『生物基礎』バイオームの覚え方のコツ:世界のバイオーム編
『この記事について』

バイオームの範囲は、
覚えることが多くて
大変って聞いたけど・・・。
覚えることが多い
のは確かです。
例えば、
教科書にある下図の
用語の意味や位置は、
共通テスト対策として
正確に覚える必要があります。

キツイなぁ。
どうすれば、、、

もし全てを
丸暗記しようとしたら
本当にキツイでしょう。
でも、
沢山あるバイオームの用語を整理して
用語同士の関係を1つ1つ丁寧に学べば
ずっとラクに短時間で記憶ができます。
それでもやっぱり
覚えるのは大変だなぁ。

今回の解説では、
用語の覚え方のコツ
を色々取り入れています。
バイオームの範囲では、
共通テスト対策 “だけ”を考えるなら
丸暗記した方が早い部分もあります。
そのような部分では特に、
用語の覚え方のコツが
暗記に費やす時間を節約するための
ヒントとなるでしょう。
それでは、
世界のバイオームの壮大な景色を
一緒に見ていきましょう。
目次
目次
1:バイオームとは
地球上には様々な
植生(植物の集まり)があり、
植物と共に、動物などの
多様な生物が生息しています。
バイオーム(生物群系ともいう)
というのは、
ある地域の植生と
そこに生息する全ての
生物のまとまり
のことです。
生物基礎では特に、
陸上に見られるバイオーム
について学びます。
陸上のバイオームは、
相観(植生の外見)
によって分類され、
大きく分けると
・森林
・草原
・荒原(こうげん)
の3つに分類できます。
それぞれを、
・森林のバイオーム
・草原のバイオーム
・荒原のバイオーム
と呼ぶこともあります(下図)。

森林(のバイオーム)

草原(のバイオーム)
荒原(のバイオーム)というのは、
植物の生育にとって
極端に厳しい環境の地域に
見られる植生のことです。
砂漠などがあります(下図)。

同じ地球上で
なぜ、こうした相観の違いが
生まれるのでしょうか?

雨がほとんど
降らなければ
砂漠になる?
その場合もあります。
実は、
ある地域のバイオームが
どのような相観になるかは、
おもに
年平均気温と年降水量で決まる
のです。
下図は、横軸に年平均気温、
縦軸に年降水量をとり、
世界の森林、草原、荒原の
バイオームの分布範囲を
図示したものです。

例えば、
年平均気温が-5℃以上の地域では
降水量の多い方から順に
森林、草原、荒原が成立すること
が読み取れます(下図)。

このように、
気温・降水量の違いと
バイオームの違いが対応して
いることが確認できます。

でも、草原は時間が
経てば森になるって
聞いたことがあるよ。
それは、
遷移(せんい)の話ですね。
混乱しやすい所なので
少し説明しておきましょう。
時間の経過とともに
植生が変化していくことを
遷移といいます。
陸上での遷移は、
荒原から草原へ、
草原から森林へと
進む傾向がありますが、
どこまで進むかは
気温や降水量などの
環境条件によるのです。
現在見られる
陸上のバイオームは、
現在の環境条件の
もとで進める段階まで、
遷移が進行した
結果なのです。
このため
現在の環境条件が
大きく変わらない限り、
森林・草原・荒原のバイオームは
今後も、
森林・草原・草原のバイオームで
あり続けるでしょう。
さて、ここまで
陸上のバイオームについて
大まかに解説しました。
これから、より詳しく
見ていきますが、
その前にあらかじめ
押さえた方がよい知識を
次の項目2で確認してみましょう。
【確認問題の1】を解いて
記憶に留めましょう。
2:あらかじめ押さえたい基礎知識
2-1.気候帯、樹木の分類名
この後の
バイオームの解説では、
・気候帯
熱帯、亜熱帯、暖温帯、冷温帯、寒帯
・樹木の分類名
常緑広葉樹、常緑針葉樹
落葉広葉樹、落葉針葉樹
という用語が出てきます。
これらの用語の意味が
分かる場合は、この項目2は
読み飛ばしてもよいでしょう。
もし、分からない用語
理解のあいまいな用語が
ある場合は以下で確認しましょう。
2-2. 気候帯
地球の緯度は
赤道が最も低緯度(緯度0度)で、
北極・南極(緯度90度)に向かうほど
高緯度になります(下図)。

