腎臓⑤:再吸収量の計算、再吸収率の計算

『この記事について』
この記事では、
先に以下の問題1と2を提示します。

〇問題1:
オーソドックスな
再吸収量と再吸収率の計算問題

〇問題2:
密度(1 g/mL)を用いた
再吸収量の計算問題

まずは、
自力で解いてみた後に、
解説に進みましょう。

また、これらの計算問題を
解くためには、

腎臓の基礎知識、濃度、密度について
理解していることが必要です。

ちょっと不安な場合は、
記事「腎臓③:計算に必要な基礎知識、濃縮率の求め方」
の内容のうち、

・「腎臓の基礎知識の確認」
「濃度と密度」

を、あらかじめ一読してから
以下の計算問題に取り組んでみてください。
目次

問題1(再吸収量と再吸収率の計算)

ある人の
・尿素濃度
・1分間に作られる尿量
・1分間に作られる原尿量

は、それぞれ以下の
ようであった。

尿素濃度

※単位:mg/mL
・1分間に作られる尿量:1 mL
・1分間に作られる原尿量:120 mL

①1分間に作られる原尿中には
何mgの尿素が含まれるか
答えなさい。

②1分間に作られる尿中には
何mgの尿素が含まれるか
答えなさい。

③ ①と②の結果を用いて、
1分間あたりの尿素の
再吸収量(mg)を求めなさい。

④1分間あたりの
水の再吸収量は
何mLか求めなさい。
ただし、原尿と尿の体積は、
全て水に由来するものとする。

⑤再吸収率というのは、
ある物質について、
原尿中に含まれる量(質量、体積)の
何%が再吸収されているかを示し、

以下の式で定義される。

再吸収率(%)
= 再吸収された量 ÷ 原尿中に含まれる量 × 100

この式を用い、
尿素の再吸収率と水の再吸収率を
求めなさい。(小数点以下は四捨五入)
目次に戻れるボタン

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

解答と解説

①36 mg ②21 mg ③15 mg
④199 mL ⑤尿素:42% 水:99%

解説

尿素濃度
※単位:mg/mL
・1分間に作られる尿量:1 mL
・1分間に作られる原尿量:120 mL

①1分間に作られる原尿中には
何mgの尿素が含まれるか
答えなさい。

原尿中の尿素濃度は
0.30 mg/mLなので、

1分間あたりの
原尿量(120 mL)に
含まれる尿素の質量は

0.30 mg/mL × 120 mL
= 36 mg
となる。

②1分間に作られる尿中には
何mgの尿素が含まれるか
答えなさい。

尿中の尿素濃度は
21 mg/mLなので、

1分間あたりの尿量(1 mL)に
含まれる尿素の質量は、

21 mg/mL × 1 mL
= 21 mg
となる。

③1分間あたりの
尿素の再吸収量は
何mgか求めなさい。

尿素の質量は
原尿中で36 mg
尿中で21 mg。

よって再吸収量は
36 mg - 21 mg
= 15 mg
と求まる。

この内容を模式図で示すと
下のようになります。
※尿素を〇で描いています。

尿素の再吸収量

④1分間あたりの
水の再吸収量は
何mLか求めなさい。
ただし、原尿と尿の体積は、
全て水に由来するものとする。

原尿と尿の体積は
全て水に由来する

というのは、

・原尿量(mL) = 原尿中の水の体積(mL)
・尿量(mL) = 尿中の水の体積(mL)

とみなしてよい
ということ。

1分間あたりの
原尿量は120 mLで、

1分間あたりの
尿量は1 mLなので、

1分間あたりの
水の再吸収量は

120 mL ー 1 mL
= 199 mL
と求まる(下図)。

水の再吸収量

⑤再吸収率というのは、
ある物質について、
原尿中に含まれる量(質量、体積)の
何%が再吸収されているかを示し、

以下の式で定義される。

再吸収率(%)
= 再吸収された量 ÷ 原尿中に含まれる量 × 100

③と④の結果を用いて、
尿素の再吸収率と水の再吸収率を
求めなさい。(小数点以下は四捨五入)

