細胞呼吸(呼吸)と光合成

この記事では、
「生命活動を担うエネルギーと代謝(同化・異化)」
の続きとして、

異化のうち、
多くの生物が共通して行う

細胞呼吸(呼吸)と、

同化のうち、
植物などが行う

光合成

について解説します。

目次

1. 呼吸:外呼吸と細胞呼吸

前半のテーマは、

細胞呼吸

という働きです。

細胞呼吸は、単に

呼吸

とも呼ばれます。

呼吸という用語は、
日常的には肺呼吸の意味で
使うことが多いですね(下図)。

空気をスーハーと、吸ったり吐いたりする人の顔の絵

用語の混乱を避けるため、
まずは、呼吸について
整理しておきましょう。

生物の呼吸は、

・外呼吸(がいこきゅう)
・細胞呼吸

の2つに分けられます。

外呼吸というのは、

呼吸器官(肺やエラなど)を通して
体内へ酸素を取り込み、
体外へ二酸化炭素を放出する働き

のことです。

外呼吸は
用いる呼吸器官の違いによって、

・肺呼吸
・エラ呼吸

などに分けられます(下図)。

空気とヒトの肺との間、および、水と魚のエラとの間で、酸素と二酸化炭素が交換されることを矢印で示した図。

一方で
細胞呼吸というのは、

細胞内で行われる、
酸素を利用して
エネルギーを得る働き

のことです。

詳細は、後ほど。

呼吸器官をもつ生物では、
細胞呼吸で利用される酸素は、
外呼吸によって供給されます。

このように、
生物の分野で呼吸という
用語が出てきたら、

外呼吸と細胞呼吸の
どちらの意味で使われているのかを、
判断する必要があるのです。

では、
細胞呼吸の解説に
入りましょう。

目次へ戻れるボタン

2. 細胞呼吸(呼吸)

2-1. 細胞呼吸(呼吸)とは

真核生物、原核生物の多くは、

生命活動に利用する
エネルギーを、主に

細胞呼吸(呼吸ともいう)

という反応過程によって、
得ています。

細胞呼吸(呼吸ともいう)
というのは、

異化のうち、

酸素を利用して
有機物を二酸化炭素と水に分解し、

有機物から取り出した
エネルギーを用いてATPを
合成する反応過程

のことです(下図)。

※有機物って何? → 「無機物と有機物」

細胞呼吸は、
ほぼ全ての真核生物と
一部の原核生物の
細胞内で行われています。

真核生物の細胞呼吸には、
ミトコンドリアが関与
しています。
※ミトコンドリアについて
→ 「原核細胞と真核細胞:ミトコンドリア」

“関与”という
言い方をしているのは、

ミトコンドリアが
細胞呼吸の全過程を
担っているわけでは無いからです。
(詳細は、生物基礎の範囲外)

細胞呼吸は、
多くの化学反応からなり、

個々の化学反応は、
酵素によって反応が
促進されています。

細胞呼吸を
エネルギーを中心とした
視点で見てみましょう。

細胞呼吸では、まず、
有機物を分解することで、

有機物内に化学エネルギーの形で
蓄えられていたエネルギーが
取り出されます。

そして、

取り出されたエネルギーの
”一部”が、ATP内に
化学エネルギーの形で
蓄えられるのです(下図)。

ここまでが、
細胞呼吸の過程です。

細胞呼吸によって合成された
ATPの化学エネルギーは、
同化や、その他の生命活動に
直接利用されます(下図)。

一方、
取り出されたエネルギーの多くは
ATPに蓄えられることなく、

熱エネルギーに変換されて、
生体外へ放出されます(下図)。

 

動物においては、
細胞呼吸に伴って放出される
熱エネルギーが、

体温維持などに
役立っています。

例えば、
ヒトの体温が約37℃に
維持されているのは、

全身の、ほぼ全ての細胞が
せっせと細胞呼吸を行い、

熱エネルギーが
放出されていることに
よるのです(下図)。

目次へ戻れるボタン

2-2. 呼吸基質

細胞呼吸によって分解される
有機物のことを、

呼吸基質(こきゅきしつ)

とよびます。

呼吸基質は
細胞呼吸によって、

二酸化炭素と水に
分解されます。

主な呼吸基質は、

・炭水化物(たんすいかぶつ)
・タンパク質
・脂肪(しぼう)

です。

多くの生物は、
炭水化物の一種である

グルコース(ブドウ糖ともいう)

を、呼吸基質として
最もよく利用しています。

このため、
細胞呼吸による物質の変化と
エネルギーの出入りを
まとめる場合、

以下の様に、
グルコースを呼吸基質とした
まとめ方がされています。

“グルコース(C12)” + 酸素(O)
→ 二酸化炭素(CO) + 水(HO) + エネルギー[ATP]

