのぞいても
レンズ内に光がほとんど入らず
視野は真っ暗ですが(下図)、
※:視野の周りに白線を描いてある。
反射鏡をうまく調整すると、
視野は明るく見えます下図)。
反射鏡には、
・平面鏡:平らな鏡
・凹面鏡(おうめんきょう):中央がへこんだ鏡
があり、
オセロの駒(黒と白)のように、
平面鏡をひっくり返すと凹面鏡になります。
凹面鏡には、平面鏡よりも
多くの光を集める性質があります。
②しぼり
しぼり は、
反射鏡によって集められた光がレンズに入る際、
レンズに入る光の量を調節する装置です(下図)。
しぼり には、
・しぼりを開く
・しぼりをしぼる
という2つの操作があります。
しぼりを開くほど
光の量が増えて視野が明るくなり、
しぼりをしぼるほど
光の量が減って視野が暗くなります(下図)。
実際の見え方の違いを写真で
確認してみましょう。
・全開にした状態
・中間の状態
・最もしぼった状態
このように、
しぼりを開くほど
視野は明るくなりますが、
観察物の見た目はぼやけやすくなり、
しぼりをしぼるほど、
観察物の輪郭はハッキリしてきますが
視野が暗くなります。
観察の目的に合わせて、
適度にしぼりを開く(しぼる)ようにします。
2:光学顕微鏡の操作手順
この解説で用いる顕微鏡の設定と観察物
この操作手順の解説では、以下の設定をした
顕微鏡を用いています。
・接眼レンズ:10倍
・対物レンズ:4倍、10倍、40倍
・反射鏡つき
また、観察物(試料)として
オオカナダモという植物の葉を用います。
(下図:水槽内のオオカナダモ)
最初の準備
直射日光の当たらない明るい場所で、
机の上などの平らな所に顕微鏡を
置きましょう。
置く向きは、自分から見て
下図のように見える方向で起きます。
次に、
以下の3つの設定を行います。
・最低倍率の対物レンズ(4倍)にしておく。
・しぼりを全開にしておく。
・反射鏡を平面鏡にしておく。
手順1:視野を明るくする
直射日光以外の明るい光、
例えば電気スタンドの光などを反射鏡で
反射させて、視野を明るくする手順です(下図)。
注意:
目を傷める可能性が高いので、
直射日光の利用は厳禁です。
【手順】
接眼レンズをのぞきながら
反射鏡(平面鏡)の角度を変えて、
視野が最も明るくなるようにします。
下図左:視野が暗い(✖) 右:視野が明るい(〇)
手順2:観察物をのせる
【手順】
あらかじめ作成した、
観察物入りのプレパラート(※)を
ステージの上にのせます(下図)。
※:スライドガラスとカバーガラスで
観察物をはさんだもの。→「プレパラートとは?」
肉眼で見て、プレパラート内の
観察物がステージ中央の穴の上に
来るように置き、クリップで止めます(下図)。
※:観察物が小さく、肉眼で見えない場合は、
カバーガラスの中央が、ステージ中央の穴の上に
来るようにします。
手順3:ピントを合わせる(総合倍率40倍)
ピント合わせの際は、
調節ねじを操作します(下図)。
顕微鏡の種類によっては、
大小2つの調節ねじがついています。
大きい調節ねじで大まかにピントを合わせ
小さい調節ねじで微調整をすることが出来ます。
【手順】
ステージを横から見つつ
調節ねじを回して、
対物レンズの先端とプレパラートを
ギリギリまで近づけます(下図)。
次に、接眼レンズをのぞきつつ
調節ねじをゆっくりと回し、
対物レンズとプレパラートを遠ざけながら
ピントあわせます。
下図は、ピントが合っていない状態(左)と
ピントが合っている状態(右)の写真です。
手順4:観察したい部位を視野の中央へ
詳しく観察したい部位を、
視野の中央に持ってくる手順です。
後に、より高倍率の対物レンズに
変える際に、この手順4を行っていることが
重要になってきます。
【手順】
視野の中で、
詳しく観察したい部位がある方向と”同じ方向へ”
プレパラートを動かします(下図)。
こうすることで、
詳しく観察したい部分を視野の中央に
移動させることが出来るのです(下図)。
ここは、入試生物基礎の
出題ポイントになるので、
理屈を少し説明しましょう。
光学顕微鏡の視野は、レンズの仕組み上、
上下左右が逆に見えています。
もしも、観察物がプレパラート上で
