『生物基礎』糖尿病

この記事には、

・腎臓の”ろ過”と”再吸収”という働き
⇒ 腎臓②:腎臓の働き
・インスリンというホルモンの働き
⇒ 血糖値調節②:血糖値(血糖濃度)を下げる仕組み

に関係する内容が
含まれますが、

まだ上記の記事を読んでいなくても
内容がイメージできるように
解説してあります。

1:誤解されがちな糖尿病

糖尿病は、
その名前からして

糖が尿中に出る病気である

と思われがちです。
さらに、

糖が尿中に出ることは良くない

とも思われがちです。

しかし、これらは
いずれも糖尿病に対する
誤解なのです。

この記事では、
こういった誤解を解くことも含め
糖尿病が発症する仕組みや
その危険性を詳しく解説します。

2:糖尿病

2-1. 糖尿病とは

糖尿病というのは、

慢性(まんせい)的に
血糖値が高くなる病気

のことです。

”慢性的”というのは、
ある状態が長い間改善されることなく
続くことを言います。

例えば、
何か月もとれない
体の疲れのことを

”慢性的な疲れ”

と表現しているのを
一度は見たり聞いたりしたことが
あるのではないでしょうか?

血糖値は
1日の中でも常に
変動しており

健常者であっても
食後などは一時的に
高くなります。

しかし、糖尿病を発症していると
適切な処置をしない限り
常に血糖値の高い状態が続くのです。

2-2. 健常者の血糖値との比較

糖尿病において
血糖値が ”高い” 状態 というのは
具体的にどの程度なのでしょうか。

一般に、
健常者の血糖値は、空腹時には
約100 mg/100mL(血液)です。

食後には、一時的に
約140 mg/100mL程度まで上昇し
やがて空腹時の血糖値に戻ります。

この変化をグラフで示すと
下図(縦軸:血糖値、横軸:時間経過)
のようになります。

健常者の血糖値

では、糖尿病を発症している
人の場合はどうでしょうか。

糖尿病の診断基準を
例にとって説明しましょう。

わかりやすい
診断基準として

・早朝の空腹時の血糖値が
 126 mg/100mL 以上

75gのグルコースを含む水を飲み
 2時間たった時の血糖値が
 200 mg/100mL 以上

があります。

いずれか一方でも
当てはまれば
糖尿病の疑いがかかります。

仮に両方とも当てはまる
とした場合の
血糖値のグラフを

先ほどの健常者の
グラフに重ねて
描いてみましょう(下図:点線)。

糖尿病を発症したヒトの血糖値

健常者に比べて
血糖値の高い状態である
ことがわかります。

では次に
糖尿が出る仕組みを
解説しましょう。

2-3. 血糖値と糖尿の関係

糖尿というのは
グルコースを含む尿のことです。

まずは簡単に
腎臓で尿がつくられる仕組みを
解説しましょう。

血液は、腎臓へ流れ込むと
ろ過という仕組みによって

液体の一部が
血管内から出てます。

血管内から出た液体は
原尿(げんにょう)と呼ばれます。

腎臓内で、ろ過によって
原尿ができる仕組みを
簡単な模式図で描くと
下図のようになります。

ろ過の仕組み

原尿には、
水やグルコースなど
有用な成分が多く含まれますが

原尿が腎臓内を移動する際に
有用な成分が血液中へと
再吸収されるのです。

原尿が再吸収を
受けたあとの液体を
尿とよび

後に体外へ
排出されます(下図)。

再吸収の仕組み

糖尿が出る仕組みを
理解する上で重要なのは、

腎臓が一定時間内に再吸収できる
グルコース量には限界がある

ということです。

血糖値が正常範囲であれば
グルコースは“全て”血液中に
再吸収される
ため

尿中にグルコースは
含まれません(下図)。

グルコースが全て再吸収

しかし、
血糖値がある程度以上(※)に
高くなると
※:約200 mg/100mg

原尿に含まれる多量の
グルコースを再吸収しきれず
グルコースを含む尿(糖尿)が出る
のです(下図)。

糖尿が出る仕組み

このように、
糖尿が出るか出ないかは
血糖値と腎臓の再吸収機能の関係で

決まります。

そのため、
糖尿病を発症していたとしても

症状の重さや、時間帯によって
血糖値が約200 mg/100mgを
超えない場合には、

糖尿は出ないのです。

逆に、健常者であっても
一度に摂取する糖質量や
腎臓の再吸収機能の程度によっては

糖尿病を発症していなくても
糖尿が出ることがあるのです。

生物基礎に限らず

糖尿病という用語のように
一見するとイメージのしやすい
用語は、いくつもあります。

でも
先に見てきたように、

用語からイメージできる内容が
必ずしも、その用語の意味を
正しく表しているとは限らないのです。

3:糖尿病の原因

まず、
インスリンという物質について
簡単に解説しましょう。

インスリンは、
すい臓にあるB細胞という
細胞から分泌され

肝臓の細胞などに作用することで
血糖値を下げる働きをする
ホルモンです(下図)。

インスリンの分泌と作用

インスリンが血糖値を
下げる仕組みに問題が生じると
血糖値が高い状態が続きます。

糖尿病は、
発症の仕組みの違いから

・Ⅰ型(いちがた)糖尿病
・Ⅱ型(にがた)糖尿病

の2つに分類されます。
※Ⅰ型、Ⅱ型は、1型、2型、一型、二型と
表記することもあります。

Ⅰ型糖尿病というのは
インスリンを分泌するB細胞が
壊れてしまう(※)ことで発症する糖尿病
のことです。
※壊れる原因については、まだ研究途中です。

B細胞が壊れるているため
インスリンがほとんど分泌されない
ことが特徴です(下図)。

Ⅰ型糖尿病

一方で、
Ⅱ型糖尿病というのは

Ⅰ型糖尿病とは別の理由で
インスリンの分泌量が低下したり

インスリンは正常に分泌されていても
標的細胞(肝臓などの細胞)が
インスリンの作用を受けにくいなど
によって発症する糖尿病
のことです(下図)。

Ⅱ型糖尿病

Ⅱ型糖尿病で
インスリンの分泌量が減ったり
細胞がインスリンの作用を
受けにくくなったりする原因として

生まれ持った体質の他、
過食や運動不足などの生活習慣が
考えられています。

このため、Ⅱ型糖尿病は
生活習慣病(※)の1つに
分類されます。
※生活習慣が原因で起こる病気の総称

では、最後に
糖尿病のもつ危険性について
見ていきましょう。

4:糖尿病のもつ危険性

糖尿病では
糖尿が出ること自体は
問題ではありません。

慢性的に血糖値が
高い状態が続くことが問題
なのです。

というのも、
このことが新たな別の問題を
引き起こす可能性が高いからです。

その新たな別の問題
というのは

合併症(がっぺいしょう)

のことです。

ある病気がもとになって起こる
別の病気のことを合併症と言います。

今の場合は、
糖尿病がもとになって起こる
別の病気ということです。

血糖値の高い状態が何年間も続くと
だんだんと血管がもろくなってきます。

その結果、

眼や腎臓の血液の流れが
悪くなることによる
眼や腎臓の機能の低下や

心臓や脳の血管がつまってしまう
心筋梗塞(しんきんこうそく)や脳梗塞(のうこうそく)

などの合併症を引き起こす
可能性があるのです。

眼の機能低下では、最悪、
失明する可能性があり

心筋梗塞や脳梗塞が
起きれば命にかかわります。

このように、
慢性的に血糖値が
高い状態が続くことで

様々な合併症に
つながるということが

糖尿病のもつ
危険性なのです。

この記事の解説は以上です。

 

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