『生物基礎』ホルモン③:ホルモン分泌量の調節

この記事は「ホルモン②:ホルモンの定義と作用の仕組み」の続きです。

ホルモン分泌量は多すぎも少なすぎもダメ

ホルモンの分泌量は
多すぎても少なすぎても
体に悪影響が出ます。

インスリンというホルモンを
例にとってみましょう。

細胞は
活動のエネルギー源として
グルコースという糖を利用しています。

血液中のグルコース濃度を
血糖値(けっとうち)とよびます。

インスリンは
血糖値を下げる働きをする
ホルモンです。

私達が食事をすると
血糖値が上昇します(下図)。

食事による血糖値の上昇

すると
インスリンの分泌量が増えて
血糖値が下がります(下図)。

インスリンによる血糖値の低下

エネルギー源といえども
血糖値が高いままだと
体に悪影響が出るのです。

もしも、インスリンの分泌量が
少なすぎると
血糖値が高い状態が続きます。

この状態が何年も続くと
血管が傷つくなどして
血液の流れが悪くなります。

その結果
脳、心臓、腎臓などの器官に
障害が出る可能性が高まるのです(下図)。

血糖値が高いと器官に障害

一方で

インスリンの分泌量が
多すぎると
血糖値が必要以上に低下します。

すると
エネルギー源が不足して
細胞の活動が低下してしまい

頭がボ~っとしたり
場合によっては
命にかかわる事もあるのです(下図)。

インスリン過剰によるエネルギー不足

ホルモンの分泌量を
適切に調節する仕組みが
体にとって欠かせないのです。

では、どのようにして
ホルモンの分泌量が調節されているのかを
解説しましょう。

フィードバック(フィードバック調節)

ある現象の結果が、
その結果を引き起こした
原因に対して
作用することを

フィードバック(フィードバック調節)

といいます(下図)。

フィードバックの概念図

フィードバックのイメージを
明確にもてるように、まずは
日常生活での例を挙げてみましょう。

学校で生物基礎のテスト勉強を
すっぽかしたら、全教科の中で
最悪の点数だったとしましょう。

きっと、次回の生物基礎の
テスト勉強はしっかりやりますね?

点数も前回より
アップすることでしょう。

この例では、
テスト勉強をすっぽかすという
“原因” に対して

最悪の点数という “結果” が作用した
フィードバックであると
とらえる事が出来ます(下図)。

フィードバックの例:テスト

フィードバックによる調節
というのは

結果に応じて変える

という、日常の生活でも普通に
見られる事なのです。

さて

生物内において
フィードバックは

細胞内の酵素の働き(※)や
血中のホルモン濃度を調節する
代表的な仕組みです。

※酵素の働きにおけるフィードバックは
生物基礎の範囲外

内分泌腺や内分泌細胞から
ホルモンが分泌される(”原因”)と、
血中のホルモン濃度が上昇します。

このホルモン濃度の上昇や
ホルモンの働きによる
体内の変化が “結果” となって

内分泌腺や内分泌細胞からの
ホルモンの分泌に対して
作用するのです(下図)。

ホルモン分泌におけるフィードバック

フィードバックには

負のフィードバックと
正のフィードバックの
2種類の仕組みがあります。

負のフィードバックというのは
結果が原因を抑制(よくせい)する
フィードバックのことです。

ホルモンの多くは
負のフィードバックによって
分泌量が調節されています。

例えば

インスリンが分泌されると
血中のインスリン濃度が上昇して
血糖値が低下します。

すると、
血糖値の低下(”結果”)によって
インスリンの分泌(“原因”)が抑制され

それ以上の血糖値の低下も
抑制されるのです(下図)。

負のフィードバックの例:インスリン分泌

一方で

正のフィードバックというのは
結果が原因を促進する
フィードバックのことです。

正のフィードバックで調節されるホルモンは
生物基礎の範囲外ですが
1つだけ例を挙げましょう。

オキシトシンというホルモンは
胎児を出産を促す働きをします。

オキシトシンが分泌されると(”原因”)
産道が広がって(“結果”)
出産が促されます。

すると、

産道が広がったこと(“結果”)によって
オキシトシンの分泌が促進され
産道がより広がるのです(下図)。

正のフィードバックの例:オキシトシンの分泌

それでは次に
ホルモンの分泌量を調節する中心となる
器官について解説しましょう。

視床下部(ししょうかぶ)と脳下垂体(のうかすいたい)

多くのホルモン(※)の分泌量は

視床下部(ししょうかぶ)

とよばれる部位が
分泌量を調節する中心を
担っています。
※パラトルモン、鉱質コルチコイドは例外で
詳細は別記事で解説します。

視床下部は
脳の一部である

間脳(かんのう)

とよばれる領域にあります。

視床下部は
血液中のホルモンの濃度や
体内環境の変化を感知し

自律神経系やホルモンを介して

様々な内分泌腺からの
ホルモン分泌量を調節する
働きをしています。

まずは、視床下部の位置を
確認しましょう。

ヒトの大脳を左側から見た図を
描くと下図のようになります。

脳を左側からみた図

次に、大脳の左側半分を
取り去ってみましょう。

取り去った後に見える
ちょうど大脳に囲まれる部位を
間脳(かんのう)とよびます(下図)。

間脳

そして
間脳の下部(下図中の点線枠)のことを
視床下部(ししょうかぶ)とよびます。

視床下部

また、間脳のすぐ下には
球状の構造物が
ぶら下がるように付います。

この構造物は

脳下垂体(のうかすいたい)

とよばれる

様々なホルモンを分泌する
内分泌腺です(下図)。

脳下垂体

脳下垂体は視床下部と
構造上の関りが深いので
ここで解説します。

脳下垂体のうち
頭部の前側の部分を

脳下垂体前葉(のうかすいたいぜんよう)

頭部の後側の部分を

脳下垂体後葉(のうかすいたいこうよう)

とよび

内部には
毛細血管が通っています(下図※)。

脳下垂体前葉と脳下垂体後葉

※厳密には脳下垂体前葉と脳下垂体後葉の間に
脳下垂体中葉(のうかすいたいちゅうよう)が
存在しますが、ヒトの場合は未発達です。

神経分泌細胞

視床下部は
その他の脳部位と同様に
神経細胞が集まって出来ています。

視床下部をつくっている
神経細胞の中には

ホルモンを合成して
分泌するように変化したものがあり

このような
神経細胞のことを

神経分泌細胞

とよびます。

神経分泌細胞は
下図のように
ホルモンを分泌します。

神経分泌細胞による分泌

視床下部の神経分泌細胞の一端は
脳下垂体前葉の手前にある毛細血管と
脳下垂体後葉の内部にある毛細血管に
伸びています(下図)。

手前の毛細血管と内部の毛細血管

では、次の記事から
種々のホルモンの働きを
見ていきましょう。

⇒ チロキシン、パラトルモンについては
「内分泌系③:チロキシンとパラトルモンの働き」へ。
⇒ バソプレシン、鉱質コルチコイドについては
「内分泌系④:バソプレシンと鉱質コルチコイドの働き」へ。
⇒ インスリンについては
「内分泌系⑤:血糖値(血糖濃度)、血糖値を調節する器官」
「内分泌系⑥:血糖値(血糖濃度)を下げる仕組み」へ。
⇒ グルカゴン、アドレナリン、糖質コルチコイドについては
「内分泌系⑤:血糖値、血糖値を調節する器官
「内分泌系⑦:血糖値(血糖濃度)を上げる仕組み」へ。

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