原核生物と真核生物、単細胞生物と多細胞生物

『この記事について』

この記事では、
細胞の学習で混乱しやすい

・原核生物と真核生物、
 単細胞生物と多細胞生物の分類関係

・原核生物や真核生物に属する
 具体的な生物の名前

をきっちりと整理できるように
解説していきます。
目次

1:原核生物と真核生物、単細胞生物と多細胞生物

1-1. 細胞を視点とした生物の分類

細胞という視点でみると、
生物は、

体を構成する細胞の
“構造”の違いによって、

 原核生物真核生物

に分類できます。

また、
体を構成する細胞の
“数”の違いによって、

単細胞生物多細胞生物

に分類できます。

細胞構造の違いについては、
記事「原核細胞と真核細胞」
詳しく解説していますので、

ここでは、原核生物と真核生物、
単細胞生物と多細胞生物の分類関係に
注目しましょう。

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1-2. 単細胞生物と多細胞生物

単細胞生物というのは、
体が1つの細胞で構成される生物
のことです。

単細胞生物の体は、
細胞そのものです。

このため、大部分の単細胞生物は
とても小さく、肉眼で見ることは
困難です。

一方で、

多細胞生物というのは、
体が複数の細胞で構成される生物
のことです。

肉眼で見ることが出来る生物は、
ほとんどが多細胞生物です。

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1-3. 原核生物と真核生物、単細胞生物と多細胞生物の関係

原核生物は、全て単細胞生物であり、
真核生物は、 単細胞生物、あるいは多細胞生物です。

これらの関係を、
表でまとめておきましょう。

単細胞生物かつ原核生物と、単細胞生物かつ真核生物は、具体例あり。多細胞生物かつ原核生物は、具体例なし。多細胞生物かつ真核生物は、具体例あり。

次に、原核生物や真核生物には
どのような生物が属するのかを
見ていきましょう。

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2:原核生物の分類

2-1. 原核生物は、細菌と古細菌に分類される。

原核生物は、
以下の2つのグループに
分類できます。

細菌(さいきん)
・古細菌(こさいきん)

古細菌は生物基礎の
範囲外ですので、

ここでは、細菌について
詳しく解説しましょう。

細菌のうち
生物基礎の入試で
よく見かけるものは、

・大腸菌
・乳酸菌
・シアノバクテリア

の3つです。

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2-2. 大腸菌

大腸菌は、主に ヒトなどの腸内で
生活している細菌です(下図:ヒトの腸)。

ヒトの輪郭を描いた図の中に、大腸と小腸の図が描かれている

人体にとって
有益な働きをする大腸菌もいれば、

腹痛など、食中毒の症状を
引き起こす大腸菌もいます。

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2-3. 乳酸菌(にゅうさんきん)