気温は、おおむね
赤道から高緯度地方に向かって
低くなっていきます。
これに対応して、
気温による気候帯は
赤道から高緯度地方に向かって
・熱帯
・亜熱帯
・温帯(暖温帯:だんおんたい)
・温帯(冷温帯:れいおんたい)
・亜寒帯
・寒帯
と変化します。
温帯のうち、
比較的暖かい温帯のことを
暖温帯(だんおんたい)、
比較的寒い温帯のことを
冷温帯(れいおんたい) といいます。
2-3. 広葉樹・針葉樹、常緑樹・落葉樹
樹木は、 葉の形によって
広葉樹(こうようじゅ)と
針葉樹(しんようじゅ)
に分けられます。
広葉樹というのは、
広く平たい葉をつける
樹木のことです(下写真)。

サクラの葉
針葉樹というのは、
例外はありますが
針状か、それに近い形の
葉をつける樹木のことです(下写真)。

マツの葉
樹木はまた、
葉の落とし方によって
常緑樹(じょうりょくじゅ)と
落葉樹(らくようじゅ)
に分けられます。
常緑樹というのは、
1年を通して“常”に葉を
つけている樹木のことです。
一部の葉を落とすことはあっても、
全ての葉を同時に落とすことは
普通ないため、常に葉がついてます。
例えば、スギは常緑樹です。

そういえば、
杉花粉のニュース映像では
真冬なのに葉がついてる。
鼻水が出た。

一方、落葉樹というのは、
1年の特定の時期(冬季、乾季)に
全ての葉を落とす樹木のことです。
例えば、
サクラは落葉樹です(下写真.冬のサクラ)。

常緑樹と落葉樹の違いを
模式図でまとめます(下図)。

常緑樹と落葉樹は、それぞれが
広葉樹と針葉樹に分けられます。
このため、言葉を組合せた
以下の分類名があります。

例えば、
サクラは落葉広葉樹です。
3:テスト対策のポイント
この後、様々な種類の
バイオーム(熱帯多雨林など)
について解説します。
共通テスト対策としては、
〇各種バイオームの特徴
①分布
②植生の特徴
③代表的な植物名
と、
〇下図での各種バイオームの位置

の両方をセットで覚える
ことが重要です。
以降の解説は、
このことを踏まえています。
まずは、年平均気温が
-5℃以上の地域だけに注目し、
降水量の多い順(森林、草原、荒原の順)
で解説しましょう。(下図の点線右側)

どうしてその順番?

先に苦労すれば後が楽です。
ひえ~。

4. 森林(のバイオーム)
4-1.森林の成立、分類
年平均気温が-5℃以上で
年降水量が比較的多い地域では、
森林が成立します(下図太枠内)。

森林のバイオームは、
気候帯に対応して
以下の7種類に分類できます。
熱帯・亜熱帯
〇熱帯多雨林
〇亜熱帯多雨林
〇雨緑(うりょく)樹林
温帯
〇照葉(しょうよう)樹林
〇硬葉(こうよう)樹林
〇夏緑(かりょく)樹林
亜寒帯
〇針葉樹林
個々のバイオームの話に入る前に、
まずは、以下の共通ポイントを
押さえましょう。
森林のバイオームのうち
針葉樹が優占するのは
針葉樹林のみで、
その他では
広葉樹が優占(最も多く見られる)
します(下図)。

さらに、上図の
広葉樹が優占する
バイオームのうち、
落葉樹が優占するのは
雨緑樹林と夏緑樹林で
どちらも“緑”という字が入ります。
それ以外では
常緑樹が優占します(下図)。

ここからは、熱帯多雨林から針葉樹林まで
暑い地域から順に話を進めていきます。
4-2. 熱帯多雨林、亜熱帯多雨林
①分布
熱帯、亜熱帯のうち
降水量の多い地域。
下図で赤道直下の地域に多い
ことを押さえましょう。
日本では屋久島より南の島々で
亜熱帯多雨林が見られます。

下図では、気温が高く
降水量が最も多い範囲に
位置しています。
亜熱帯多雨林の方が
やや気温の低い範囲に
位置します。

熱帯・亜熱帯多雨林
の名前の通りだね。

②植生の特徴
・様々な植物がみられる(下写真)。
・常緑広葉樹(フタバガキの仲間など)が優占。
・河口付近にはマングローブ林(※)が
見られることがある。
※根がタコ足状に分かれる
樹木などが見られる(下写真)。

③”熱帯多雨林”の代表的な植物
・フタバガキの仲間
高さ50mを超えることもある。
・つる植物、着生植物(※)
※着生植物:樹木の上などに
根を張って生活する植物(下写真)。