「F」の形をしていたら、視野内では、
下図のように見えるのです。
このため、例えば、
観察したい部位が視野の右上にある場合、
プレパラートを動かすべき方向は、
左下ではなく、上下左右を逆の
右上となるのです。
手順5:しぼりの調節
しぼりを操作して
観察物がよりクッキリ
見えるようにする手順です(下図)。
※:写真の顕微鏡は穴の開いた円盤を
回して操作する しぼりですが、
レバーで操作する しぼりもあります。
【手順】
解説通りに操作していれば、
この時点では、しぼりは全開(穴が最大)に
なっているはずです。
接眼レンズをのぞきながら、
しぼりを、しぼったり、開いたりして
観察物が見えやすように調節しましょう。
手順6:より高倍率の対物レンズに変える
①対物レンズを4倍→10倍へ(総合倍率100倍)
【手順】
レボルバーを指で押さえて回し、
対物レンズを4倍から10倍へ変えます(下図)。
手順5までが上手く出来ていれば、すでに、
ほぼピントがあっている状態になるので、
調節ねじをゆっくりと、少しだけ回して
ピントを合わせましょう。
(下図左:対物レンズを変えた直後の視野、
右:ピントを合わせた後の視野)
ピントが合ったら、
観察したい部位を視野の
中央に移動させます(※)。
※:この操作は、対物レンズを、より高倍率に変えた際に
重要な役割を果たします。
次に、
必要に応じて、しぼりを調節します。
②対物レンズを10倍→40倍へ(総合倍率400倍)
【手順】
高倍率の対物レンズになるほど、
視野が暗くなります。
そのため、まずは反射鏡を、
より光を集めやすい凹面鏡に変えて、
視野が最も明るくなるように調節しましょう。
(下図左:平面鏡のまま 右:凹面鏡に変えた場合)
次に、
レボルバーを指で押さえて回し、
対物レンズを10倍から40倍へ変えます。
手順①が上手く出来ていれば、すでに、
ほぼピントがあっている状態になるので、
調節ねじをゆっくりと、少しだけ回して
ピントを合わせましょう。
この時、調節ねじを動かしすぎると、
対物レンズとプレパラートがぶつかり、
対物レンズに傷がついたり、
プレパラートのガラスが割れたりする
ことがあるので注意しましょう。
(下図:ピントを合わせた後の視野)
※:写真内の緑の粒は葉緑体
観察したい部位を視野の中央に移動させ、
必要に応じて、しぼりを調節します。
顕微鏡操作の手順は、これで以上です。
観察したい部位を視野の中央に移動させる理由
観察したい部位を
視野の中央に移動させることで、
その部位を最も鮮明に
見ることが出来ることはもちろん、
高倍率の対物レンズに変えた際に、
観察したい部位を見失わないようにする
ことが出来ます。
例えば、
10倍の対物レンズで観察していて、
視野の中の観察物(正方形の形)が下図のように
見えているとしましょう。
そして、右上の角を、
より高倍率で観察したいとします(下図)。
対物レンズを10倍から40倍に変えると、
正方形の一辺は、10倍の対物レンズで
見ていた時の4倍に拡大されます(下図)。
面積でいえば、4×4=16倍に
拡大されるのです。
しかし、視野の面積は変わりません。
よって、視野内に見える範囲は、
10倍の対物レンズで見えていた範囲の
たった16分の1になるのです。
ですから、詳しく観察したい部位を
あたかじめ視野の中央に移動させておかないと、
40倍の対物レンズに変えた際に、
観察したい部位が、視野の外に出てしまい、
見失ってしまう可能性が高くなるのです(下図)。
視野の中央に移動させておくことで、
対物レンズの倍率を上げても、観察したい部位が
視野内に残るのです(下図)。
3:接眼レンズを付け替える際の注意点
接眼レンズを10倍から15倍に変えるなど、
接眼レンズを付け替える際の注意点として、
接眼レンズを外したら、
すぐに、目的の接眼レンズを取り付ける
ということが挙げられます。
接眼レンズを外している時に、空気中のホコリなどが
接眼レンズをはめ込む部位から、
顕微鏡内に入ってしまうことを防ぐためです。
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