乳酸菌は、乳酸という物質を
つくる細菌の総称です。

ヒトの場合は、
腸の内部などに
乳酸菌が生活しており、

体に悪影響を与える細菌が
増えることを防ぐなどの
役割を担っています。

また、乳酸菌は、
ヨーグルトなどの食品を
作る際にも利用されています。

下写真は、
乳酸菌飲料に含まれる乳酸菌を
顕微鏡で拡大して撮影したものです。

乳酸菌の写真

点線枠内に写っている
黒い棒状の物体が、
1個体(※)の乳酸菌です。

※:生物学では、個々の生物体のことを個体とよび
 個体の数を、1個体、2個体・・・と表現します。

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2-4. シアノバクテリア

シアノバクテリアは、
光合成を行って酸素を発生させる細菌
の総称です。

シアノバクテリアは
複数のグループに分類され、

生物基礎では、主に

ネンジュモの仲間

を扱います。

ネンジュモの仲間の特徴は、

多数の個体が、
真珠のネックレスのように
1列に連なって生活している

ということです。

観察材料として用いられやすい、
イシクラゲという生物を
取り上げて説明しましょう。

イシクラゲは、
陸上で生活しています。

例えば、場所によっては
下の写真のように、

雨後の駐車場の地面に、
ワカメのような見た目をした
イシクラゲのまとまりを
発見できることがあります(白い矢印)。

駐車場のイシクラゲの写真

このまとまりを、
顕微鏡で拡大した写真を
見てみましょう(下図)。

イシクラゲの顕微鏡写真。多数の球状の個体がネックレス上につながっている。

上の写真で、
点線で囲った1つの球体が
1個体のイシクラゲです。

このように 、ネンジュモの仲間は、
多数の細胞が集まって生活しています。

注意!
多数の細胞が集まって ”1個体”となる
多細胞生物とは異なります。

次に、真核生物に属する
生物について説明しましょう。

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3:真核生物の分類

3-1. 植物、菌類、動物などが含まれる

真核生物は、
複数のグループに分類でき、
生物基礎で主に扱うのは

植物
・菌類(きんるい)
・動物

です。

植物、動物というグループ名は、
馴染があるかもしれませんが、

誤解されやすい内容があるため、
ここで解説しましょう。

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3-2. 植物

植物というのは、

生きるために必要な物質を
光合成によって得ている
多細胞生物のうち、

陸上を中心に生活する生物

のことです。

一部、例外的に
水中で生活する植物も見られます。

原形質流動の実験でよく使われる
オオカナダモは、
水中で生活する植物です。

オオカナダモは、
金魚やメダカを飼育する水槽内に
よく入れられています(下図)。

水槽内のオオカナダモの写真

〇参考:藻類について
やや細かいので、
余裕がある人は読んでおきましょう。

植物と混同されがちなグループとして、
藻類(そうるい)があります。

藻類の仲間は
陸上や水中で生活しています。

生物基礎では体の構造などの違いから、
植物と藻類を異なるグループとして扱います。

藻類には、
例えば ワカメやコンブなどが
属しています。

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3-3. 菌類(きんるい)

菌類は、
光合成を行わないなどの点によって
植物と区別されています。

カビの仲間とキノコの仲間がある
ということを覚えておきましょう。

食パンについたカビと、地面からはえたキノコの図

また、入試でよく出題されている
引っ掛け問題として、

酵母菌(こうぼきん)が原核生物が真核生物か

という問題があります。

正解は、真核生物です。

酵母菌は、
菌類に分類されるカビの仲間の一種で、
真核生物に分類されるのです。

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3-4. 動物

動物というのは、

生きるために必要な物質を、
食物を食べることで得ている
多細胞生物
のことです。

注意してほしいことは、

動きまわる生物だからといって、
動物であるとは限らない
ということです。

例えば、
ゾウリムシという生物は
活発に動きまわりますが、

単細胞生物であり、
動物には分類されません
(下図:ゾウリムシ)。

ゾウリムシの模式図:楕円形の細胞のまわりに多数の毛がはえている

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4:まとめ

分類のまとめとして、
この記事で扱った主な生物を
まとめておきましょう。 
単細胞生物かつ原核生物は、細菌(大腸菌、乳酸菌、シアノバクテリア)、また、シアノバクテリアに属するイシクラゲ。単細胞生物かつ真核生物は、ゾウリムシ。多細胞生物かつ真核生物は、植物(オオカナダモ)、菌類(カビとキノコ)、動物(ヒト)。

※:酵母菌は、真核生物の菌類に分類されますが、
  例外的に単細胞生物です。

さて、今回は、
細胞による生物の分類について解説しました。

最後に、最重要ポイントの
確認問題をやってみましょう。

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5:確認問題

以下の空欄に適する語句を答えなさい。
⑧は、用語を1つだけ選んで答えなさい。

生物は、

体を構成する細胞の構造の違い
という視点でみると、

細菌などが属する(①)生物
植物、菌類、動物などが属する(②)生物
分けられる。

①と②のうち、
酵母菌は、
(③)生物に属する。

また、
体を構成する細胞数の違い
という視点でみると、

細胞の体が1つの細胞からなる
(④)生物

体が複数の細胞からなる
(⑤)生物に分けられる。

光合成を行って
酸素を発生させる細菌の総称を、
(⑥)バクテリアという。

(⑥)バクテリアは、
体を構成する細胞数という
視点からみると、

(⑦)生物に分類される。

(⑥)バクテリアに属する
ネンジュモの仲間には、
(⑧:オオカナダモ、ユレモ、イシクラゲ)がいる。

・・・・・・・・・・・・・・・

解答

生物は、

体を構成する細胞の構造の違い
という視点でみると、

細菌などが属する(①:原核)生物
植物、菌類、動物などが属する(②:真核)生物
分けられる。

①と②のうち、
酵母菌は、
(③:真核)生物に属する。

また、
体を構成する細胞数の違い
という視点でみると、

細胞の体が1つの細胞からなる
(④:単細胞)生物

体が複数の細胞からなる
(⑤:多細胞)生物に分けられる。

光合成を行って
酸素を発生させる細菌の総称を、
(⑥)バクテリアという。

(⑥)バクテリアは、
体を構成する細胞数という
視点からみると、

(⑦:単細胞)生物に分類される。

(⑥)バクテリアに属する
ネンジュモの仲間には、
(⑧:イシクラゲ)がいる。

次の記事 ⇒「原核細胞と真核細胞」

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