【記憶のためのマメ知識:フタバガキ】
フタバガキの実は、
柿の実に2枚の羽を
つけたような形をしています(下図)。

フタバガキの名の
由来にもなっています。
この実が、
時に50m以上の高さから
クルクル回転しながら
落ちてくるのです。

YouTubeで
見たことあるかも。
③”亜熱帯多雨林”の代表的な植物
ガジュマル、アコウ、ヘゴ
【覚え方】
ガ ッコウ へゴー!
(学校へGO!:”ガ”ジュマル、”アコウ”、”ヘゴ”)
と覚えておきましょう。
ガジュマルは、
観葉植物としても有名です。(下図)

ヘゴは、木のような
見た目のシダ植物(木生シダ)です(下図)。

4-3. 雨緑樹林(うりょくじゅりん)
①分布
熱帯・亜熱帯のうち
雨季と乾季がある地域。
赤道近くの地域に
多いことを確認(下図)。

乾季があるため、
熱帯・亜熱帯多雨林よりも
降水量がやや少ない
範囲に位置(下図)。

②植生の特徴
乾季に落葉する
落葉広葉樹が優占。

上写真:日本の真夏のような
暑さの中で落葉。
【覚え方】
“雨”季に”緑”の葉をつけ
乾季に落葉する”雨緑”樹林
と覚えておきましょう(下図)。

③代表的な植物
チーク
ほっぺた?

樹木です。
4-4. 照葉樹林(しょうようじゅりん)
①分布
暖温帯(比較的暖かい温帯)
の地域
下図では、
日本の九州から関東の地域
含まれることに注目。

下図では、
熱帯・亜熱帯の森林よりも
やや気温の低い範囲に位置。

②植生の特徴
クチクラ層の厚い、
硬くて光沢のある葉をもつ
常緑広葉樹が優占
【記憶のためのマメ知識】
クチクラは、英語では
キューティクルと言います。
体の毛を守る?

・・・そうです。
もちろん
成分は異なりますが、
動物の毛のキューティクルと同様に
葉のクチクラは、葉の表面を覆って
内部を保護しているのです。
クチクラ層が厚いことで
葉の表面が”ツヤツヤ”して見え、
このことが”照”葉の名前の
由来になっています(下写真)。
※左:クチクラ層が厚い
右:クチクラ層が薄い
③代表的な樹木
シイ類(スダジイなど)、カシ類(アラカシなど)、
タブノキ、クスノキ
【覚え方】
それぞれの名前の頭2文字をとって、
『シイ!カシ!タブ!クス!』と、
リズムよく何度が唱えましょう。
シイ!カシ!タ、タブ、クス!

言いやすい順番に
入れ替えてもよいでしょう。
4-5. 夏緑樹林(かりょくじゅりん)
①分布
冷温帯(比較的寒い温帯)
の地域
日本の東北地方や
北海道南部が含まれる
ことに注目(下図)。

暖温帯の照葉樹林よりも
さらに気温の低い範囲
に位置します(下図)。

②植生の特徴
冬季に落葉する
落葉広葉樹が優占

上写真:初冬の夏緑樹林
【覚え方】
“夏”季には”緑”の葉をつけて
冬季に落葉する”夏緑”樹林、
と覚えましょう(下図)。


どうして冬に葉を
落とすの?
冷温帯の冬は
寒さや乾燥などのため、
光合成にはあまり適さない
環境だと言えます。
夏緑樹林の落葉広葉樹が
冬季に葉を落とすことは、
光合成に適さない環境への
適応と考えられています。
③代表的な植物
ブナ、ミズナラ、カエデ類
【覚え方】
水つながりで
覚えてみましょう。
カエデ類の樹木には、
下写真のような形の葉をもつ
種類があります。

この形がカエルの手の形に
似ているとして、カエデと呼ぶ
ようになったと言われています。
暑い”夏”には水。
カエデ → カエル手が由来
ミズナラ → 漢字でミズは水
ブナ → フナ(こじつけ)
4-6. 硬葉樹林(こうようじゅりん)
①分布
温帯のうち、
冬に降水量が多く
夏に乾燥する地域
地中海沿岸が含まれることを
押さえましょう(下図)。

下図では、
照葉樹林や夏緑樹林などと
重なる範囲に位置しています。

照葉樹林や夏緑樹林などと
同様の気温・降水量であっても、
上記の地域では
冬に湿潤、夏に乾燥という
特徴のため、
硬葉樹林が
形成されるのです。
②植生の特徴
硬くて小さい葉を持つ
常緑広葉樹が優占
③代表的な植物
オリーブ、ゲッケイジュ、コルクガシ

