酵素:触媒として働くタンパク質

この記事について
”酵素があることで、
生物体内の化学反応がスムーズに進み
生物が生きていける”

ということが
理解できるように、

酵素について、イチから解説します。

目次

1. 酵素とは

ポイント
①酵素は、触媒として働くタンパク質である。

②酵素があることで、
 生物が生きるのに適した温度でも
 化学反応が十分に進む。

③各種の酵素は、
 それぞれ特定の化学反応を促進する。

生物の体に存在する、
触媒としての働きをもつ
タンパク質のことを、

酵素(こうそ)

といいます。

酵素は、
生物によって作られて、
生物の体で働いているため、

生体触媒(せいたいしょくばい)

とも呼ばれます。

※酸化マンガン(Ⅳ)のような無機物の
 触媒を、無機触媒(むきしょくばい)とよぶ。

生物の体では、
多くの化学反応が
起きていますが、

その大部分は、
酵素が存在しなければ、
生物が生きられる程度の温度では
ほとんど進みません。

例えば、ヒトの
消化管内で起きている
デンプンの分解を進めるには、

酵素が存在しない状態では、
温度を100℃以上にするなどの
絶望的に厳しい条件が必要です。

しかし、実際には、
消化管内のデンプンは、
体温付近(37℃前後)の温度で
十分に分解されています。

すなわち、

酵素が存在することで、
生物が生きられる程度の温度であっても、
化学反応が十分に進むのです。

酵素には
様々な種類のものがあり、

それぞれの酵素は、
特定の化学反応を促進します。

言い換えれば、

生物体内の化学反応は、
それぞれが、異なる酵素によって
促進されている

ということです。

例えば、
ヒトの消化液に含まれる
アミラーゼという酵素は、

デンプンに作用し、
マルトースという物質への分解を
促進します。

デンプン、マルトース、アミラーゼを
以下のような図で描いてみましょう。
※デンプンは、長い鎖状の構造をもつため、
 途中を省略して描いています。

アミラーゼ、デンプン、マルトースの模式図。デンプンは、多数の六角形が横につながった図、マルトースは、2つの六角形が横につながった図で描かれている。アミラーゼは、六角形が2個半だけ結合できるような隙間をもった図形で描かれている。

アミラーゼの作用によって、
デンプンがマルトースに分解される
様子は、下図のようになります。

六角形の構造が1列に多数つながったデンプンに、アミラーゼが結合している。アミラーゼは、デンプンの六角形を2つ半覆う形状で描かれている。アミラーゼの作用の後、デンプンは、六角形が2つつながった構造をもつマルトースに分解している。

また、
同じく消化液に含まれる
マルターゼという酵素は、

マルトースに作用し、
グルコース(ブドウ糖)への
分解を促進します(下図)。

マルターゼは、六角形が2つ結合できる隙間をもつ図形で描かれている。六角形が2つつながったマルトースが、マルターゼと結合し、六角形1つで描かれているグルコースへと分解される。

しかし、
アミラーゼとマルターゼの構造上、

アミラーゼは、マルトースには作用せず、
マルターゼは、デンプンには作用しません。

このため、
アミラーゼがマルトースの
分解を促進したり、

マルターゼがデンプンの
分解を促進することは無いのです(下図)。

アミラーゼがマルトースに作用せず、マルターゼがデンプンに作用しないことを、矢印と×印で描いてある。

ポイントの確認問題
適する語句を答えなさい。

酵素というのは、
触媒としての働きをもつ(①)のことである。

酵素があると、生物が生きられるような
(②:低い、高い)温度でも化学反応が
十分進むようになる。

ある化学反応を促進する酵素は、
それとは別の化学反応を
促進することが(③:できる、できない)

                      ※解答:①タンパク質、②低い、③できない
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2. 細胞外で働く酵素と細胞内で働く酵素

