イラガ類の幼虫駆除:特徴を知れば一網打尽。
『この記事について』
イラガ類の幼虫は、
果樹(カキの木など)やカエデ類の木などで
よく見られます(下図)。
多く発生した場合に
駆除しようと思っても、
幼虫は毒のあるトゲを全身にまとうため、
ちょっと厄介です。
でも、イラガ類の幼虫は、
・駆除する最適のタイミングを知る
・目立たない幼虫ではなく、目立つ食痕を見つける
の2点をおさえれば、
目次
1:イラガ類の成長と、駆除のタイミング
1-1. 卵:5月後半~7月
駆除のタイミング:✖(不適)
イラガ類の成虫は、1枚の葉の裏に
多数の卵をまとめて産卵します。
いつ産卵するか分からないですし、
葉を1枚1枚調べて、直接に
卵を発見するのは困難でしょう。
1-2. 幼虫:6月~10月
①幼虫の特徴
・毒のあるトゲを多数もつ。
(下図:ヒロヘリアオイラガの幼虫の例)
・葉の裏側にいることが多い。
・種類によって年1回、または2回幼虫が発生する。
②若い幼虫
駆除のタイミング:◎(最適)
イラガ類の多くの種では、
卵から生まれた幼虫が、ある程度成長するまで
1枚の葉の裏で集団生活をしています。
(下図:カキの葉についた集団)
つまり、
このタイミングで駆除すれば、
葉1枚を除去するだけで、
幼虫を一網打尽に出来るのです。
また、この段階での幼虫は
とても小さいため、
意図せずに、
毒のあるトゲに触ってしまう
確率も低くなります。
たしかに、小さな幼虫たちを
“直接に”見つけるのは大変かもしれません。
でも、幼虫たちがつけた
葉の食痕(しょっこん:食べた痕跡)であれば、
見つけるのが容易なのです。
下の写真は、
集団生活している若い幼虫による
食痕を、葉の裏側から写したものです。
(カキの葉についた食痕の例)
若い幼虫たちは、葉の内部を裏から食べて、
葉の表側の薄い表皮1枚だけを残します(下図)。
このため、
葉の一部が白っぽく見えるのです(※)。
※:イラガ類以外のガの幼虫にも、
似た食痕を残すものがあります。
白っぽく見える食痕は
葉の表側からもよく目立つため、
葉の裏側に隠れている
幼虫の集団を見つけやすいのです。
(下図:表側の写真)
③ある程度成長した幼虫
駆除のタイミング:〇
集団生活していた幼虫は、
ある程度成長すると徐々に分散し、
1枚の葉に1~2匹程度の密度で
生活するようになります。
(下図:枝ごと除去したもの)
下図は、
集団生活中の新しい食痕(左側)と、
集団生活が終わって時間がたち、
集団生活時の食痕が古く茶色くなったもの(右側)を
比較した写真です。
上図右側のように、
茶色く枯れたような食痕が見られる場合、
すでに分散生活が始まっている
と考えてよいでしょう。
だからと言って、
駆除不可能という訳ではありません。
なぜなら、
古い食痕の周辺にある葉の裏に
分散して生活していることが多いからです。
この場合も、成長した幼虫による食痕が
幼虫発見の目安になります。
成長した幼虫は、葉の表面を残すことなく
かじり取るので、下図(カキの葉の例)のような
食痕が見られます。
注意!
食痕が見られない葉の裏にも
幼虫が隠れている場合があります。
分散時の段階で幼虫を駆除する場合は、
除去すべき葉の数が増えます。
また、
思わぬ場所にいた幼虫のトゲに触れてしまう可能性が
高まるので注意が必要です。
1-3. マユ:11月~5月
駆除のタイミング:△
イラガ類は、
マユの状態で冬を越します。
イラガ類のマユは、枝や幹に見られ、
1cmほどの大きさで、鳥の卵のような
形をしています。
鉢植えで栽培しているなど、
小さめの木であればマユの発見は
容易かもしれませんが、
大きく、枝の多い木になるほど、
マユの発見は困難になります。
種類によってはマユに、
毒のある毛が付着しているので
駆除する際は注意が必要です。
例:イラガのマユ
・見た目がウズラの卵に似ている
・毒の毛なし
例:ヒロヘリアオイラガのマユ(羽化後)
・茶色っぽい
・羽化後のマユには毒はないが、
新しいマユには毒の毛がある。
1-4. 成虫:5月~9月
駆除のタイミング:✖
イラガ類の成虫は、
毒のあるトゲや毛を持っていません。
しかし、発見しにくく、飛び回るため、
駆除のタイミングとしては不適でしょう。
例:ヒロヘリアオイラガの成虫
2:幼虫の駆除(準備と方法)
2-1. 準備
毒のあるトゲが
素肌につかないように
以下の準備をします。
①長そでの上着を着る
②厚手の手袋をつける。
注意!
軍手や、薄いビニール手袋は、
トゲを通す可能性があります。
2-2. 方法
幼虫を手早く駆除する方法は、
幼虫のいる葉、あるいは、
幼虫のいる葉がついた枝の下に
口を開けたビニール袋を持ってきて、
ハサミを使って、葉や枝ごと
ビニール袋の中に切り落とすことです。
(下図:赤の実線矢印の位置で切る)
若い幼虫が、1枚の葉の裏で
集団生活している場合、
その葉の付け根を切って
落とすのが良いでしょう。
幼虫が複数の葉に分散している場合、
幼虫のいる葉の付け根を切るか、
幼虫のいる葉が複数ついている枝を
切り落とします。
落とした葉と幼虫は、
庭や鉢植えの土に”深め”に埋めて、
土にかえすことができます。
ただし、使ったビニール袋は
必ず廃棄しましょう。
3:刺された場合の対処
イラガ類の幼虫に刺されると、
電気が走ったような強い痛みがあります。
刺された箇所には、毒を持つトゲが
刺さったまま残っている可能性があります。
対処方法
①粘着性のあるテープ(セロハンテープなど)を、
刺された箇所に、何度か軽く当てて
トゲを抜き取ります。
②次に、保冷剤などで冷やしておくと
痛みが和らぎます。
※:適切な対処方法をとっても、
かゆみなどが数日続く場合があります。