原尿中の尿素量 = 36 mg 、
再吸収された尿素量 = 15 mg
なので、

尿素の再吸収率
= 15 mg ÷ 36 mg × 100
≒ 42 %
と求まる。

原尿中の水の量(原尿量) = 120 mL 、
再吸収された水の量 = 199 mL
なので、

水の再吸収率
= 199 mL ÷ 120 mL × 100
≒ 99 %
と求まる。

目次に戻れるボタン

問題2(密度を用いた再吸収量の計算)

ある人の
・ナトリウムイオン濃度
・1分間に作られる尿量
・1分間に作られる原尿量

は、それぞれ以下の
ようであった。

ナトリウムイオン濃度
※単位:%
・1分間に作られる尿量:1mL
・1分間に作られる原尿:120mL

また、原尿と尿の密度を
1 g/mLとする。

①1分間に作られる原尿中には
何mgのナトリウムイオンが
含まれるか答えなさい。

②1分間に作られる尿中には
何mgのナトリウムイオンが
含まれるか答えなさい。

③1分間あたりの
ナトリウムイオンの再吸収量は
何mgか求めなさい。
目次に戻れるボタン

・・・・・・・・・・・・・・・・

ボンボ
ボンボ
この記事の一番下に
計算問題対策の記事一覧
おススメの人気記事ベスト5
もあるよ。

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

解答と解説

①360 mg ②3.5mg  ③356.5 mg

解説

ナトリウムイオン濃度
※単位:%
・1分間に作られる尿量:1mL
・1分間に作られる原尿:120mL
・原尿と尿の密度:1 g/mL

①1分間に作られる原尿中には
何mgのナトリウムイオンが
含まれるか答えなさい。

溶質の質量は、
質量パーセント濃度を用いて
以下の式で求められる。

溶質の質量
= 溶液の質量 × 質量パーセント濃度  ÷ 100
※質量パーセント濃度について → 「質量パーセント濃度」

この式を用いるには、
原尿量(mL)を原尿の質量に変換する
必要がある。

1分間に作られる原尿量(mL)が
120 mL、

原尿の密度が1 g/mLなので、

1分間に作られる原尿の質量(g)は、
120 mL × 1 g/mL
= 120 g
となる。

原尿中の
ナトリウムイオン濃度は
0.3%なので、

1分間に作られる原尿中に含まれる
ナトリウムイオンの質量(mg)は、

120 g × 0.3 ÷ 100
= 0.36 g
= 360 mg

と求まる。

②1分間に作られる尿中には
何mgのナトリウムイオンが
含まれるか答えなさい。

①と同様にして計算する。

1分間に作られる尿の質量(g)は、
1 mL × 1 g/mL
= 1 g

尿中の
ナトリウムイオン濃度は
0.35%なので、

尿1 g に含まれる
ナトリウムイオンの質量(mg)は、

1 g × 0.35/100
= 0.0035 g
= 3.5 mg

と求まる。

③1分間あたりの
ナトリウムイオンの再吸収量は
何mgか求めなさい。

ナトリウムイオンの質量は
原尿中で360 mg、
尿中で3.5 mgなので、

再吸収量は、
360 mg ー 3.5 mg
= 356.5 mg
となる。

・・・・・・・・・・・・・・・・

計算問題対策の記事一覧】
ヘモグロビンの酸素解離曲線:計算問題の解き方編
腎臓③:計算に必要な基礎知識、濃縮率の求め方
腎臓④:イヌリンを用いた原尿量の求め方
・腎臓⑥:グルコース排出量のグラフ

おすすめの人気記事ベスト4☆

No. 共通テスト生物基礎攻略法

No.2 バイオームの覚え方

No.3 ヘモグロビンの酸素解離曲線

No.4 物理的防御、化学的防御と免疫の短期マスターと書かれた図。 

 

やきつけ生物基礎の目次へのリンク画像。扉の絵。

目次に戻れるボタン