ポイント
①酵素には、細胞外で働く酵素と細胞内で働く酵素がある。
②細胞外で働く酵素には、消化酵素などがある。
③酵素の多くは、細胞内で働く酵素である。

酵素は、

・細胞外で働く酵素
・細胞内で働く酵素

に分けられます。

細胞外で働く酵素は、

細胞内で作られたのちに
細胞外に分泌(ぶんぴ、ぶんぴつ※)されます。

※分泌:細胞内で作られた物質が
    細胞外へ放出されること。

そして、
細胞外の化学反応を促進するのです。

細胞外で働く酵素の
代表的なものには、

消化酵素

があります。

消化酵素というのは、

消化器官での
食物の分解を促進する酵素

のことです。

消化酵素は、
消化器官の細胞から分泌されます。

例として、先に解説した、
アミラーゼやマルターゼなどが
あります。

一方で、
生物が持つ酵素の多くは、
細胞内で働く酵素です。

どのような酵素があるのかを、
植物細胞を取り上げて
説明しましょう。
※植物細胞については
 ⇒ 「原核細胞と真核細胞:真核細胞の構造」
    を参照

植物細胞の内部には、

・核
・ミトコンドリア
・葉緑体

などの細胞小器官と、
それらの周りを満たす
細胞質基質があります(下図)。

四角く描かれた植物細胞内に、丸い核、短い棒状のミトコンドリア、だ円形の葉緑体が描かれている。

各細胞小器官と細胞質基質は、
それぞれ全く異なる働きを
持っています。

主な働きは、
以下の通りです。

・核:内部にDNAを収める
・ミトコンドリア:細胞呼吸(呼吸ともいう)
・葉緑体:光合成
・細胞質基質:物質の合成など

これらの細胞小器官と
細胞質基質には、

それぞれ異なる種類の
酵素が存在します(下図)。

核内には、DNA関連の酵素が三角形で、ミトコンドリア内には細胞呼吸(呼吸)に関する酵素がバツで、葉緑体内には光合成に関する酵素が四角で、細胞質基質には、物質合成などに関わる酵素が丸で描かれている。

それぞれの細胞小器官と細胞質基質が
特定の働きを行えるのは、

それぞれの部位に、
異なる種類の酵素が含まれ、
異なる種類の化学反応が
促進されているからなのです。

では最後に、
細胞内で働く酵素を、
具体的に1つおさえましょう。

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3. 過酸化水素を分解する酵素:カタラーゼ

カタラーゼのポイント
①過酸化水素の、水と酸素への分解を促進する酵素である。
②肝臓の細胞に多く含まれる。

カタラーゼというのは、

過酸化水素に作用して、
水と酸素への分解
を促進する酵素

のことです。

過酸化水素水(過酸化水素を水に溶かしたもの)を
学校の教室内に放置しても、

過酸化水素の分解は
ほとんど進みません。

しかし、過酸化水素水に
カタラーゼを加えると、

過酸化水素の分解が
急速に進むのです。

カタラーゼは、
脊椎動物の肝臓の細胞に多く含まれ
ヒトの場合、肝臓や腎臓の細胞、
赤血球などに多く含まれます。

このため、
過酸化水素水に
ニワトリの肝臓片などを加えると、

過酸化水素が急速に分解されて、
酸素の気泡が大量に生じるのです。

過酸化水素水に茶色の肝臓片を入れる図。直後に、発生する大量の酸素の気泡を、大量の円で描いた図。

過酸化水素は、
細胞にとって有害な物質です。

このため、
過酸化水素を水で薄めた
オキシドールという液は、
消毒薬として使われています。

私達の体では、
細胞内にカタラーゼが
存在することで、

体内で生じた過酸化水素が、
スムーズに分解されるのです。

※酸化マンガン(Ⅳ)による
 過酸化水素の分解促進については、
 記事「化学反応と触媒:触媒」で扱っています。

ポイントの確認問題
適する語句を答えなさい。

細胞内にある、
過酸化水素を水と酸素に分解する働きをもつ
酵素のことを(①)という。

この酵素は、(②:心臓、肝臓)の細胞に
特に多く含まれる。

                      ※解答:①カタラーゼ ②肝臓

・・・・・・・・

さて、今回は、
酵素について解説しました。

酵素があることで、
食物や有害物質の分解や、
その他多くの
生物体内での化学反応が促進され、

生物は、生きて活動することが
できるのです。

次の記事では、こうした化学反応と
エネルギーとの関係を解説しましょう。

⇒ 続きの記事「生命活動を担うエネルギーと代謝(同化・異化)」

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