目次へ戻れるボタン

2-3. 有機物の完全燃焼と細胞呼吸の比較

2-3-1.共通点

完全燃焼(かんぜんねんしょう)
というのは、

空気中に十分な酸素がある状態
での燃焼のことです。

有機物の完全燃焼と
細胞呼吸は、

いずれも、次の様に
まとめる事ができます。

有機物 + 酸素 → 二酸化炭素 + 水 + エネルギー

文章で言い換えれば、
有機物の完全燃焼と細胞呼吸は、

いずれも、次の点が
共通しています。

・酸素の存在下で有機物が分解し、
二酸化炭素と水を生じる。

・エネルギーが放出される(下図)。

しかし、
エネルギーの放出のされ方と
放出されるエネルギーの形には、
大きな違いがみられます。

そして、
この違いを比較することで、

細胞呼吸の特徴を、
よりハッキリと捉えることが
出来るのです。

2-3-2. 相違点

有機物の完全燃焼では、
有機物が1ステップ
二酸化炭素と水へ分解されます。

その結果、
有機物内に蓄えられていた
化学エネルギーが、

熱エネルギーと
光エネルギーに変換されて、

急激に放出されるのです(下図)。

一方、細胞呼吸では、
有機物が多数の化学反応を経て
二酸化炭素と水へ分解されます。

その結果、
有機物内に蓄えられていた
化学エネルギーが、

少しずつ段階的に
取り出され、

その一部が、
ATPの化学エネルギーとして
蓄えられるのです(下図)。

例えば、細胞呼吸によって
1つのグルコースが
二酸化炭素と水に分解すると、

理論上、約38個のATPが
作られます。

目次へ戻れるボタン

3. 光合成

3-1. 同化の復習

まず、同化について
確認しておきましょう。

同化というのは、

簡単な物質から
より複雑な物質を合成し、

物質内にエネルギーを
蓄える反応過程

のことで、

エネルギーを利用して
進行します(下図)。

目次へ戻れるボタン

3-2. 炭酸同化、光合成

同化のうち、

二酸化炭素から有機物を
合成する反応過程を

炭酸同化(たんさんどうか)

とよびます(下図)。

※有機物って何? → 「無機物と有機物」

光エネルギーを利用する
炭酸同化のことを、

光合成

といいます。

光合成を行う生物は、

・葉緑体をもつ真核生物(植物など)

・一部の原核生物(シアノバクテリアなど)

です。

真核生物の光合成は、
細胞内にある葉緑体
行われます。
(下図:例としてオオカナダモの細胞)

原核生物は、
葉緑体もちませんが、

細胞内で光合成を行う仕組みを
備えています。

生物基礎では
葉緑体をもつ真核生物のうち、

植物に的をしぼって
光合成の仕組みを解説します。

目次へ戻れるボタン

3-3. 植物の光合成

3-3-1. 植物の光合成の仕組み

植物の光合成は、

光エネルギーを利用して
二酸化炭素と水から有機物
を合成し、

有機物内にエネルギーを蓄えて、
酸素を生じる反応過程

です。

合成される有機物は、
主に、炭水化物(たんすいかぶつ)です。

光合成は、
多くの化学反応からなり、

個々の反応は、
葉緑体に含まれる酵素によって
反応が促進されています。

光合成による物質の変化は、
次のように
まとめることが出来ます。

二酸化炭素(CO) + 水(HO)
→ 有機物(C12)※
 + 酸素(O)

※有機物(C12)の
部分について、

植物の光合成で作られる
有機物の多くは、
デンプンに変換されます。

デンプンは、グルコース(C12)が
多数結合した物質であるため、
生物基礎では、便宜上、

光合成の結果として
デンプンが作られることを、
グルコースの化学式を用いて
表記しているのです。

葉緑体内での
光合成の仕組みを
エネルギーの視点から
説明しましょう。

まず、
光エネルギーを利用して
ADPとリン酸からATPが合成され、

光エネルギーが
ATPの化学エネルギーに

変換されます(下図)。

そして次に、

ATPの化学エネルギーを利用して、
二酸化炭素と水から
有機物(主に炭水化物)が合成され、

合成された有機物内に
化学エネルギーが
蓄えられるのです。

その際に、
酸素が生じます(下図)。

光合成によって、

光合成を行う生物のみが
利用できる光エネルギーが、

全ての生物が利用できる
化学エネルギーの形に
変換されるのです。

光合成を行わない
生物の多くは、

植物を食べたり、
植物を食べる生物を
食べたりするなどして、

植物が光合成によって有機物内に
蓄えた化学エネルギーに、

直接、または間接的に依存して
生活しているのです。

目次へ戻れるボタン

3-3-2. 光合成で合成された有機物の利用

光合成でつくられた有機物は、
植物体の各部の細胞で、

・細胞呼吸の呼吸基質

・物質の合成の材料

として利用されます。

太陽光のもとでの光合成では、
ふつう、植物体が必要としている以上の
炭水化物が合成されています。

このため、
光合成で作られた有機物の多くは、
いったん、デンプンに変えられて
葉緑体内に蓄えられます。

このように葉緑体内で
作られたデンプンのことを

同化デンプン

といいます(下図)。

同化デンプンは
必要に応じて、

同化デンプンを蓄えていた
細胞内で利用されるか、

植物体の他の部位へ運ばれて
利用されます。

多くの植物では、
デンプンは

スクロース(ショ糖ともいう)

という物質に分解されて
他の部位へ運ばれます。

デンプンは水に溶けず、
スクロースは水に溶けやすい
という性質があります。

スクロースは、
水に溶けた状態で、
運ばれるのです。

このように、植物体の
ある部位から別の部位へ
物質が運ばれることを、

転流(てんりゅう)

といいます。

スクロースは、
転流した先の細胞で、
細胞呼吸と物質の合成に
利用されるのです。

また、転流した先が、
貯蔵器官と呼ばれる
部位である場合は主に、

デンプンに変えられて
貯蔵されます。

貯蔵器官に貯蔵されている
デンプンのことを、

貯蔵デンプン

といいます。

例えば、
ジャガイモという植物の
主な貯蔵器官は茎です。

ヒトが、野菜としての
ジャガイモを食べる時には、

貯蔵デンプンが多く貯えられて
大きくなった茎を
食べているのです。

目次へ戻れるボタン

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です