※上写真:オリーブの葉と実
【覚え方】
“地中海”に面する国の
料理つながりで
覚えてみましょう。
オリーブ
→ オリーブオイル
ゲッケイジュ
→ パスタなどの香りづけ
コルクガシ
→ 木の皮がワインの
フタ(コルク)の材料になる
さて、長かった
森林のバイオームも
残りは針葉樹林のみです。
4-7. 針葉樹林
①分布
亜寒帯に分布
下図では、
日本の北海道北東部
が含まれることを確認。

下図では、
森林のバイオームの中で
気温の最も低い範囲に位置。

②植生の特徴
・常緑針葉樹、あるいは
落葉針葉樹(カラマツ)が優占
③代表的な植物
モミ類、トウヒ類、カラマツ
【覚え方】
モミ類
→ 葉を握ってモミモミすると
少し痛いです。
→ 針葉樹
トウヒ
→ 凍結の”トウ”(こじつけ)
→ 寒そう
→ 亜寒帯
頭皮(とうひ)をもみもみ


カラマツは、なんか枯れそう。
葉が全部落ちる。落葉針葉樹。
良いですね!
そうやって自分で作ってみると
一番覚えやすいのです。
さて、残りは
草原と荒原のバイオームですが、
森林のバイオームに比べたら
楽勝、楽勝。
【確認問題の2】を解いて
記憶に留めましょう。
4-8:森林のバイオームまとめ

5:草原のバイオーム
5-1. 草原の成立、分類
年平均気温が
-5℃以上の地域のうち、
年降水量が比較的少ない地域では
草原が成立します(下図太枠内)。

年降水量が
草本(※)の生育には十分でも、
多くの樹木の生育に
とって十分でないため、
森林までは遷移が
進行しないのです。
※:一般に『草』と呼ばれる
植物のこと。
草原のバイオームでは
イネの仲間の草本が優占します。
イネの仲間の目立つ特徴は
細長い葉をもつことです(下写真)。
草原のバイオームは
気候帯に対応して、
熱帯、亜熱帯
サバンナ
温帯
ステップ
の2つに分けられます。
森林の解説と同様に、
暑い地域から始めます。
5-2. サバンナ
①分布
熱帯、亜熱帯のうち
年降水量が少ない地域
赤道周辺に多いことを
確認しましょう(下図)。

下図では、
気温は高くも
降水量が少ない範囲に位置。

②植生の特徴
・イネの仲間の草本が優占
・樹木が点在する(下写真)。
アフリカの草原だ!

サバンナは、アフリカに限りませんが
アフリカのサバンナは有名ですね。
5-3. ステップ
①分布
温帯のうち
降水量の少ない地域
下図で、サバンナよりも
赤道から離れた地域に
多いことに注目しましょう。

サバンナよりも
気温の低い範囲に位置します(下図)。

②植生の特徴
・イネの仲間の草本が優占。
・サバンナと違って、
樹木がほとんど見られない。(下写真)

ここでダンスしたい。

最後は、荒原のバイオームです。
5-4.草原のバイオームまとめ

6:荒原(のバイオーム)
6-1. 荒原の成立、分類
年平均気温が-5℃以上で
年降水量が極端に少ない地域と、
年平均気温-5℃ “以下” の地域では
荒原が成立します(下図)。

これらの地域では、
降水量や気温の条件が
草本を含めた植物の
生育にとって極端に厳しいため、
草原や森林まで
遷移が進まないのです。
荒原のバイオームは、
気候帯に対応して
熱帯、温帯
砂漠
寒帯
ツンドラ
の2つに分けられます。
6-2. 砂漠
①分布
熱帯、温帯で
年降水量が極端に少ない地域
世界最大級の砂漠である
アフリカのサハラ砂漠が
含まれる(下図矢印)。

下図では、
最も年降水量の少ない範囲
に位置しています。

②植生の特徴
多肉植物(サボテン類など)が点在。
多肉植物は、植物体内に水を
蓄えるなどして乾燥に適応しています。

6-3. ツンドラ
①分布
寒帯に分布。
赤道から最も遠い地域(下図)。

下図では、
最も気温の低い範囲
に位置します。

②植生の特徴
地衣類(ちいるい)、コケ植物、
草本が主体(下写真)


見てるだけで寒そう。
ところで地衣類って?
地衣類というのは、
菌類と、緑藻類あるいは
シアノバクテリアの
共生体のことです。
一見、コケ植物にも見えます。
(下写真:地衣類の一種)

地衣類は、地面や岩に
張り付くようにして
生活しています。
ツンドラには、
トナカイなどの大型の
哺乳類が生息します。
用語が多くても
整理して見ていくと
記憶に残りやすいね。
でも、疲れた~。

【確認問題の3】を解いて
記憶に留めましょう。
6-4.荒原のバイオームまとめ

7:世界のバイオームのまとめ

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